◆長屋村       あらっ!ご近所さん♪

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November 25, 2010
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カテゴリ: ◆NovelでTea☆Time
指切り


+ 東風吹かば + [32]


「お姉ちゃん、あれ見て、あれ」
「どれどれ?」
「ほら、あそこ、あそこあそこ」
「ん?」
「お姉ちゃんのリボン。黄色いリボンが海に浮かんで見えるよ」
「あ~、本当だ。見えた」
「沈んじゃうのかな~」
「どうかなぁ~」

「それは無いでしょう」
「はははは」
高志に笑顔が戻っていた。

十五分間の静かな観覧のひとときが過ぎた。
「どうもありがとう御座いました」
大観覧車を楽しんだ二人は、乗る前に撮った写真を受け取りに行った。
「すみませ~ん。あ、この写真です」
壁に貼ってある二人の写った写真を見つけた亜紀は思わず指を指した。
「こちらですね。ありがとう御座いました」
真っ白いスーツの亜紀と、赤い半袖のTシャツ姿の高志が色鮮やかに仲良く写っていた。
「高志君、格好いいじゃん」

「大事にしようね、これ」
「うん」
「暑くない?」
「うん。観覧車、暑かったね。何か冷たいもの食べたいなぁ~」
「よし、食べに行こう」


「お姉ちゃんに、帰りにいいもの買ってあげる」
「なに?」
「秘密」
「秘密なの?」
「買うまで、秘密」
「え~、何だろうなぁ~?」

二人の廻りに、急流すべりのクリフドロップやダイビングコースターに乗っている人たちの悲鳴が響きわたってくる。
「元気になったらあれに乗れるかなぁ~?」
「乗れる、乗れる。絶対乗れるから」
「お姉ちゃん、元気になっても乗れる?恐くない?」
「恐くなんかないわよ」
「じゃあ、元気になったら乗ろうね」
「それも約束だね」
「食べちゃった」
「早いわね、高志君」
「お姉ちゃんが遅いんだよ」
「貴婦人ですからね、お行儀がいいのよ」
「早く食べなよ」
「わかったわよ」
高志にせかされて、残りのかき氷を一気に流し込んだ。
「お姉ちゃん、凄い・・・」
「ふぅ~食った食った」
「言葉も悪い。貴婦人じゃ無いじゃん」
「えへへへへへ」

二人は笑いながら大観覧車を後にした。
やがて、来るときにリボンを飛ばされた橋までやって来た。
「お姉ちゃん、風に気を付けてね」
「さっきはイヤな『こち』だったわね」
「え?僕、さっきはイヤな『子』だったの?」
高志が『こち』と『子』を勘違いした。
「え?そうじゃないわ。『こち』よ『こち』」
「何?『こち』って」
「東の風、『東風』って書いて『こち』って読むのよ。東から吹いてくる春の風のことなの」
「へぇ~、お姉ちゃんって物知りなんだね」
「好きな歌があるのよ。『東風吹かば 匂いおこせよ梅の花 主なしとて、春を忘るな』」
「カッコいいね。お姉ちゃん。僕にも教えてよ」
「いいわよ。いい?東風吹かば」
「東風吹かば」
「匂いおこせよ 梅の花」
「匂いおこせよ 梅の花」
「主なしとて」
「主なしとて」
「春を忘るな」
「春を忘るな」

それから高志の復唱が始まった。
「東風吹かば 匂いおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」
「東風吹かば 匂いおこせよ  ・・・・・」
亜紀も高志に合わせて唱い出した。
二人のハモりはカーニバルストリートの近くまで続いていった。
「入ろう」
「うん」
「うわぁ、公園のお祭りの、夜店みたいだね」
「そうね。懐かしいわ~」






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Last updated  November 25, 2010 04:00:47 PM
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