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さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
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さて今の世の中、目にアレルギー・かゆみを起こす原因と言うのは何かしら年中あるものです。 スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどの花粉がどの季節でも飛んでいますし、中国からの黄砂や大気汚染物質のPM2.5 も目に症状を引き起こします。 そんなこんなで、最近は「年中かゆみ止めの目薬が欠かせない。」という患者様も増えてきています。ただ目薬を嫌がるお子様や、手が震えてなかなか目薬がちゃんと入らない高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。 ここでちょっと余談なのですが、当院では白内障手術前に患者様が目薬を自分で点せるか実演して頂いています。看護師が「目薬、点せますか?」とお聞きすると、ほぼ100%の方が自信満々に「はい、大丈夫です。」とお答えになるのですが、実際にやってもらうとまともに出来ている方は半分もいません。そのくらい目薬を点すというのは難しいことなんですね。(笑) もちろん、点せない方にはその後正しい点眼方法を指導させていただいています。 そんな中、アレジオンLX点眼液と言う現在ナンバーワンのアレルギー点眼剤をクリームにしたものが近日発売されることになりました。なんと1日1回目の周りに塗ればそれが皮膚からジワーっと浸透して目のかゆみを抑えてくれるという、画期的な魔法のようなお薬です。 眼科専門医としての勘から言うと、これは滅茶苦茶売れそうな気がします。実際の製剤のサンプルを戴いたので、次回はその使用経験についてお話ししようと思います。(続く)
2024.05.10
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さて最近はスマホやタブレット端末で長時間目を酷使される方が激増しています。そしてその結果として近視の患者様が世界的に急増して大きな問題となっています。また特に受験戦争で幼い頃から眼をハードに使うことの多い東アジア(中国・韓国・日本)では明らかに近視の子供が多いことも知られています。 そしてこの近視の何が怖いかというと、 強度近視(具体的にはマイナス7D以上)になると加齢と共に加速度的に目の病気が増えることが統計的に明らかになっている からです。具体的には加齢黄斑変性や緑内障などです。そしてこれらの病気により世界中で将来の失明者が激増するのではないか?と心配されているのです。 失明は社会や医療経済に及ぼす影響が大きいので、社会全体として近視の進行を抑えることが非常に重要です。 そしてこの近視の進行抑制にはシステマティックレビューや大規模なコホート研究により、「間違いなく有効な方法」が実は既に明らかになっています。知りたいですよね。 それが何かと言うと、、、、、、 1日あたり120分以上の屋外活動をすること なのです。 屋外で太陽の光に当たること(光線曝露)によって近視の発症率が有意に低下することが証明されている んですね。 これはとても簡単で誰でも明日からできるやりかたです。なので、大人も子供もスマホやパソコンばかりせずに毎日2時間は外で活動するといいのです。是非覚えておいてくださいね。
2024.05.17
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さて当院では新型白内障手術機械のインフィニティを購入したところですが、今日は製造販売元の日本アルコン社のサージカル担当の方にお願いして、A-Vit(エービット:前部硝子体切除)の勉強会をしました。 このA-Vitというのは、白内障手術時に後嚢破損(こうのうはそん)という合併症が起こった場合にトラブル処理に使う機械です。登場頻度は極めて低いのですが、だからこそ事前の入念な準備が必要なんですね。 本物のセットを開けて、インフィニティに接続して使用してみます。 このインフィニティには、アキュラスという硝子体(しょうしたい:目の奥のドロドロした物質)切除用の本格的で切れ味の良いカッターをつなぐことが出来ます。しかも25Gという極めて細い最新型の物が使えます。傷口を拡大せずに小さな切開創から使用できるので患者様の負担も軽いんですね。 ただ、インフィニティで唯一問題なのは、A-Vit使用時に毎回「Vitrectomy Cut I/A」モードを選び直さなくてはならないことです。