日本語教師が毎日笑って暮らすために

日本語教師が毎日笑って暮らすために

2022.01.06
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カテゴリ: 日本語教育




「お仕事は?何されてるんですか」と聞かれ、「日本語教師です」と答えると
だいたい2パターンの返事です。

①「英語がペラペラなんですか?」

②「日本語が話せたらだれでもなれますよね?」 です。



わたしが思うこの2つの質問への答えはどちらもNOです。

まず、①英語が話せなくても日本語教師にはなれます。
確かにアメリカやイギリスなど英語圏で日本語を教えている先生もたくさんいらっしゃり、わたしも以前はカナダで教えていました。ですが、日本やアジアなど英語圏以外で日本語を教える場合、英語が話せない生徒がほとんどです。教室の中で複数の国籍の生徒がいることもあるので、
そういった場合は日本語で日本語を教える ケースが多いです。

それから②日本人なら日本語を教えられるか、ですが…
プロとしてやっている身からすれば、けっこう失礼なことを直球で言ってくるな…と引いてしまいます。身近に日本語の先生がいらっしゃる場合はこういう発言は控えたほうがいいかと思います。

想像していただきたいのですが、英語も話せない、日本語も話せない人たちが住む国にいきなり降り立って、「はい、ではこの国の人たちを1年かけて日本語ペラペラになれるように育ててください!」って言われたら、みなさんどうしますか…?
(自分が日本語しか話せない人間だったとして)

けっこう難しくないですか?
海外で教える日本語教師は、ほんとうに「ひらがな」も「こんにちは」も何も知らない人相手に日本語を教えることがあります。
そういう場合、絵や実物、カードなど準備して知識ゼロの人たちに、漢字や敬語やいろいろ複雑な日本語を教えるのは結構大変なお仕事です。

「日本人なんだから、だれでも教えられるでしょ!」
「日本語教師は資格がなくてもできるでしょ」ということをよくいわれますが、
ただ説明するだけでなく、相手がその言語を運用できるようにしなければならないので
結構な労力、知識、スキルを要します。

日本語を教えるイメージをつかんで?もらうために、

今日は例えばどんな質問をされるのか例に挙げてみたいと思います。





ゼロ~初級者からの質問

まずは全く日本語を勉強したことがない初級の学生さんからの質問をいくつか紹介します。

「わたしは」の「は」はどうして「ha」ではなく、「wa」と発音するのか。

  あるいは「わたしわ」はどうしてダメなのか。

日本語は質問の文でも文末は「?」ではなく「。」をつけるのはどうしてか。

「は」と「が」の使い分けを教えてほしい。

「き」や「さ」などいろいろな形があるのはどうしてか。(フォントの違いですね)

などなどです。いかがでしょうか。

みなさんなら、上手に説明できそうですか?

わたしは「直接法」といって日本語で日本語を教えるスタイルをとっていますが、

ひらがなさえもわからない、何もできない生徒さんにも日本語で日本語を教えています。

相手が英語ができれば、わたしも多少は英語が話せるので、ある程度複雑な説明もできるんですが、

さきほども述べたように、生徒が100%みんな英語ができる!というわけではありません。

また、クラス単位の授業で1つのクラスにいろんな国籍の方がいると共通語が日本語なので、日本語で説明するのが一番フェアなんです。

そういうとき、相手の限られた日本語の語彙の中でどうやって質問に答えるか、説明するかがプロの教師の腕のみせどころ?ですよね。

 みなさんなら、どうやって教えますか。

初中級~の学習者さんからの質問

お次は日本語勉強をだいたい300時間以上勉強した方からの質問です。

日本語レベルでいうと、初中級ぐらいです。

日常的な会話であればだいたい理解できるぐらいのレベルです。(っていってもあまりピンとこないかもしれませんが…)

★「あの2人が来ないことには、パーティーは始まらない」の「~ないことには」の文法は「来なければ」「来ないなら」「来なかったら」「来ないと」と何が違うのか。

この「~と」「~ば」「~たら」「~なら」の質問は教師泣かせというか、日本語教師プロの方なら一度は躓く?ポイントかと思われます。。。

★「女性のかなしげな表情」の「~げ」はどんな言葉と使うのか。

「このケーキ、おいしげですね」が間違いなのは、どうしてか。

★「温暖化にともなって、問題が起きている」の「~にともなって」と「~につれて」の違いは?

初中級以降になると、文型によってこまかく使い分けがあり、理解してもらうためにたくさん例文をだしたり工夫もするんですが、けっこう大変です。

上にあげたのは本当に基本的な文型で、日本語能力試験N1レベル(一番レベルが高い)になると、日本人も使ったことがない、普段使わない文型がたくさん出てきます。

普段使っている言葉なら、ニュアンスやどんな場面で使うかの想像もしやすいのですが、すごく硬い表現であったり初めて触れる表現だと、それを人に教えるのって難しいですよね。

さらにただ日本語で自由に説明するのではなく、相手は日本語を勉強している外国人なので、いかに相手が知っているやさしい言葉でわかるように伝えるか、を考えて工夫するのはけっこう大変です。




ま、ここまで書いても、

「いや、わたしなら大丈夫!余裕で日本語教えられる!」って言う方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが…

 人によって向き不向きもありますし、まったく準備や勉強せずとも上手に教えられる人もいるのかもしれません。

でも、やっぱり願わくは

少しでも日本語教師の地位向上することと、

日本人が間違ったことを教えて、外国人がその間違った日本語を使って困るようなことがないこと

です。それに少しでもこの記事が役立つといいな…と思っております。






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最終更新日  2022.01.06 00:00:10
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