実家に帰ってきている長男が・・・・こっそりこの「ジャングル・ナイト・クルーズ」を読んでいるようで・・・・・
さっき帰宅すると・・・
「親父がモテるわけねぇよな・・・・」
居間のテーブルのところで・・・・座布団に座って夕刊を読んでいる私を見下ろす形で・・・こんな捨て台詞を残し・・・2階の自室に引き上げていきました。
これは何を意味すると思います?
きっと「帰り道」を読んでたんじゃないかと思います。
この「小説もどき」の出だしは・・・仙台からの出張帰り・・・新幹線の中っていう設定にしてありますが・・・・ちょうど、長男が春休みで実家に帰省する日・・・私の仙台出張と重なったんですよね。
だから出張前に、長男に電話して・・・・「夕方の新幹線になるなら、八戸までの切符を買っておけば・・・八戸で待ち合わせをして車で帰ってこれるぞ」
そう連絡してあったんです。
しかし、アヤツは・・・「11時の新幹線の切符を買ったから・・・オヤジより先に家についてるよ」
そう言って、私の車に乗ることを拒否したのです。
まあ・・・拒否したわけじゃないんでしょうけどね・・・・・・・
でも、そんなことで・・・・「うちの親父・・・まさか本当に仙台からの新幹線の中で・・・元カノと隣り合って・・・・これって真実じゃないのか?」
そんな風に疑って見たんじゃないかなと思うんです。
だから・・・さっき私の姿を見て・・・・・「うちの親父がモテるわけネェよな」
そんな台詞になったのだと思います。
つまり、息子にも見透かされてる親父・・・・
妄想以外の何物でもないことがばれました。
でも話は続くんですよ・・・・・・
食事が終わり・・・・食後のカプチーノを飲んで・・・私たちはその「イタリアン・レストラン」を出たのですが、外へ出ると5月というのに真夏のように暑かったのです。
私はすぐに、着ていた薄茶色のブレザーを脱ぎ・・・腕に抱えて・・・ピンクのシャツ姿になりました。
「あ・・・おしゃれ!」
この時代でも・・・ピンクのシャツを着ている男はそんなに珍しいものではありませんでしたが・・・きっと彼女は、胸に刺繍してある「二匹のリス」を見てそう言ったのでしょう。
実はこの時、実際に付き合っていた女性・・・・・さっき、「居酒屋でもつの煮込みを肴に、冷酒を飲む」ことの好きな女性が・・・このシャツをオーダーして作ってくれたのです。
その彼女・・・「K子」はプロのモデルでした。(あ・・・恵姐さんじゃありませんよ)
私がやっていたバイト・・・・デパートやスーパーの店頭販売員・・・しゃべりながらモノを売るという職業に就く人は・・・なぜか元「写真家の助手」という人が多かったんです。
有名な「秋山〇〇」とか「立木〇〇」というような写真家の助手だった人が、この商売に多く・・・・だから彼らの奥さんや彼女には、「元モデル」っていう人が意外と多かったんです。
私の付き合っていた「K子」もそんな一人でした。
私は「写真家くずれ」ではありませんでしたが・・・・そういう同業者と付き合っているうちに、その奥さんたちとも話をするようになり・・・・そして、その奥さんたちの友達とも、いつの間にか親しくなっていたのです。
その中の一人が「K子」でした。
彼女は・・・写真のモデルとして活躍していたのですが・・・体型の変わるのもかまわず・・・酒を飲んだりたらふく食べたり・・・肥りにくい体質でしたが・・・それでも年齢とともに少しずつ体型が崩れていって・・・・最近はあまりモデルの仕事もしてないっていうような女性
それでも、いろんな知り合い・・・特にファッション関係の知り合いが多く・・・このシャツもそんな知り合いの仕立て屋さんで作ってくれたものでした。
「ヒモ」・・・っていうほどでもなく・・・どちらかというと、私のことを「ペット」のように思っていたのかもしれません。
だから・・・彼女の作ってくれた私の洋服は、すべて「2匹のリス」が刺繍してあるのです。
「このシャツはどこで買ったんですか?・・・その胸の刺繍が可愛い」
正直に言うことのできない私は・・・「ああ・・・これ外国のお土産なんだよ」・・・そう言ってごまかしました。
「A子」は素直に信じたようで・・・・
「な~んだ・・・・東京のどこかのお店のマークなら・・・あたしもおそろいのシャツを買いたいなと思ってたのに・・・」
とても残念そうな顔をします。
私は話題を変えようと思いました。
「さ・・・今度はどこへ行こうか?」
「そうですねえ・・・どこでもいいんです・・・ナイト先輩と一緒なら」
どこまでもストレートな女の子でした。
「落語なんて知ってる?」
「落語ですか?・・・あの三平とか歌奴っていう人が出てくる?」
「ああ・・・・この近くに寄席があるんだよ・・・・演劇とかだとチケットを予約しないと入れないでしょ?・・・でも寄席は、気軽にいつでも入れるんだよ・・・それで入ると・・・・いつもテレビに出てくるような芸人さんがすぐそこに出てくるし・・・」
私が彼女を連れて行こうとしている寄席は・・・「新宿末広亭」という寄席でした。
伊勢丹デパートの通り一本向こうの・・・路地を少し入ったところにあります。
「A子」は興味を持ったようで・・・私の袖を引っ張っていこうとしました。
あ・・・ごめん…また長男が起きてきた。
続く
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