元々の設定が「Vitrectomy I/A Cut」モードになっており、これを修正できないんですね。 A-Vit時には、必ずCut→I/Aモードを最初に使用する必要があります。I/A→Cutモードを先に使うと網膜はく離などの重い合併症に繋がることがあるので要注意なんですね。 素晴らしいマシンであるインフィニティがこんな単純なおかしな設定を修正できないというのは不思議な気がするのですが、サージカル担当の方によると「アメリカでは専門が別れているので、白内障手術専門医は本当に白内障しかしない。トラブルが発生して追加のA-Vitが必要になるとそのまま硝子体手術専門医に送るシステムになっておりあまりA-Vitを使わないので、多分そのせいで細かい設定に大らかで気にならないのでしょう。」ということでした。 うーんなるほど、機械を通してその国の医療システムが透けて見えると言うことなんですね。とっても勉強になりました。
2011.10.13
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さて今年2023年のおそらく9月以降くらい(現時点ではまだ決まっていない)のことになるのですが、レバミピド懸濁性(けんだくせい)点眼液2%「参天」が発売になります。 これは2012年に大塚製薬から発売されたドライアイ治療薬であるムコスタ点眼液の後発品(ジェネリック)となります。発売後10年以上が経過しすべての特許が切れたので他のメーカーが安価な後発品を出せるようになったんですね。 さて先発品のムコスタ点眼液ですが、作用としては結膜(白目)の杯細胞というものを増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というネバネバ物質を出すので、結果として目の表面で働く分泌型ムチンが増加するということになります。これによって涙の質と量が改善されます。 更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、元々が胃薬であるムコスタには炎症を抑える作用もあります。この「杯細胞の増加&抗炎症作用」の2つの力で、この10年間ドライアイ治療のキープレーヤ的な存在として大活躍してきました。 そして今回、このムコスタ点眼液の後発品がひっそりと参天製薬から発売されることになったのですが、そこには、 我々全眼科医を震撼させる「衝撃の事実」 が隠されていたのでした。。。。(続く)
2023.06.22
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さて2012年の発売以来ドライアイ治療で大きな役割を果たし続けてきた名薬 ムコスタ点眼液 。 このお薬は元々は胃薬でそれを目薬に仕立てたものなのですが、なかなか溶けない・成分が安定しないという欠点があったようで、開発元の大塚製薬は製剤化に苦しみ抜いていました。そもそもは2010年位に発売予定だった記憶があるのですが、それがどんどんと延期され我々眼科業界の一部では「出る出る詐欺」とまで言われるくらいのお待たせ状況でした。(笑) そうしてようやく2012年に発売となったのですが、普通の点眼瓶(マルチドーズ製剤)で出すことが出来ず、1回きりの使い捨てタイプ(ユニットドーズ製剤)での登場となりました。 このタイプの製剤は毎日使うにはやや不便があるので、当然大塚製薬は製剤をより安定させて普通の点眼瓶タイプでの発売を目指していると2012年からずっと聞いていました。そして我々臨床の第一線に立つ眼科専門医もそれに強く期待していました。 ただ、時が流れても一向に実現せず、複数の情報源によると「チャレンジを続けているが、技術的に極めて困難で難しい。」とのことで、私は「あぁ、これはもう無理なんだろうな。」と半ば諦めていました。。。。 そんな中、今回不意に登場した参天製薬からの後発品(ジェネリック)は、何と平然と普通の点眼瓶タイプとして我々の前にその姿を現しました。! 日本有数の製薬会社である大塚製薬が、「恋焦がれ全力を尽くし10年の歳月をかけても達成できなかった幻の姿」で忽然(こつぜん)と出てきたのです。 中身が白濁液なのは先発品のムコスタ点眼液と一緒ですが、 粒子がより細かくなっているのかな?、点眼後の霧視(むし:霧がかかったようにぼやけて見える症状)がより軽くなっているようにも個人的には思いました。 眼科専門メーカーである参天製薬は元々、「薬を溶かして目薬に仕立て上げる能力」が世界一 と言われています。今回の「レバミピド懸濁性点眼液2%参天」の登場は、その技術力の異次元の高さと巧みさを改めてはっきりと満天下に示す象徴的な事例となりました。 ちなみにここで一言補足しておくと、これは大塚製薬の技術力が低いという事では全くありません。大塚製薬は抗精神病薬「レキサルティ」などでは世界トップクラスの戦闘力を誇る、日本を代表する製薬メーカーだからです。そうではなく、眼科専業で命を賭して日々目薬作りに邁進している参天製薬があまりにも特異的に凄い、というだけのことです。(笑) ま、いずれにせよ、秋になればこの待望の「参天版ムコスタ点眼液」が市場に登場してきます。実際に点眼した感触も非常にいいですし、眼科専門医としての私の直感では馬鹿売れしそうな気がします。実際の発売が今から楽しみですね。♪
