台湾東部の花蓮県で深夜に発生した地震なのだが、台湾の専門家からは被害を受けた建物は近くに活断層が走っており、構造上も下層階に壁が少なく地震に弱かったことを指摘する声が上がっているという。地震では10人が死亡、272人が負傷したそうなのだが、行方が分からなかった住民らは所在が次々に確認され連絡が取れていない人は少なくなり、生存率が著しく低下する発生から72時間が経過しても懸命の救出作業が続いているというのだ。日本政府が派遣した捜索隊も被害が最も大きい花蓮市内の「雲門翠堤」ビルに到着し捜索活動に加わっており、日本の捜索隊は東京消防庁や海上保安庁などの専門家7人で、日本から運び込んだ電磁波を利用した最新の生命探査装置などを使った捜索を試みているという。
雲門翠堤ビルは住居と宿泊施設が入る建物は地震の揺れで30度ほど角度が傾く中、まだ連絡の取れない観光客が内部にいる可能性があるとされているが、各国から支援の申し出が寄せられる中台湾単独で救助を進める方針のなかで「台湾にはない高性能の探査装置を持つ日本からの支援は行方不明者の迅速な発見につながる」と台湾総統府も判断したというのだ。現場には蔡英文総統が訪れ日本側に謝意を伝えた。台湾と言えば東日本大震災が起きた際、日本には世界中から多くの 義援金 が集まったが、どこから最も多くの義援金が送られたのかというと 台湾 だということは意外と知られていないそうなのだ。しかも台湾全土から送られた義援金の総額は 200 億円 にものぼったというのだ。
台先端技術や効率的な公共交通機関に治安の良さなど台湾をめぐる評判は決して低くないというが、このたびの地震であらわになったのは手抜き工事や疑わしい安全基準が横行していた「過去の台湾」の姿だという。台湾ではちょうど 2 年前に同規模の地震が南部の台南で発生したが、この時の地震でも市内の大半の建物は大きな揺れに耐えることができたが、集合住宅 1 棟が倒壊し 117 人の命が犠牲となっている。地震で倒壊する建物の多くは建築基準改正前に建てられ物で補強工事が行われていない建築物だという。地震では花蓮市内の4棟の建物が大きく傾くなど被害が集中しているが、台湾メディアに対して専門家は活断層の近くにあってこの断層は過去数十年に複数回大きな地震を引き起こしたと指摘している。
3棟は低層階に商業スペース用の空間を広くとるため壁と柱が少ない構造で上部の重さを支えきれなかった可能性があるという。今回の地震では鉄筋不足といった欠陥が傾いた集合住宅で確認できたと検察当局が明らかにしている他、コンクリート製の構造体に発泡スチロールや空き缶が詰め込まれていたことが写真で判明したという。これを受けて犠牲者の遺族からは激しい憤りの声が上がっているが、台湾で建築基準が改正されたのは死者 2400 人を出した巨大地震の後だが、改正後は鉄筋の本数を増やし耐性を向上させるなど、建物の耐震強度を上げるためにより厳しい建築要件が導入されたという。しかし全ての建物が基準を満たしているわけではなくそれ以前に建てられた一部建物への補強は不十分というのだ。
台南土木技師協会の前代表は耐震をめぐる最大の障壁は、老朽化した建物を補強するのに必要な資金だと語っている。「古い建物の住民は、あまり裕福でない傾向にある。たとえ彼らが安全面での問題に気付いていたとしても、どうすることもできないと考えて現実逃避したり無視したりするだろう。別の場所への転居を選ぶかもしれない」と述べ、今後の大きな地震で古い建物が倒壊する恐れがあることを指摘している。国立台湾大学の土木工学の専門家は住宅の補強工事に無関心だったり、工事費用の支払いを渋ったりする人がいる以上は政府主導で安全性の向上を目指す必要があると話している。日本を含めた環太平洋地域は大きな地震や噴火が起きやすいが、違法建築や強度不足のビルは問題にならないはずだと言われている。
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