K会長の写真はいかがでしたか?
予想通りの人だったでしょ?
実は会場で「K会長」と「O田直前会長」に…「ブログに載せるから写真を撮らせろ」って了解を貰ったんです。
「目を隠す」つもりはあるけど、酔っ払ってるから忘れるかも知れない…ってことまで了解貰ってまして、だからああいう風に発表しちゃったんですけどね。
でも「悪乗り」する人達だから、二次会の写真は使えません。
あ、ちょっとみっともないだけで、家庭内紛争まで発展するようなものじゃないですよ?
だって僕等は、父兄の鏡たる…真面目な「PTA役員」ですから…
それじゃ「小説もどき」の続きを…
《歌手になるつもりが…(29)》
そんなことがあって、話しは夏休みまで飛ぶ。
その間…「キリン先輩」が私のアパートを毎週必ず一度は訪問するようになったが、キス以上のことは無かった。
もちろん、カップ等の食器類は増えてきたのだが…
毎週火曜日の「ボイストレーニング」も、「T崎先輩達」が「地方へ営業」に行くとき以外は順調に続いていたし、彼等のステージもキャバレーを中心に何度か見る機会を得たが…
そのことは「キリン先輩」を騙し続けることが出来ていた。
もうひとつ…「キリン先輩」への借金返済の件も、なんとか解決した。
実家の建設会社で、大手の舗装会社から依頼を請け…舗装班が高速道路の舗装工事にやって来たので、そこへアルバイトとして潜り込ませて貰ったのだ。
東京の高速道路の舗装工事は深夜に行われるので、大学の授業にはさほど問題はなく…無事借金を返し終わって、幾ばくかの小遣いも残った。
それは「キリン先輩」を喜ばせた。
金を返したってことより、私がそのために真面目に働いたこと…それが嬉しかったようで、借金を返す当日…彼女は私のアパートでエプロン持参で夕飯を作ってくれた。
日々の生活が順調に進む幸せを感じたものである。
夏休みが近づいてきたある日…
昼休み、部室に行くことがあった。
部室のドアを開けようとしたら、中から「A山部長」が誰かと話している。
「12月の定期演奏会の会場はこっちで押さえておきました。…もちろん、チケットも半分預からせて頂きますよ。…だから、T崎達の件…よろしく頼みますよ?」
なんの話しをしてるんだろう?
私は何の気無しにドアを開けてしまった。
中にいたのは、顔見知りの男…「T崎先輩達」のマネージャーだった。
「A山部長」は私の顔を見ると手に持った分厚い封筒をアイビージャケットの内ポケットに慌ててしまったように見える。
一瞬、悪巧みをしている「悪代官」と「越後屋」のように思えた。
しかし、マネージャーは私を「悪巧み」の仲間であるように扱ったのだ。
「A山さん…ナイト君なら大丈夫ですよ。…なにしろT崎が可愛がってますからね。…毎週のボイストレーニングにも呼んでるんですよ。」
確かに可愛がってもらってるとは思うが…何が「大丈夫」なのか理解出来ない。
以前、「こだぬき先輩」が…
「1番の悪はA山部長よ!」
そんな言葉を吐き捨てたことが思い出された。
私のことを味方だと思ったのか…「A山部長」はホッとしたように…
「ナイト…そうか…おまえがT崎の後に入るのか?」
ニッコリと微笑む。
「T崎先輩のあとって?」
「T崎は今年で卒業だから、引退してレコード会社にディレクターとして就職するんだよ。」
「卒業しても、グループで歌い続けるんじゃないんですか?」
「いつまでもフォークじゃないだろ?…それにあのグループは、内のコーラス部の中のグループってことになってるんだ。…いつかは卒業しなくちゃならんだろ?」
え?私があのグループで「T崎先輩」のアトガマ?
っていうことは、メインヴォーカルじゃないか!
テレビのセンターマイクで歌う自分の姿が浮かんだ。
でも、前に社長の前で歌ったときに、合否については何も言われてなかったのに…
「最近のボイトレ、…だいぶ良くなってきたし…かなり期待してるんだよ。」
マネージャーが続ける。
この言葉に…私は有頂天になってしまって…
今、目の前で行われた「A山部長」とマネージャーの怪しいやり取りはすっかり忘れてしまったのである。
そして、そのことを「キリン先輩」に言う…今が一番良い機会だ…そう思ってしまったのである。
夜の練習が終わり、私はいつものように彼女に目配せして、待ち合わせ場所に向かった。
最近では、「キリン先輩」と私の関係を気づいている部員もいるようだが…バレていようとどうであろうと…公私のけじめだけはつけておこうと、秘密で会うことにしていたのである。
「俺、麗子に話しておきたいことがあるんだけど…」
公私の公の時は「先輩」と呼び、私の時は「麗子」と呼んでいた。
「どうしたの?…ずいぶん嬉しそうね。」
よほど嬉しそうな顔をしていたのだろう。
彼女もそれに併せて微笑んでいた。
私は、今まで「T崎先輩達」とボイストレーニングを続けていたこと…そのグループのメンバーになれそうなこと等を話した。
しかし、「キリン先輩」の顔から笑顔がみるみる消えていったのである。
続く
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