2023.07.14
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さて世の中には、「寝る前には、決して目薬を点してはいけない」 という昔から語り継がれている伝説があります。 今でも特にご高齢の患者様では信じている方が多く、「夜、寝る前に目薬をすると、寝ている間に急死することがあると昔聞いた。あぁ、恐ろしい。絶対に点さない。」と診察室で言われることもあります。 またこれの違うバリエーションでは、目の病気が悪化したときに「もしかして、寝る前に目薬をしたのでそれが悪かったのでしょうか?」と真顔で訊かれることも良くあります。 最初に結論を申し上げると、「寝る5~10分前までに目薬をすれば何の問題もありません。寝る直前だと、涙の流れが停滞することにより成分によっては目への刺激が長引くことがあるので望ましくありません。」 ということになります。 では、一体どうしてこのような不思議な伝説が生まれたのでしょうか? それは、大昔に良く売れていた 「ある目薬」 が引き起こしたことだったのです。 具体的には、収れん・消炎作用がある 「サンチンク点眼液」 です。 この目薬には「硫酸亜鉛」という強い成分が入っていて収れん作用があるので、充血が良く取れる・目が白く見えるということで人気があり、大昔には良く病院で処方されていました。ただ硫酸亜鉛は刺激が持続する可能性があるので、「決して寝る前に点してはいけない。」と添付文書に書かれていたのです。でも当時はとても人気のある目薬だったので、きっと多くの副作用が出たのでしょう。そして上記の伝説が生まれたという事です。 今では硫酸亜鉛の様なリスクのあるお薬を使わなくても、もっと安全に充血を改善することが出来る目薬がたくさん出たので、サンチンクは「過去のお薬」となりました。そしてついに今年2023年、販売中止となりました。 「1つの時代が終わり、伝説だけが残った。」 ということですね。
2023.01.13
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さて当院は開業して15年が経過しているわけですが、それに伴って経年劣化で色々とボロが出てきております。 そういったものは見つけ次第迅速にメンテナンスを入れているのですが、その一環として先日院内のボイラー設備を新品に交換しました。 今後もあらゆる保守・点検を怠らず、日々最高の状態を保って皆様の診察に当たって参ります。
2024.04.24
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お料理、特に揚げ物などをしていて天ぷら油が眼に入りかけたことはありませんか?高温の油が眼に入ったらどうなってしまうのかちょっと心配ですよね。 ところが人間というのは良く出来たもので、現実にはなかなか油が眼に入ることはありません。危険を察知して瞬間的に眼を閉じるので、「眼に入った!」と思っても実際はまぶたに油が当たっただけということが多いんですね。 先日もある患者様が「天ぷら作っていたら揚げ油が目に入った。滅茶苦茶痛いので飛んできた」といって来院されました。私が「意外と本当に眼に油が入ることはないんですけどね。良く診せて頂きましょう」と拝見すると、、、、、、 油、本当に眼に入っていました。ちょっと珍しいですね。上の写真で緑色に丸く変色している部分がそうなのですが、高温の油が当たって黒目(角膜)に炎症・点状の細かな密度の高い傷に加えて一部上皮欠損を起こしています。黒目は非常に敏感な部分なので、このくらいの傷でもかなり強い痛みが出ることがあります。 目薬と眼軟膏を処方して本日再診して頂いたのですが、 ほとんど治っていて私もホッとしました。 このくらいの傷だったらすぐ治るには治る訳ですが、かなり強い痛みが出るのは事実なので、皆様も料理中には油が目に入らないように十分注意してくださいね。
2009.10.19
