◆長屋村       あらっ!ご近所さん♪

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October 25, 2010
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カテゴリ: ◆NovelでTea☆Time
指切り


+ 亜紀の優しさ + [21]

河田看護師と別れて、一旦病室へ戻った。
春先の陽気とはまだいかなく、亜紀の腕には鳥肌が立っていた。
少しの間身体を暖めた亜紀は、高志の所へ顔を出した。

「た~かし君。何してる?」
「あ、お姉ちゃん。トランプ占いしてたの」
「何を占ったの?」
「わかんない。ただ遊んでいただけ」
「そっか」

「うん・・・・・」
「おばさん、いつもあんなにキツイの?」
「・・・・・・・」
口に出したとたん、高志は沈み込んでしまった。
血縁関係の無いおばさんは、高志にとって大きな重圧なのであろう。
厄介者扱いされても、かばってくれる父も母もいない。
自分では何も出来ないから、静かにしているしかないのだった。

高志が一瞬、不思議な行動をとった。
しかし、亜紀には分かった。
高志がこぼれ落ちてきた涙を見えないようにそっと拭ったことを。
「高志、ちょっと屋上へ行こうか」

「お姉ちゃん、高志君と話しがしたいの。いい?」
「うん」
それから二人は屋上へ上がった。

お天気が良いから、沢山の洗濯物がここぞ狭しと干してあって、風になびいていた。
「良いお天気ね~」

二人は屋上の角のほうへ歩いて行って、高志を先に座らせてから亜紀も座った。
「ねぇ、お父さんとお母さんの話しを聞いてもいい?」
「うん」
「お父さんやお母さんは優しかった?」
「うん。とっても。お父さんはね、時々怒ったけれどいっぱい遊んでくれたの。キャッチボールをしたり、自転車に始めて乗るときも教えてくれたりして。最高のお父さんだった」
「そっか。お母さんは?」
「学校から帰ると、良くおやつを作ってくれたよ。クッキーやケーキを作るのが上手で、とっても美味しかった。風邪で熱が出るとおでことおでこをくっつけて計ってくれるの。この辺り・・・」
おでこに手を当てた高志の目が曇り始めた。
「事故のこと、覚えてる?」
「ううん。ぜんぜん覚えていない。気が付いたら寝ていたんだ。ディズニーランドから帰ろうと、高速道路を走っている所までは覚えているけど、あとは知らない」
「ディズニーランドへ行って来たの?」
「うん・・・・・」
「楽しかった?」
「うん。だけど観覧車がいっぱいで乗れなかったの。次に来た時に乗ろうねって、話しをしたところまでしか覚えていないの」

返事をした高志の目から大粒の涙が溢れ出した。
亜紀は高志の涙と、悔しそうに握りしめている手を見て思った。
そして、
「高志君、もしかしてお父さんやお母さんが亡くなってから・・・・・泣いてないんじゃないの?」
「・・・・・」
声にはならなかった。

亜紀の言うように、高志は母を亡くし父を亡くしても泣けなかった。
本当は思い切り泣きたいはずだったのだが、抱きしめてくれる人がいなくなって、泣けなかったのだった。
廻りに人がいる病室では、すすり泣きをしたことがあっても、声をあげて泣くことが今まで出来なかったのだ。
「泣いていいよ、高志君。思い切り泣いたらいいよ。お姉さんが受け止めてあげるから、思い切り泣きなさい」
そう良いながら亜紀は高志を抱き寄せた。

亜紀の優しさが高志の心の中へ入っていった。
高志は首にかけていたお守りを取り出して握りしめ、亜紀の胸の中で両親の事を思い出しながら大声を上げて鳴き始めた。






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Last updated  October 25, 2010 03:27:59 PM
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