成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2011.04.30
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カテゴリ: バス産業
青森から函館に渡って、北海道バス(大阪バスグループ)の「ニュースター号」で札幌へ。全国的に見ても久々の、高速路線バスへの純粋な(つまり、既存事業者の規模拡大などではない)新規参入事例だ。

貸切専業者が高速バス事業に進出を考えた際、高速路線バス業態を選ぶか高速ツアーバス業態を選ぶかは難しいところだ(前者を選んだ場合、立ちはだかる「見えない壁」を乗り越えなければならないが、同社の場合、もともとそちら方面に強い会社であるので、今回は営業面だけ考える)。ざっくり言うと、大都市マーケットほど「ツアー」、地方マーケットほど「路線」が有利であり、長距離ほど「ツアー」、短距離ほど「路線」だ。「ツアー」形式を選択した際のメリットは(もちろん一つは参入の容易さであるが、それをクリアした後、実際の運用フェーズにおいては)、例えば価格変動など商品設定の柔軟さであるわけだが、実はそれを引き出すには相応のノウハウが必要である。

「路線」の方は、広告上の表現や予約発券手続きという面で圧倒的に簡単で、特に当日、車内でも発券できるメリットが大きい(旅行業法は典型的な消費者保護法制であるから、契約手続きなどに制約が大きい。高単価である海外旅行などでは問題ないが、日常利用の高速バスを募集型企画旅行形式で行なう場合、その煩雑さを軽減するためウェブ予約・決済にほぼ限定せざるを得ず、顧客層の幅を狭めてしまう)。したがってこの路線の場合は、「ツアー」のメリットを引き出すノウハウを持った者に支援を求めないという判断をした限り、「路線」業態を選択したのは正しいと考えられる。

印象的だったのは、スライドする(対向する)既存側の高速バスの乗務員が、皆こちらの車内を見上げること(もちろん、脇見運転にならない程度に)。既存側とすれば、経営陣はもとより現場の第一線まで、新規参入側の乗車率が気になるということだろう。

さらに面白いのは、その既存側高速バスを共同運行する3社の中に、北都交通が含まれることだ。北都交通と言えば、30年近く前、会員制都市間バス形式で札幌~稚内などに参入した事業者(厳密にはグループ会社)だ。現在の高速ツアーバス業態と同じ、主催旅行(現・募集型企画旅行)形式で、貸切バスをチャーターする形で都市間輸送を行なったのだ。

行政も、現場においては積極的にそれを認めたのだという。しかし既存(当時の)側の抵抗が本格化した時点で舞台は中央の本省に移り、1986年には、主催旅行形式による二地点間輸送を「乗合類似行為」として事実上禁止した、いわゆる「昭和61年通達」が発出される。多くの人たちが、今日の高速ツアーバスを「違法だ」と主張する際、この通達を根拠とする(もっとも、根拠など考えず、そう思い込んでいるだけの人も多いが)。

しかし、実はその通達は2002年に廃止されている。理由は、道路運送法が改正されたからだ。同法の第1条(「目的」)から、「道路運送に関する秩序の確立」という文言が消えたのだから当然だ。「秩序の確立」から「利用者の利益の保護」という言葉に置き換わった(蛇足ながら、さらにその後「利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進」による「利用者の利便の増進」といった文言も追加されている)のである。つまり、我が国全体でのバス事業のあり方の根幹が、従来の「秩序の確立」という事業者側の視点から「利用者の利益」さらには「利便の促進」という利用者側の視点に変わったのだ。

私は何も、それをもってさも綺麗ごとのように「利用者の利便」という錦の御旗を打ち立てるつもりはない。利用者の利便のためなら、事業者は苦しんでいいなどとは考えていない。ただ、なぜそのような考え方の変化が必要だったのか、を、皆で真剣に考えるべきだと思う。

既存事業者の多くは、いわゆる「戦時統合」によって大枠が誕生した。その体制はほぼそのまま戦後に引き継がれたが、戦後約20年の間は、独立系事業者の買収合戦など、市場が急拡大する中で「ビジネスチャンス」を求めて事業者同士の争いも存在した。小田急による武蔵野乗合(現・小田急バス)の買収、京王と小田急による奥多摩振興(現・西東京バス)の買収合戦といった大手私鉄系沿線や、「箱根山戦争」に代表される観光地での出来事である。1965~70年ごろにはそれもおおむね落ち着くが、それでもまだ「国境線画定」への小競り合いが消えたわけではなかった。自由民主党による長期政権のもと、中選挙区制による「派閥」という我が国独特の政治秩序の中にあり、<パーティ券をいくら購入して、○○バスのエリアに楔を打ち込んだ>という武勇伝さえ聞かれる。おそらく、同一県内の隣接する事業者のエリアに貸切バスの営業所や路線バスのバス停を設置できた、ということなのだろう。


(長くなりそうなので、続きは次回)





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Last updated  2011.04.30 12:25:30
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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