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さて、「日本発、世界初」の2つのドライアイ新薬、ジクアス点眼液とムコスタ点眼液が発売されて1年以上が経過しました。 この2剤にはそれぞれに従来型のドライアイ治療薬であるヒアルロン酸ナトリウム(代表は参天製薬のヒアレイン点眼液)を間違いなく超える長所があるわけですが、なかでも大塚製薬が社運を賭けて開発した「ムコスタ点眼液」の出来の良さ・薬効の高さは際立っています。 ところがクスリの出来の良さとは裏腹に売上はズタボロに低迷し、大塚製薬の担当MRの方々はプレッシャーから自社のベストセラー胃薬の「ムコスタ錠」を片時も手放せない、青息吐息の日々であるとの噂も聞いています。(笑) 今日からシリーズで、この「ムコスタ点眼液」の素晴らしさ、そしてそれなのにどうしてこんなに売れないのかについて、様々な角度から考えてみたいと思います。 ムコスタ点眼液の悲劇、その最大の理由は「発売が遅れたこと」でした。ムコスタは後でも書きますが元々は胃薬でした。ところが大塚製薬はその成分を溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際の発売は遅れに遅れました。それは一部で、 「出る出る詐欺」 とまで言われるほどでした。 そしてムコスタ点眼液の発売が遅れる一方で、ライバルの参天製薬からは、 世界初のP2Y2受容体作動薬で、目の水分分泌・ムチン分泌を促進する、ジクアス点眼液が先行して発売されました。 このジクアス点眼液は、それまでのドライアイの標準治療薬であったヒアレイン点眼液を確実に着実に上回る薬効を持っており、この分野では待ちに待たれていた15年ぶりの大型新薬だったこともあって、あっという間にベストセラーとなりました。 また製造販売元の参天製薬は「眼科一筋」の製薬会社で、眼科分野では日本でナンバーワンの製薬会社であり、MR(医薬品の情報を医師に伝える営業マン)さんの数が多くて宣伝体勢が充実していたこともそれを後押しする形となりました。 つまりムコスタ点眼液は、発売前から強力なライバルに圧倒的に先行されるという過酷な状況にあったわけです。しかし、ムコスタ点眼液の悲劇はこれだけに留まりませんでした。(続く)
2013.03.07
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目の中に入った異物や汚れを洗い流すために使う、洗眼薬という市販薬があります。小林製薬の「アイボン」がその代表的な商品です。 私も使ったことがありますが、アイボンで目を洗うとすっきりして気持ちがいいんですね。目にゴミが入ったとき・花粉症で眼が痒くてどうしようもない時などに大変重宝する良い薬だと思います。 ところがこのアイボン、使っているうちにその爽快感・スッキリ感が癖になってしまい、1日に何十回も使用している 「アイボン中毒、略してボン中」 とでも言えるような状態の方がいるんですね。 先日、「目の調子が悪くてアイボンを1日に20~30回くらいしていたのに、治らないので来た」という患者様が来院されました。目を拝見すると、 黒目(角膜)にたくさんの傷(上の写真で水色に濃く染まっている部分)が入ってしまっています。 これはアイボンのしすぎで、ムチン層という黒目の表面を守って涙の状態を安定させる大事な物質が洗い流されてしまったことによるものです。例えて言うなら、 アカスリし過ぎて皮膚がズル剥けて真っ赤っ赤 というような状態ですね。 また、我々の涙には「ばい菌をやっつける天然成分」が元々入っています。アイボンをしすぎるとこの大切な天然成分も流れてしまい、逆にばい菌への抵抗力が減ってしまうこともあるので注意が必要です。 さて、この患者様にはアイボンを中止し点眼薬を処方したところ、1週間後には、 症状はほぼ改善しました。 アイボンは良いお薬ですが、使いすぎるとこのようにかえって逆効果になることもあります。なので、アイボンを使うときには用法・用量(1日3~6回)を必ず守るようにして下さいね。
2010.05.08
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さて先日に続いて今日は、最近の私の白内障手術の進化・改善点についてお話してみたいと思います。 白内障手術では水晶体の前面の膜、前嚢(ぜんのう)を丸くめくるCCCという手技が極めて重要であることは前回の日記でも書きましたが、白内障が進行していると視認性低下のために非常に困難な場合があります。 そういった時には前嚢を染めて見えやすくして手術を行うのですが、数ヶ月前までの私はICG(インドシアニングリーン)という緑色の薬剤を使用していました。ただこのICGは溶解液が作成しにくい、染まりがやや悪いなどの欠点がありました。 そのため、当院では2月から「トリパンブルー染色」という新しい染色法を導入しました。 このトリパンブルー染色液は従来のICG染色液に較べて溶解液が作成しやすく、かつ前嚢が良く染まります。具体的に見てみましょう。 薄い水色に前嚢が綺麗に染まっていますね。上の図のハート型に切れているのがCCCという手技になります。このCCCの後、水晶体の中身を吸い取って行くんですね。 このように当院では常により安全な手術を目指して努力を続けています。もちろんこれからも更に術式を洗練させて、八幡浜地域の皆様の目の健康づくりのお役に立ちたいと考えています。
