ジュネーブで開かれた バーゼル条約の締約国会議で日本代表を務めた環境省の松沢裕官房審議官は、汚れたプラスチックごみを輸出入の規制対象に加える条約改正案が採択されたことを受け「発効される 2021 年 1 月までに国内法を整備せねばならない」と指摘し関連の省令改正などを進める考えを示したという。有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約の対象に汚れた廃プラスチックを加えることがスイスで開かれていた同条約締約国会議で採択されたわけなのだが、これでリサイクル資源の汚れた廃プラスチックは輸入国政府の同意がなければ輸出できなくなるというのだ。この汚れた廃プラスチックを規制対象にする改正はノルウェーと日本が条約締結に主導したといわれている。
世界のプラスチック生産量は年々増加して年間約 4 億トンと言われるが、適切に処理されないプラスチックごみによる海洋汚染への対策が必要だという認識が背景にあって、会議では対象になるプラスチックの範囲をめぐって対立もあったが、最終的には汚染や他のごみの混入が「ほとんどない状態」のものを取引することで合意し実際の運用は各国の判断に委ねている。日本からバーゼル条約の規制対象物を輸出する場合には、条約に基づく輸入国の同意に加え輸入国に日本国内と同等の処理体制がないと輸出を認めないことを法律で定めており、現在日本が廃プラスチックを輸出しているアジアなど途上国で処理体制が日本と同等な国はほぼなく、日本から汚れた廃プラの輸出は事実上難しくなるという。
汚れた廃プラを追加対象にする条約改正案はノルウェーが初めに提案し、共同提案国として日本やスイスにザンビアなどが名を連ねたそうで、スイスのジュネーブで 4 月 29 日から始まった締約国会議で議論し可決していたという。バーゼル条約は国連環境計画が採択した法的拘束力のある国際条約で有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するが、国内処理が原則で輸出の際は相手国に事前通告して同意を得ることを義務付けている。現在は医療廃棄物や廃油が対象でプラスチックは一部を除き対象外となっているそうだが、今回の条約改正でひどく汚れていたり他のゴミと混じっていたりする廃プラは規制対象になるという。具体的には飲み残しが入ったままのペットボトルや食べ物が付着したままの弁当容器などが想定されている。
プラスチックに混ざる不純物の量などの統一基準を作るのは難しいが、このため今回の会議では「汚れ」の厳密な定義はせず各国の判断に委ねることにしている。会議では各国政府や企業に有識者などでつくる協議体の設立も決めたそうなのだが、新しいルールの運用に向けたガイドラインを作成し円滑な発効を目指すというが、採択後に日本は「問題のある廃プラを管理するツールを手に入れた」と歓迎した。これまで日米欧を中心に先進国から出た廃プラは「リサイクル資源」として主に中国に輸出されてきたが、その中にはリサイクルに適さない汚れた廃プラも多く混じっており、環境汚染を防ぐために中国は2年前に輸入を中止している。代わりにベトナムやマレーシアに流れたがすぐに各国の処理能力は限界に達したとされていた。
環境問題に詳しい米カリフォルニア大学のガイエル教授らによると海には少なくとも年間 800 万トンが流れていると推計し、生態系や漁業などに深刻な悪影響を及ぼしているという。日本は汚れた廃プラスチックの対象について指針を定める方針だが、他のごみや飲食物だけでなく土や石が混ざった状態のものが想定されている。日本は年間の廃プラスチックの排出量が約900万トンで、このうちリサイクル資源として約143万トンを輸出しているが輸出先各国の処理能力は限界に達しているうえ洗浄・選別が十分にできる能力も不足し、処理されずに海などに捨てられる事態となっているという。またバーゼル条約には廃プラの排出大国である米国は加盟しておらず輸出削減にどこまで効果があるかは不透明だという。
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