成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2015.09.10
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カテゴリ: 高速路線バス
先週の金、土と一泊で、 「チバストーリー」 の試乗(という名の乗りバス)。チバストーリーとは(実は「CHI【BUS】TORY」という風にバスがかかっている、という脱力的な小ネタはスルーしましょう。こういう感覚が日本の旅行業、広く観光産業をダメにしてきたような気が…)、千葉県が費用負担し、定期化に向け(?)実証運行されている「無料高速バス」。成田空港と県内観光地(館山、鴨川、銚子)との間を各4往復と椀飯振舞だ。空港と観光地を結ぶ路線である以上、当然、観光客の誘致がゴール。想定するのは「訪日客(業務出張、観光双方)の日本最後の一泊を成田に近い房総で」「トランジット(アジアから成田乗換で欧米、など)の合間に千葉を見て」「国内LCCの就航地(北海道や九州など)から千葉県への観光旅行を」というところか。

企画とオペレーションを日本旅行千葉支店が受託し、運行は、JRバス関東や千葉交通など県内の高速乗合バス事業者4社に貸切バスとして発注している。今回は3コース4便に乗車したが、面白かったのは、「添乗員が同乗」というのが条件らしいのだが、その添乗員のタイプが「四者四様」。乗車順に、社員バスガイドが乗合の車掌として乗務するときのスタイル、往年の名車掌風、事務的な人、バスツアーの添乗員タイプ。おそらく、自ら添乗員を手配した事業者の場合、添乗を「保安添乗(車掌)」と捉えアンケート回収など最低限のお仕事だけこなすのに対し、自ら手配できなかった事業者は発注元の日本旅行に手配を頼んだところ「旅行の添乗員」さんがやって来てあれこれと心配り、ということなのだろう。

さて、ここまで読んで、多くの方は「ガラガラの車内にバスマニア(私たち)だけ、暇そうな添乗員という、実質的な空気輸送」の絵を想像したことだろう。はい。ほぼ正解。ところが一部不正解。乗車4便中1便はなんと満席だったのだ。その便は、土曜朝7:45館山発の成田行き。7:45発というのは、わざわざ温泉旅館や海の見えるリゾートに泊まった観光客には早すぎる時間帯(現に私たちも宿の朝食を断って乗車)。館山駅からの乗車は2組のみで、あとは途中のP&R駐車場から。つまり、先に挙げた「海外や遠方の観光客を千葉県内の観光地へ」という構図とは裏腹に、地元客で満席だったのだ(観光客の入れ込みが増えても喜ぶのは観光産業だけだが、地元客に「タダバス」を提供すれば選挙の票につながるから、実は巧妙な選挙対策なのでは、という皮肉さえ仲間内では聞いたけど)。

事前にウェブ予約画面で満席表示を確認しており、おそらく地元客の空港利用(海外や九州などへの飛行機での旅行)の足として都合よく使われているんだろうと乗車前には想像していた。ところが実際にはそのような利用はゼロのようで、みな軽装。小さな子供連れが目立った。祖父母まで親子三代のご家族は、乗車するなり「ばあば」手作りのおにぎりがアルミホイルに包まれて登場。別の男の子兄弟は「にいに」が「ママ、今日お泊まりするの?」

全く想定外。高速バスや空港連絡バスではまず見ない構図で驚いた。このバスについては千葉県内ではそれなりに報道されており、地元の自治体も熱心。すると、それが「外的刺激」になって「一度乗ってみようか」となるのだ。その辺は、会報誌などで「外的刺激」を与えるバスツアーの領域だ( 上尾・川越~四万温泉線の車内で起こった拍手 を思い出す。有料無料の差はあれど「●●へ行くバスがある」と刺激を受けると乗ってみたくなる)。必要(出張や用務の他、テーマパークなど目的地ありきの観光利用も含む)に迫られ乗車する高速バスや空港連絡バスとは異なる世界なのだ。喜んでもらうのは意義あるとはいえ、税金を投入した本来の目的は残念ながら達成されていない。ここにも、私の今の重い課題、「個人観光客と高速バスの意外な相性の悪さ」が現われている。

案内サイトはLCCの公式サイトと相互リンクされているが、そもそもLCCのサイトを訪問するユーザーは目的地ありきの旅行者。地元以外で高速バスの認知を拡大することや、個人の自由旅行(公共交通などを組み合わせる旅行)を制御することの困難さも伝わってくる。

それでも、元気づけられる要素はある。事務局を受託した旅行会社は、徹底して沿線を巻き込み 利用特典を山ほど用意

この『マルダイ土屋』、なんとファッションブティック(というか、千葉の小さな町の洋服屋さん)。私たちは、停留所新設と言うとつい「地先の了解がハードル」と及び腰になるが、そうでないケースなのだろう。担当者(停留所交渉の担当は日本旅行か事業者かは知らないが)が「お店の前に期間限定で停留所を設置させてください」と頭を下げ、「大原の街に観光客を連れてきます。ガイジンさんも来るかも知れません」と言うと、地元を愛する店主か奥様が「へえ、じゃあお茶でもお出ししましょう」と言ってくれたに違いない。残念ながら、ガイジンさんどころか乗降自体少ないようだが、各停留所における自治体や観光施設による積極的な特典設定も含め、地元からの、バスに対する潜在的期待値を示している。

この「チバストーリー」のほか、先日乗車した 「高野・白浜・熊野アクセスバス」 などは外部のお金による実験的要素が大きいが、自主運行の高速バスでも、観光色の強い新路線は苦戦を耳にする。一方、東京駅~御殿場プレミアム・アウトレット線や、回送車両の実車営業化を主目的に始まった新宿~東京サマーランド線など、気付けば増便が繰り返されている路線もある。この「多くの苦戦」と「一部の成功」の間に、個人観光客(FITを含む)を高速バスに取り込むためのヒントが隠されているはずだ。





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Last updated  2015.09.10 09:40:56コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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