2010.04.23
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さて次に勉強になったのは、「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう:皆様が眼科の外来を受診して顔を乗せる顕微鏡のことです)所見から考えるぶどう炎の鑑別診断」というプログラムでした。 このぶどう膜炎というのは、 「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。 そして「ぶどう膜炎」と一括りにはしているものの、実際にはその中に細かく言うと数百もの病気があると言われており、このぶどう膜炎の診断・治療は良く「推理小説」に例えられるほど難しく複雑です。 今回のプログラムでは、このぶどう膜炎の中でどの病気が多いかの最新のランキングが示されました。それによると、1位のサルコイドーシス、2位の原田病は不変ですが、3位には急性前部ぶどう膜炎(AAU)が入りました。以前にはベーチェット病がトップ3の常連だったのですが、この数年で減り今回も6位という結果になりました。画期的な新薬が開発されたこともありますが、どうも患者様自体が減っているような印象もあります。その理由は良く分かりませんが。 今回のプログラムは日本のぶどう膜炎治療の第一人者の先生によるものでしたが、本当に素晴らしい内容でした。というのは、 外来で診てすぐ分かる顕微鏡所見だけに絞って、良くある病気に付いて「分かりやすくかつ深く」教えて頂けたからです。その内のいくつかを見ておきましょう。 ぶどう膜炎では角膜後面沈着物(KP)というものが出てくるのですが、病気によってその性状には差があります。 原因疾患1位のサルコイドーシスでは、 このように豚の脂のようなベトッとしたKPが出ます。 5位のヘルペス性虹彩炎では、 KPが「整然とした配列」をしているのが特徴です。 9位のポスナー・シュロスマン症候群では、 サルコイドーシスに似ているものの、ちょっと「少なくて薄い」のが特徴です。 25位のフックスでは、 小さくて範囲が広いのが特徴です。 また炎症細胞が眼の表面の下側に貯まる、前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)というものがあるのですが、 3位の急性前部ぶどう膜炎ではそれが「山盛り」になり、6位のベーチェット病では「サラサラで水平」になるなど、日常良く出会うぶどう膜炎について非常に良い勉強になりました。 そして、 ぶどう膜炎ではすぐに鑑別のための血液検査に進みがちだが、そうではなくスリット(外来顕微鏡)所見で病気を絞っていくことがまず大切、という講師の先生のメッセージが深く心に残りました。(続く)
2013.02.07
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さて当院では最低年に2回、「院内感染対策」に関しての全スタッフを対象とした研修を行っています。これには外部講師を招くこともありますし、院長の私が行うこともあるのですが、今日はその実際をちょっと見て頂くことにしましょう。 この日は「古くて新しい病気」である結核について私が概説をしました。長引く風邪や咳がある場合、それはもしかしたら結核かもしれません。何故なら今でも1年に20000人以上の方が新しく罹っている病気だからです。 そしてこの結核、実は目にも出るのです。 このように結核によって目の奥の網膜の血管が詰まってしまい出血を起こすことがあるのです。こうして古くて新しい病気である結核は、今でも静かに日本のどこかで広まっているんですね。
2016.04.21
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さて数か月前に新規導入した新型白内障手術装置、センチュリオンですが、日本アルコン社の担当の方と相談しながら、セッティングを煮詰めてきました。 私はすべての手術を「自分の両親の目の手術をするような気持ちで、とにかく丁寧に確実に施行する。」と決意しています。そのためマシンセッティングは時間短縮&効率重視ではなく、若干効率が悪くても合併症を起こさないことを最優先したマイルドなところを目指しました。 ただそうは言っても、早い手術=患者様の負担の少ない手術という側面もあるので、安全性を担保できる範囲内での効率化も同時に追求しました。 