言っておくが、ここに登場する「ある男」とはけっして私ではない。
俗にいう「イケメン」ではないのに、なぜか非常にモテた男がいた。
「イケメン」どころか、どちらかというと「なみ以下」・・・「ブサメン」と言った方が良いくらいであった。
私の大学時代の友人ではあるが、入学当初から女性がそばにいないことの方が珍しいくらい。
いなかったのは、授業の時ぐらいだったろう。
ちなみに私たちは「土木工学科」・・・・今でこそ女性土木技術者も増えてきたが、当時の「土木工学科」には女性がひとりもいなかったのである。
入学式当日・・・・・彼は学生服で現れた。
学籍番号が近かったせいもあり、私はすぐに彼と会話することができた。
「青森から来たナイトっていいます。・・・・右も左も判らない田舎者だから・・・・よろしく。」
「あ、俺はテルっていうんだ。・・・同じようなものだよ・・・・俺だって秋田だもの。・・・よろしく」
同じ東北出身者ということで・・・・そんな友達ができてホッとしたものだったが、入学式のセレモニーが終わり外に出ると・・・・
「テルちゃ~ん!!!」
大きな声で近付いてくる女性がいた。
「あ、あれは姉・・・」
彼は小さな声で言った。
「お姉さんが入学式に来てるのか?」
私は少々あきれた。
大学の入学式である。・・・・・そこへ父兄同伴なんて・・・・
今でこそ珍しくない光景らしいが、私たちは「土木工学科」である。
他に父兄の来ている新入学生は誰もいなかった。
「来なくっていいって言ったのにな・・・・・」
彼はつぶやきながらも、これ以上ないというような笑顔で手を振り、彼女を出迎えた。
派手な洋服の「姉」だったが・・・・兄弟の割には全く似ていない。
「あ、俺友達ができたんだ。・・・・ナイト君・・・」
彼は私を紹介した。
「よろしくお願いします。」
私も、その「お姉さん」に挨拶をした。
「あら?・・・・テルちゃんのお友達?・・・・アタシ、歌舞伎町の◎▲□っていうお店にいるアケミ・・・・今度テルちゃんと一緒にお店に来てね?」
え?歌舞伎町?
その時、私は察することができた。
この女・・・・「テルの姉」ではない・・・・・・・・
すぐに「テル」は白状した。
「あ・・・もうばれちゃったか・・・・そう・・・姉じゃないんだ。」
テルは、右腕に絡みついてくるアケミに身を任せて・・・・さらに続けた。
「俺さ・・・一浪で新宿の予備校に通ってたんだけど・・・・その時仲好くなってさ・・・・」
どんな浪人生活をおくっていたんだろう?
この続きを聞きたい?
さらにどぎつくなる予定だけど・・・・・
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