成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2011.10.05
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カテゴリ: バス産業
ここにきて、歴史的な制度改正が目前に迫ってきたことを実感できたのか、各社とも動きがあわただしくなってきた。

念のため整理しておくと、今回、「制度」に関して改正があるのは高速路線バスである。当面、「法律」は触らず「省令以下」の改正で対応することになっており、「バス事業のあり方検討会」中間報告書には「年内を目途に」実施されると書かれている。行政も多忙だろうから詳細な日程はともかくとして、近々、高速路線バス事業に関し車両調達と運賃について柔軟さが一気に増すことは間違いない。その上で、高速ツアーバス各社が高速路線バス業態(その時点では省令改正後。つまり「新高速」)に移行するに当たり必要な停留所の手当てを済ませ(中間報告書には「官民による協議の場を設置」と表現)、高速ツアーバスの原則的に全社が高速路線バスに移行する。事実上のデッドラインが定められ、それ以降、法的には高速ツアーバスは禁止されないものの事実上はその営業が困難になる。

以前にも書いたが、行政から高速ツアーバス連絡協議会への指示により、協議会としては全国の「停留所候補地」のリストアップと実査を行なっているところだ。実際に動くのは協議会から委託を受けた当社(つまり私)であり、各所で地元企画実施会社の力も借りながら既に44都府県を回った。高速ツアーバスが存在しない北海道と沖縄を除くとあと1県。協議会の立場としては、まずこの「停留所問題」が最優先課題だ。そもそも2002年の改正道路運送法施行に際し理念上は需給調整が撤廃されたにもかかわらず(生活路線についてはクリームスキミング条項が作られたが)、実際の新規参入に際しては「停留所の権利」という目に見えない参入障壁が残ったことが「ツアーバス問題」の根幹なのだから当然だ。駅前など主要停留所について一定の比率で新規参入側にも停留所を配分するといった新ルールを作るか、少なくとも今日高速ツアーバス事業を営む者にだけは停留所を配分(あくまで「最低限」の処置)するか、どちらかが行なわれないとこの問題は解決しない。

一方、高速ツアーバス企画実施会社、運行会社各社から相談を受ける機会も増えてきた。バスと旅行を兼営する会社の場合は、<今できることは、「新高速」移行後を見据えNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)の運輸安全マネジメントのコンサルを受け安全面での実力を上げておくこと>とご説明する。純粋な旅行会社の場合、いくばくかの車両を保有するバス事業者に生まれ変わらないと事業を事実上継続できないのでパワーもお金もかかるわけだが、既に具体的な動きに入っている会社も数社ある。運行を請け負うだけの貸切バス事業者の場合は答えが難しいが、できることは安全面での実力を「乗合の管理受託」に耐えうるレベルまで上げておくこと以外なく、きれいごとのようだがそう繰り返す。

逆に「既存」の高速路線バス事業者の動きも積極的になってきた。何度も繰り返していることだが、彼らの高速バス事業の「本丸」は、片道2~4時間程度の距離を30~60分程度の間隔で運行する多頻度昼行路線であり、そういった路線にはこれまで高速ツアーバスはほとんど進出できていない。「新高速」となれば高速ツアーバスからの「移行組」がすぐにそういった路線でフリークエンシーサービスを行なうとは思えない(※)が、「本丸」でも競争が始まるリスクは従来よりも顕在化した、ということだろう。私がいただくご相談も、「レベニューマネジメントの運営体制(レベニューマネジャーはどのクラスの人材を充てるべきか)」など、より具体性を増してきた。

※多頻度昼行路線に高速ツアーバスが進出できない理由として、「車内発券不可」といった制度面の不利さとともに、既存路線バス事業者の地元での分厚い顧客基盤など営業面での既存側の強みも忘れてはならない。その結果としてフリークエンシーサービスを提供できなければ商品価値に大きな差が生まれ、既存と新規の差はいつまで経っても縮まらない。

私が思うに、良くも悪くも今回の制度改正で最大のポイントは、公益性の大きい平場の路線バスのみならず、収益事業として位置づけられる高速バスの分野においても、「停留所の権利」という概念を温存した点である。諸外国の例を見ても、平場の路線バスにおいては「公」がより関与を深めている(当然その裏側には、「公」がより多くのカネを投下しているという背景がある)のに対し、高速バス事業に関しては参入自由へ導かれている。

今回、高速ツアーバス企画実施会社に対し(乗合事業者に生まれ変わることと引き換えに)停留所を与え「既得権組」の仲間入りをさせることは決して参入自由を実現するものではない。いやむしろ、高速ツアーバス全社が「新高速」に移行を完了した後は、高速バス事業へのさらなる新規参入はより困難になるのかも知れない。したがって理論的には理想に程遠いということになるだろう。だが、我が国の高速バス事業の成長のためには、十分以上の運用ノウハウと顧客基盤を持つ既存の高速路線バス事業者を一定程度保護したまま、一方でより柔軟な制度を手に、より積極的なマーケティング意識を持って、彼ら自身が潜在的利用者と向き合い市場を拡大することが最も近道なのだ。

理想の制度論だけで言えば、平場の路線バス分野は諸先進国で見られるような公設民営型に移行し、一民間企業でしかないバス事業者の経営に左右されることなく公共交通ネットワークを維持できる形を作り上げ、逆に高速バス分野は安全面での規制のみを残しより自由な競争で市場拡大を目指すべき……ただ、我が国で今すぐそれが実現するとは思えない。かといって、高速バス分野で競争を制限することを社会が許すとも思えない。今回の制度改正は、本音を言うと「既存」「ツアー」双方からなる「業界(実は特に「既存」側)」の要請と、社会(市場)が求める理想との絶妙なバランスの上に立っているのである。その事実を客観的に冷徹に見るようにしないとならない。なぜなら、万一そのバランスが崩れたとき、失うものが大きいのは「守る側」の方なのだから。





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Last updated  2011.10.05 16:16:09
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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