◆長屋村       あらっ!ご近所さん♪

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October 27, 2010
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カテゴリ: ◆NovelでTea☆Time
指切り


+ 形見 + [22]

高志は、母が亡くなったのを知らされたのは、事故から四日経った日のことだった。
背中の傷が少し癒されてきた頃を見計らって、病室に現れた叔父の正春から伝えられた。
『高志君、傷は痛むか?』
『うん』
高志の首から背中は裂傷を負って、二十数針縫ってあった。
朝から晩まで、二十四時間うつ伏せである。
『叔父さん、お父さんは?お母さんは?』
正春はカーテンを引いて、高志のベットを廻りから遮断した。

『お父さんは、今、怪我と戦っている。集中治療室で、先生や、看護師さんが一生懸命になって、お父さんを助けようと頑張っている。もう少ししたら、高志君も会えるかも知れない。だから、早く良くならないといけないよ』
『うん』
『・・・・・』
『お母さんは?』
『・・・・・・お母さんは・・・・。お母さんは、大きな事故だった。追突されたはずみで・・・横転して・・・、前の屋根がつぶれて・・・頭を打って・・・お母さん。残念だけど、帰らない人になった』
『お母さん、死んだの?』
『・・・・』
『お母さん、死んじゃったの?』
『うん』
(お母さん、死んじゃった・・・お母さん死んじゃった・・・・・・)
『高志君・・・・』


カーテンを閉めているとはいえ、廻りに入院している人がいるから、泣いている声を聞かせたくなかった。
高志は、亡骸も見ずに母と別れたのだった。

高志が少し落ち着いてきた頃、正春が言葉を続けた。
『お葬式、済ませたからな』
『・・・・・』

『・・・・・』
『ほら、イチバンのお友達の桜さんのおばさんも来てくれたよ』
『・・・・・』
『高志君、お母さんは残念だったけど、お父さんが一生懸命に頑張っている。早く良くなるように祈ってあげなくちゃ』
『・・・・・・・うん』
枕に顔を押しつぶしている高志から、ようやく返事が返ってきた。
『高志君の背中の傷が良くなったら、お父さんのお見舞いに連れていってあげるから、早く良くなりなさい』
『うん』
やっと高志は顔を横に向けることが出来た。

『高志君、何かあったら叔父さんに相談しなさい。力になってあげるから』
『はい、叔父さん』
『早く元気になって、お父さんの所へ行って上げよう。分かったね?』
『はい』
正春はポケットから小さな袋を取り出した。
『高志君、これ』
首をいっぱいに曲げて、正春の手を見た。
『なに?』
『お母さんの形見だよ』
高志は背中の痛みをこらえながら、右手を差し出して受け取った。
『お母さんの・・・・・形見?』
『そう』
『お葬式の前に高志君のお父さんが、高志のためにお母さんの髪の毛を少し残してくれって、言われたんだ』
『お母さんの、髪?』
『高志君は、お母さんの髪の毛の匂いが好きだったんだって?』
『うん』
『だからね、少しだけ切ってこれの中に入れてあるから』
高志は受け取ると、枕を顎の下に持ってきて、顔を浮かせた。
青いお守り袋だった。
『それじゃ高志君、叔父さんは帰るから』
『・・・・・・』
『じゃあね。しっかりするんだよ』
『・・・・・・』

高志は正春が病室を出て行った後、枕から顔を持ち上げ、両手でお守り袋を少し開いてみた。
中から、かすかだが、懐かしい母の匂いが漂ってくるのがわかった。
思わず、す~~~っとその匂いを胸一杯に吸い込んだ。
(お母さんの匂いだ)
高志はゆっくり吐き出したあと、もう一度お守り袋に鼻をつけて、もっともっとゆっくり吸い込んだ。
(お母さん・・・・・)
また、高志の目から大粒の涙がこぼれはじめ、顔を枕に突っ伏した。






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Last updated  October 27, 2010 03:18:12 PM
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