先ほども申しあげましたように・・・「魔法の木のマスター」のところに初孫が・・・・そしてしばらく行方不明だった「rinちゃん」が帰ってきました。
今日はなんだかメデテェな!
それじゃ、「小説もどき」の続きを・・・・・
《歌手になるつもりが・・・(33)》
翌日の朝・・・・私は大学へ向かうつもりで駅に急いでいた。
昨日の「T崎先輩」の提案は・・・・おそらく今日・・・「キリン先輩」から根掘り葉掘り聞かれることになるであろう。
その時は、「ボイストレーナーが私の声を気に入って」・・・「T崎先輩達」のフォークバンドとは全く関係ないところで、個人的に安いレッスン料でレッスンを続けてくれる。・・・・そう言う風に説明をするつもりだ。
彼女だって、「スキルアップ」のためのボイストレーニングは賛成だと言ってくれてるし・・・・問題はない。
少々の嘘はなんとかなる・・・・そんな気もしていたが・・・・
駅に着くと・・・ホームに「キリン先輩」が大きく手を降る姿が見えた。
「なんだよ・・・・あさ、駅まで迎えに来てくれるなら・・・前もって時間を決めてくれればよかったのに?」
しかし、彼女はそんなことはどうでもよいという風に・・・すぐに昨日の報告を欲しがった。
「チャント断ってきたんでしょうね?」
「ああ・・・T崎先輩に理由を話して・・・・プロの歌手になるつもりはありません・・・ってボイストレーニングを断ってきた。」
「よく簡単に許してくれたわね?」
「俺の意志が固いと思ったんだろ?・・・でもね・・・・・」
最初に考えていた通りのことを話した。
「トレーナーが・・・・残念がってね?・・・・せっかくこれまでレッスンを続けてきたんだから・・・フォークバンドとは別に、個人的にレッスンしてくれるって・・・それも格安で教えてくれるっていうんだよ?・・・・・俺もせっかく声が出るようになってきたから・・・途中で辞めるよりは・・・その先生にボイトレを受けさせてもらえるなら良いかなって思って・・・スキルアップのためだったら良いって言ってたよね?」
彼女は少し疑いのまなざしで私を見た。
「それも断ってくれない?・・・・ボイストレーナーなら・・・あたしがお願いしている先生がいるから・・・そっちに頼んでみるから?」
私は慌てた。
「だって、今まで教えてくれた先生が・・・・せっかく安く教えてくれるって言うんだよ?・・・・レベルだって格段に上がったと思うから・・・俺は今の先生で良いと思うんだけど・・・」
「あら・・・ナイト君・・・あなたは私と一緒にレッスンを受けるの嫌なの?」
「そんなことないよ・・・一緒に受けられればそれほど良いことはないと思うけど・・・・レッスン料だって高いだろうし・・・・」
「そのトレーナーのレッスン料っていくらなの?」
私はますます慌てた。
最初のレッスンから・・・プロダクションもちだったから・・・・基本料金がどれくらいなのかさえ知らない。
「えーっと・・・・確かワンレッスン・・・・・10000円だったかな?」
私は彼女の眼の色をうかがいながら・・・そっと答えた。
「え?それって高いじゃない」
「あ、違う違う・・・・・あれはフォークバンド全員分だから・・・」
私はどれくらいが適正価格なのか全くわからない。
しどろもどろの私を見て・・・「キリン先輩」はますます怪しんだのだろう・・・
「とにかく、・・・・そのトレーナーさんが個人的に教えてくれるっていうのも全部断って!」
この日から・・・私はしばらく怖い夢を見続けることになる。
それはこんな夢だった。
「T崎先輩」が・・・大学の構内で私を見つけて近寄って来る。
そして・・・・「君、うちの社長を甘く見ない方がいいよ・・・・・組関係の人がしょっちゅう出入りしてる会社だからね」・・・そう言うのだ。
それから場面が変わって・・・・アパートの中にいる。
真っ暗闇の部屋なのに・・・・ドアを「ドンドンドンドン・・・・ドンドンドンドン」
「ナイトさん、いるんでしょ?・・・・組長がいつになったらレッスン料を返してくれるのか聞きたいって言ってるんすけど・・・一緒に来てもらえませんかね?」
そしてまた・・・「ドンドンドンドン・・・・・」ドアをたたく音が響き・・・・・そこで汗びっしょりで目が覚める。
その同じ夢の連続だった。
当時はまだ、芸能界と暴力団の黒い噂が残っていた時代であったから・・・・全くの素人の私には、それが当たり前だと思っていたのだ。
しかし・・・それからも特別に変わったことはなく・・・いつしかそんな夢も見なくなっていった。
そして夏休みが始まり・・・・・しばらくはデパートの配送センターのアルバイトをして合宿費を稼いだ。
聞くところによると、合宿費の半額も「T崎先輩たち」のプロダクションが出していたという噂があったが・・・・伊豆での一週間の合宿費用の個人負担分にしては・・・当たり前の金額だったと、今思い出している。
その合宿までの間は・・・・ごくごく普通の学生生活を送り、「キリン先輩」とも、ほぼ毎日会うことができたし・・・アパートに来て夕飯を作ってくれたりもした。
もしかしたら学生生活で一番充実した毎日だったかもしれない。
いよいよ合宿に旅立つ日・・・・電車に乗り込むと・・・「A山先輩」から、今回の合宿・・・・・「T崎先輩たち」が3日間だけ参加すると伝えられる。
部員全員がざわつく・・・・
私はなにか胸騒ぎがした。
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