駄洒落が不調につき・・・こうして「小説もどき」を書く事が多くなっています。
どうしちゃったんでしょうね?・・・・・私・・・・・
昨年までは「湯水のように」湧き出でていたものなのに・・・・駄洒落・・・・
夏あたりからさっぱりです。
それじゃ続きをどうぞ…・
《歌手になるつもりが・・・(17)》
銭湯から帰って・・・着て行くものを選ぶ。
といっても、「キリン先輩」と併せようとすると無理だった。
「これは着て行くわけにはいかないよなあ・・・・」
目についたのは・・・・先だって「T崎先輩」からいただいた・・・グリーンのジャケットだったが・・・これを着て「T崎先輩の元カノ」の前に行くっていうのは度胸がいる。
もしかしたら・・・・「キリンさん」はそのジャケットのことを知っているかもしれない・・・・・これを着て行ったら…喧嘩を売ってるみたいだしなあ。
かといって・・・入学式用に買ったスーツにネクタイだと・・・・まるで七五三のように見えてしまう。
考えた末・・・高校時代から履いていたジーパンにスカジャン・スニーカー・・・それで行くことにした。
「キリン先輩は・・・お昼に着ていたスーツなんだろうな?」
想像してみると・・・その衣装の二人は・・・家出少年と少年補導員のように思えたが・・・これしかなかったのである。
吉祥寺の待ち合わせ場所は・・・・駅の改札口。
田舎から出てきたばかりの私には・・・・ほかのところでの待ち合わせは出来ない。
約束の30分前には改札口に立っていた。
「おまたせ・・・・」
彼女も5分ほど前には到着したのだが・・・・やはりお昼と同じスーツだった。
「すんません・・・私・・・着るものがこんなのしかなくて」
彼女はしばらく私の全身を見ながら・・・・・
「なかなか良いんじゃない?」
そう言った。
「でも、先輩の洋服と全く似合わないでしょ?」
「姉と弟が・・・カップルと間違えられるような洋服を着ているよりいいと思うよ!」
姉と弟・・・・言われてみるとそう見えなくもない。
「じゃ行こうか・・・・・」
彼女は先に立って歩き出し・・・私はそのあとを小走りに駆けだした。
背が高い・・・ということは・・・彼女は脚も長いのである。
じゃっかん私の方が身長はあるが・・・・自慢じゃないが胴がより長い。
つまり、歩幅は彼女の方が大きいのだ。
5分ほど歩いただけで疲れてしまった。
「ここよ・・・」
連れて行かれたお店は・・・・学生たちが良くコンパで使っているような居酒屋ではなく・・・こじんまりした小料理屋であった。
10人ぐらい腰掛けられるカウンターがあり・・・・後ろの小上がりは2テーブル・・・
「あら・・・麗ちゃん・・・・男の子を連れてくるなんて珍しいじゃない?」
この時初めて「キリン先輩」のファーストネームが「麗子」であることを知った。
「この子ね・・・・大学の後輩なんだけど・・・・おかみさんと一緒の青森県出身だから連れてきてあげたのよ。」
小上がりの奥の席に上がりながら、彼女がこう言うと・・・・
「へえ・・・あんたも青森なの?・・・・青森のどこよ?」
女将が興味深げに聞いてきた。
「むつ市です。」
「あらそう・・・・あたしは青森市・・・・へえ・・・・青森県人か・・・・もっともあたしはしばらく帰ってないけどね」
そんなことから・・・女将と私の故郷談議がしばらく続いた。
話しに入って来れない「キリン先輩」が・・・・
「ねえ・・・なんか作ってよ・・・・それからあたしは日本酒・・・・ほら津軽のお酒があったでしょ?・・・・あれにして・・・・ナイト君は何にする?・・・・日本酒で良いんでしょ? 」
口をはさんだ。
「私も・・・じゃあ日本酒で」
「このお酒・・・・辛口すっきりで美味しいんだから・・・」
女将は御銚子に入った日本酒を運びながら、私に小声で囁くように言った。
「この女には気をつけなさいよ・・・・元は九州女だからお酒は強いからね」
もちろん冗談で・・・「キリン先輩」にも聞こえるように囁いていたから・・・彼女も切り返した。
「そんなことないよ・・・・この子は土木科だから・・・きっとあたしより強い・・・」
偏見である。
私は大学に入るまで・・・・まるで飲んでいないと言えば嘘になるが・・・そんなにお酒は飲んだ事がなかった。
ましてや…ビールなどの軽めなお酒だけだから・・・・日本酒はお正月のおとそ程度しか飲んだことはない。
でも、「九州女」という言葉に引っ掛かって・・・そのことを質問した。
「N田さん・・・・九州なんですか?・・・・・私はてっきり東京生まれの東京育ちだと思ってました。」
「ああ・・・生まれも育ちも・・・・小学生の時までは熊本」
「熊本」は・・・・私の祖父の生まれ育ったところである。・・・そのことを告げると・・・・
「へえ・・・熊本のどこなの?」
私も詳しくは知らないが・・・・祖父の実家は・・・祖父が一人っ子だったことから・・・今は私の母親の姉夫婦が守っていた。・・・・確か「水前寺公園」の近くであった。
「あら・・・私も水前寺公園の近くで生まれたのよ?」
カウンターの中で女将が、料理の手を休めて・・・
「青森育ちで熊本の血も入ってるのか・・・・それじゃあんたはお酒が強いね」
そう断言されたが・・・・正直・・・今でもお酒は弱い。
この時も・・・「キリン先輩」の肌は・・・いくら飲んでもほの赤くなる程度なのに・・・・私ときたら茹でダコのように真っ赤になっていたに違いない。
そのうち別のお客も入ってきて・・・・女将さんとの話は途切れ・・・・話題はコーラス部のことになってきた。
続く
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