そして試行錯誤の末、「まずまずだな。これでイケるな。」というところに到達できたと考えています。 以下は現時点でのセッティングの画面です。ちょっと眼科専門医向けのマニアックな内容になりますが、自分用のメモも兼ねて貼っておきます。 私はCCC(水晶体の前嚢というところを丸く切除する手技。手術で一番重要なところ)の時に安全性最優先のためにヒーロンVという目の中の空間保持力が一番強い粘弾性物質を使って行っています。そのためUS(水晶体の中身を超音波で削る手技)の前に、内圧を下げるためにヒーロンVを一部抜かなくてはなりません。ただセンチュリオンは以前使っていたインフィニティに較べてtipの内径が小さいため、詰まってしまうことが多発しました。そこで細かく何度も設定を変えて、結局吸引の立ち上がりを300mmHgからと高めにし、更にトーショナルという超音波の横振動を10%入れることによって、問題はほぼ解決しました。 USは全例「ディバイト&コンカー」というこれまた安全性最優先のやり方で、核の2分割後の設定がこちら。自分は前房(手術時の目の中の作業スペース)がしっかりと保たれているのが好きで、それでボトル高は高め。そして吸引圧と流量は低め。核の寄ってくるのがマイルドで若干物足りないが、合併症防止のためにはそのくらいでいいと思っている。 最後のI/A(水晶体核を処理した後の、残った皮質を取る手技)はこちら。これもマイルドな設定。それにしても本当にセンチュリオンのI/Aは優れている。安心感が半端無い。まだ旧機種のインフィニティーを使っている先生はこのI/A目的だけで即買い替えて良いレベル。
2021.09.08
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まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
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黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
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「目やにが出る」などの症状に代表されるありふれた病気、結膜炎ですが、治療は抗菌点眼剤で行います。 この抗菌点眼剤には多くの種類があるのですが、現在国内で人気・売上No1なのは日本が世界に誇る点眼薬メーカー、参天製薬のクラビット点眼液0.5%です。このお薬は2000年に発売されたのですが、発売以来ずっとベストセラーを続けています。安全性が高く切れ味のよいバランスの良い薬で、総合力でなかなかこのクラビット点眼液を超えるものが出てこなかったからですね。そうでなければなかなか10年以上もベストセラーは続けられません。 さてそんな名薬のクラビット点眼液なんですが、来たる6月2日に濃度を3倍に上げた通称「スーパークラビット」、クラビット点眼液1.5%が発売になります。 この1.5%クラビット、臨床成績が凄いんですね。 ↑ 発売前の細菌性結膜炎・細菌性角膜炎への有効率はなんと「100%!」、私は今までたくさんの目薬を見てきましたが、有効率が100%というのは見たことがありません。圧倒的な濃度で様々なバイ菌をやっつけてくれる、頼もしい新薬です。 ↑ また、その効き目の早さも驚異的です。 この異次元とも言える臨床成績は1.5%という高濃度から来ています。ただ普通の抗菌剤を目薬にする場合にはここまで濃度を上げられないんですね。その理由は「溶けない」、「しみてとても点眼できない」などですが、大体0.3%とか0.5%とかそんなものです。クラビットというお薬が持つ元々の素姓の良さ、薬を目薬に仕上げる「溶かす」技術では世界一と言われる、発売元の参天製薬の技術力、それらが結集して誕生したのがこのスーパークラビット、クラビット点眼液1.5%なんですね。 ↑ これがその実物の見本です。ただ、中身の入っていない容器だけのもので、実際に点眼してみることは私も出来ていません。 このクラビット1.5%点眼液、発売前から注文殺到で超品薄とのことで、患者様に実際に処方できるのは6月下旬になるのではないか?とも言われています。どのくらいの効果を発揮してくれるのか?、眼科専門医としてとても楽しみにしています。
2011.05.27
