思想悩労。

Jan 6, 2005
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新しい日課の一つに

図書室に行く事、が加わっていた。










『退屈』はもう、しない。



インターネットのサイトをぼんやりと

眺めるのもそうだが、

決まって夕方3時に現れ、

一生懸命に『日記』を書く彼女と

いつの間にか会話を交わすようになっていた。





時折、彼女はパソコンの前ではなく、

テーブルに座って難しい顔をしていた。

ノートと教科書を広げて。

そこで、少しだけ家庭教師の真似事も

するようになっていた。





こうしていると、彼女は普通の小学生と

変わりは全く無い。

けれど、キーボードを打つ彼女だけは

いつもと形相が違う。

夢を、見ているような。

そして

何かに憑かれたかのような。

そういった表情で無心にキーを叩く。

― その姿は鬼気迫るものを、時折、感じさせたが。





彼女が書く『日記』を、

最初は見せようとしてくれなかった。

当然、だろう。

『日記』は人に見せる物ではない。

が、

彼女が書いていた『日記』はブログだった。

WEB上で公開する日記。

そして沢山の人の目に触れ、見た人が感想を書いていく。

普通の日記なら頼まないだろうが、

ブログなら『見せる日記』である。

彼女が書く『日記』が

余りにも気になるので、ある時ちょっとだけ頼んでみた。





彼女は恥ずかしそうな顔をしながら、

URLを告げる。

そして、そのペ-ジを開いた。





― しばらく、言葉が出なかった。 ―





一瞬、夢中で読み耽ってしまった自分に気付く。

彼女の『日記』は、とても小学生が書いたものとは

思えなかった。

そこに綴られる『日常』は余りにも生き生きと描かれ、

日常の風景の描写もさることながら、

『日記の中の彼女』の心理描写が見事だった。

思春期を迎えた『彼女』は、

時に友人関係で悩んだり、

そして、『恋』もしていた。





「もう、いいでしょ。」





彼女の声で我に返る。





『スゴイね・・・。これだけの文章、大人でも書けないよ。』





ため息混じりに口にすると

彼女は照れながらも得意げに微笑んだ。










彼女の前で『日記』を読むのは

流石に恥ずかしいだろう、

そう思い、

すっかり彼女の書く『日記』に魅せられながらも

読むときは彼女のいない時間に

一人で読むことにした。

彼女が、書く。

そしていない間に読む。

それが新しい日課。










そして、退院の日を迎えた。










退院の日、彼女の姿を探してみたが

見つからなかった。

少々気にかかったが、

入院中に溜まりに溜まった予定が、ある。

足早に病院を後にした。















*****
暫く、忙しい日が続く。

まともな時間に帰宅できる日は、ほとんど無かった。

そんな生活も退院後一月も過ぎると

収まってくる。

久々に早い時間にリビングのソファに腰掛けて

ぼうっとする事ができた。





― そう言えば、彼女の『日記』。 ―





頭に、ふっ、とよぎる。

退院してから彼女のブログを目にしていない。

ソファから立ち上がり、パソコンを立ち上げる。





― 1ヶ月、ぶりか。 ―





そう、思うと

毎日、『日記』を楽しみにしていたことが

思い出され、

高揚感にも似た心持ちで

URLをメモした紙を見ながらキーを叩いた。

ディスプレイに

彼女の『日記』が映し出される。










― あの日と、同じ日記が。 ―










退院の日の前日に読んだ日記が、

そこには、あった。

つまり、その日から新しい『日記』は

書かれていない事になる。










嫌な予感が、体中をじんわりと巡っていった。








to be continued >>>
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Last updated  Jan 9, 2005 03:49:23 AM
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