ガムは私が心にもない言葉を発しない人間だということはよくわかっていたみたいです。
土手に突っ込んだ時点で、車を止めた人に私は助けを求め、警察が来ました。
警察の方に事情を話し、
「このような状態なので安心して暮らせない」と訴え
家の鍵を取り上げてもらいました。
ガムには離婚届に署名捺印して郵送するように言いました。
後で気づいたのですが私の机の中の「息子が家に入れてくれたお金50万円ほど」が
無くなっていました。家に泥棒がいたわけです。
ガムは、たぶんこうなることを想定して、いたのでしょう。
家を出るのも、一人ではできない。追いつめられないと。
次の日には念のため鍵屋さんに来てもらい、鍵を取り換えました。
娘には学校の行き帰り、家の周辺は特に気をつける様に言いました。
が、その日を境にガムの姿はぱったりと消えてしまったのです。
離婚届もいくら待っても送られてきませんでした。
私はきっと死んだんだろうなぁ、と思ってました。
と、言うより、死んだんならいいなぁ、と思っていました。
娘はひどく怒っていました。
私に対してではなくガムに、無責任すぎる、と。(まだ、高校生でした)
息子はもっと複雑だったようです。
私は娘に「あなたに対する責任はガムが会社を辞めてぶらぶらするようになってから
金銭的にも、そのほかのことはもっと前から私が対応していたんだよ。
だから、あきらめなよ。3人でもやっていける。」と言いました。
息子は「俺はやっぱり、親父にとってはただ長男扱いで、本当はいらなかったんだな」
と、言いましたが
「あんなもんにそう思われてもかまわないじゃないの。私たちもGはいらなかったんだし。」
とは言ったものの、長年邪険にされてきて、このありさま、ということに
憤懣やるかたないという様子でした。
この話をしてから、子供から父の話を聞いたことがありません。
3人でやって行く、という覚悟は子供の方が強かった。
あれから4年余りたちました。
却って生活は楽だと思います。
私たちにとってガムはいったい何だったのか、と振り返ると
やはり靴底にくっついたガムとしか言いようがありません。