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さて普通の学会だと最終日、日曜日のプログラムと言うのはメインの演題は既に終了していて内容がスカスカなことが多いのですが、最近の日眼はプログラム改革に力を入れてくれていて日曜日の午前中にも勉強になるセッションがたくさん用意されていました。我々開業医を意識してくれているのでしょうが、本当に助かります。 日眼はメジャーな学会なので参加者が多く、また会場も巨大なのでまるで迷路のようです。 行きたい会場を探してウロウロしていると、あちこちに眼科専門書の出張本屋さんが出店しているのも楽しみの一つです。 さてこの日の午前中は緑内障のセッションに集中して参加しました。開業医になるとどうしても慢性疾患である緑内障の患者様の数が勤務医時代よりも多くなるので、緑内障に関してはとにかく常にしっかりと勉強し続けることが大切なんですね。 今日は私が勉強になった内容をメモ代わりに箇条書きにしてまとめておきます。眼科専門医向けのやや特殊な内容となっていますので御了承下さい。 大乳頭の過大評価、小乳頭の過小評価には本当に注意をする必要がある。大乳頭は通常よりも目の視神経乳頭が大きいもの、小乳頭は逆に小さいものだが、大乳頭は緑内障に見えやすく、小乳頭は異常が隠れていても分かりにくくて正常に見えやすい。 視野異常=緑内障、ではない。白内障、近視性網脈絡膜萎縮、BRVO(網膜静脈分枝閉塞症)のレーザー治療後、頭部外傷後の視神経萎縮、SSOHなど、多彩な疾患が緑内障に似た視野異常を来たすので、冷静に深く鑑別する必要がある。 緑内障の進行具合を判定するためには視野検査で基準となるベースラインの設定が必要だが、そのためには「2年で6回」の視野測定が必要である。(chauhan BC、Br J Ophthalmol 2008) 達成できていない施設が極めて多いので更なる努力が求められる。 OCTはGON構造障害の一端しか捉えていない。そして視野検査は視路全般の機能障害・可塑性を反映している。そのため、OCTと視野は相補的・補完的検査であることを肝に銘じる必要がある。 非常に勉強になるセッションでした。(続く)
2013.06.08
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さて2月4日(土)、初日に非常に勉強になったのは「強膜炎の薬物療法」、「強膜炎の外科的治療」という2つのプログラムでした。 強膜というのは、眼球そのものを形作っている丈夫で文字通り「強い膜」で、普段は白い色をしています。そして、この膜に炎症が起きている状態を強膜炎といいます。 症状としては、強い充血と痛みです。強膜炎の充血は比較的深いところで発生してるので、黒っぽい赤色に見えるのが特徴です。充血している部分は押すと痛みを感じます。この「痛い」というのが強膜炎の最大の特色であり、しかもその痛みは患者様によっては「鉛筆を目に刺されたよりも痛い」と言うほど激烈です。具体的に実際の患者様の状態を見て頂きましょう。 この強膜炎はリウマチなどの自分で自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患に合併することが多いですが、色々調べても結局原因が分からないことも良くあります。 そして、これだけ医学が進歩した現在でも治療に難渋することが多く、最悪の場合は強膜が溶けて(壊死して)穴が開いてしまうことさえあるのです。そのためこの強膜炎と言うのは、我々眼科専門医にとってはその知識量・経験・状況判断力・決断力を問われる非常に厳しい病気なのです。 今回のプログラムではこの強膜炎について様々な角度から勉強することが出来ました。 ↑ このように強膜炎の原因疾患というのは無数にあり、それがこの病気の治療を難しくしています。 ↑ そして、上のスライドにあるとおり、「とにかく痛い」こと、これが困るんですね。 ↑ そして、目薬だけであっさり治る症例から、内科的・外科的治療を総動員して何とか治った症例、どうしても治せない症例まで、その予後は本当に千差万別です。 ↑ 治療法は一応のフローチャートはありますが、これがまた一筋縄ではいかないのです。 ↑ これは重症例の写真ですが、激烈な炎症で強膜が溶けてしまい、その奥のぶどう膜という茶色い組織が出てきてしまっています。 ↑ こうなると、強膜パッチ術といって、他の方の献眼された目を持ってきて弱いところに貼るという外科的な治療をするというのが教科書に書いてある定説なのですが、 ↑ うかつにこのパッチ術に手を出すと、パッチをしても次から次へと溶けてしまってまた穴が開き、「合計したら数個分の目をパッチに使ってしまった!」というような凄まじい状況におちいることがあるので、「うかつに外科的治療に踏み切らないことが大切である」ことが解説されました。 重症例の治療法の実際を聞くことが出来て、本当に勉強になりました。(続く)
2012.03.23
