新しいキャリアの創造に向けて 

 新しいキャリアの創造に向けて 

January 13, 2006
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カテゴリ: その他
Tが連絡をとってきたのは暮れもおしつまっての頃だった。メールでこちらが抱えている案件に興味があり、早い時期に会いたいとある。職歴をメールで問い合わせると、平日の忙しいはずの時間にもかかわらず、即返事がきたことを覚えている。日本代表する製造業の研究所に長年所属し、マネジメント経験も十分にあり、研究分野も先端の通信分野とあるので、これは結構いけると踏んだ。

しかし、レジュメを送ってくれるように2度、3度、メールで依頼するも、反応なし。越年の4、5日前になって、急に会いたいというので、スケジュールを調整し、面談を実施する。レジュメをくれというも、作成していないというのである。しかし、他社にも応募し採用の感触を得ているというので、書類なしで選考もできまいにと様子をみることにした。かまわず、話をつづける。

当方が用意した案件は外資系企業のR&Dのシニアなマネジャーのポジションで、先方はいたくその案件が気に入ったらしかった。基本的には、これまでの知見の及ぶ範囲であり、本人も、その分野での世界に通ずる成果を挙げていく自信もあるというのだ。これは立派な志であると思った瞬間、収入はどうなるのでしょうとの質問あり。確かに、家族がいて、扶養の義務があれば、だれでも気になることである。Tはそういうなり、なにやらメモを取り出したのである。エクセルで作成した表を取り出すと、計算結果をしゃべりだす。

損はしたくないのだというのだ。最もな話である。しかし、彼が損をしたくないというのは、常人が考えるそれではない。年収で数百万円アップを5年間にわたって保障しろというのである。更には、自分は現在の会社を退職することによって、退職金も、こんなに損をするので、支度金を用意しろというのである。到底、通らない話である。Tの話は更に続く。転職は自分の望むところではあるが、細君を納得させるのが難しいというのである。

あまりにも法外な要求なので、100%無理だとつたえると、今度は、本国の様子について書かれた本の話である。本社の会長は、優秀な人材についてはその獲得にあたり、金にいとめはつけないといっているという話を持ち出す始末。当方が、金に終始する話はお聞きしても、対応できませんというと他人を金の亡者のように言うとは失敬なやつと食ってかかられる始末。

男子たるもの、自分の出処進退について、細君ひとり納得させられぬとはなんとも情けない輩ではないか。 もっとも、その細君の話の真偽はともかく、あまりにも転職に夢を抱きすぎた世間知らずな中年サラリーマンの姿が、哀れで仕方がなかった。





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Last updated  January 13, 2006 04:46:37 PM
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