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学校の視力検査で近視が進行して引っ掛かり眼科を受診されるお子様はたくさんいます。お父さん・お母さん方は「ウチの子の近視が進んでメガネをかけさせるのは絶対イヤ!」と思われる場合も多く、「近視が治る目薬ってないんですか?」という上記の質問を受けることが非常に良くあります。 結論から先に言うと、「近視の治る目薬はあるような、ないような感じです。」という謎掛けのようなお話になります。今日はその「近視の治る目薬」のお話をしてみましょう。 昔の言葉で言う「学校近視」、今の言葉で言うと「仮性近視」、「偽近視」と呼ばれるものがあります。イメージ的には「近視が進行してきているけどまだ固まりきっていない状態」とでも言えるでしょうか。 医学的にはこの「仮性近視」については、 1. そもそもそのような病態が存在するかはっきりと分からない。 2. 仮性近視は存在するかもしれないが、治療可能なものは数少ない。 3. 仮性近視の治療には一定の効果が認められるものがあるのは事実だが、治療を中断すると元の近視に戻ってしまうことが多いので、結局はあまり意味が無い。 あたりがコンセンサスかと思います。まとめると、「平均的には我々眼科専門医は仮性近視の治療は根本的にはあまり意味が無いと考えている。ただし治療中には一定の効果をあげる可能性のある目薬というのは実際に存在し、また近視のお子様を持つご両親の希望が強い場合には処方する場合もある」くらいの感覚なのです。 それでは実際に、その「仮性近視」の治療ではどのような目薬を使うのでしょうか? それには、、、、、 この「ミドリンM」と「ミオピン」という2種類の目薬を使用します。我々の業界ではこれを略して「MM療法」と呼んでいます。 ミドリンMは、目のピントを合わせる筋肉である毛様筋(もうようきん)の緊張を和らげてリラックスさせ、仮性近視を戻らせる作用があります。ただし散瞳(さんどう)といって瞳を開く効果が同時にあり、昼間に使用すると日常生活に支障が出るため通常夜寝る前に1回使用します。 ミオピンは1日に4回使用します。この目薬は目の毛様筋(もうようきん)の反応を良くし、また目の疲労回復作用を持つことから、毛様筋が昼間に緊張状態に戻るのを妨げる作用があると考えられています。そのため、ミオピンはミドリンMのすき間を埋める役割をするので、ミドリンM単独療法よりも併用療法の方がより効果があるとされています。 実際、このMM療法の有効性を報告した文献も古いものですが存在しています。 また、このミドリンMもミオピンも歴史のある薬剤であり、長年の経験から安全性が非常に高いことも証明されています。 ここまで読んで頂くととっても効きそうな感じのするこのMM療法なのですが、実際に患者様に処方してみると「点眼中は少し近視が改善することもあるが、それで近視が実際に治るかと言われるとなかなか厳しい」といったところです。 近視が治る目薬が開発されたら私も眼科専門医として本当に嬉しいのですが、現状ではこのMM療法以外に「近視に効く」と言われている目薬はありません。でも医学の進歩と言うのはとにかく早いので、いつの日かそんな夢の目薬が開発されるかもしれないですね。
2010.10.29
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さて今日も第6回四国EYEランドセミナー参戦記の続きです。 ヘルペス角膜炎という病気があります。目の表面や中にヘルペスが出て来て悪さをするというものです。以下に実際に当院で治療した患者様の写真をお示しします。 このヘルペス角膜炎、ずいぶん以前には良い治療法が無くて多くの方が失明した恐るべき病気なのですが、 エリオン博士と言う方が、アシクロビル(ゾビラックス)という特効薬を発明してほとんどの方が治るようになりました。これは画期的な業績でエリオン博士は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞された程でした。 ところがこのアシクロビルは粒子が粗くて目薬に出来ず、眼軟膏(塗り薬)の形でしか使用できないという欠点があります。 また、薬の粒が粗くて目に入れると角膜(黒目)の表面が荒れやすい、更に薬の効き目が短くて1日に5回も使用しなくてはならない、と言う弱点もあります。 更に、最近ではこのアシクロビルが効かない耐性株が出現していることもあり、ヘルペス角膜炎の治療には相変わらず困難が付きまとっているのが現状です。 今回のセミナーでは、日本の目のヘルペスの第一人者と言われるエキスパートの先生の講演があり大変勉強になりました。 タイゲソン点状表層角膜炎やソフトコンタクトレンズによるキズなどのヘルペスと区別しにくい病気の復習も役立ちましたが、 一番印象に残ったのは、 効かない、治らない、ヘルペス角膜炎は、ほとんどは薬をちゃんと1日5回使えていないだけ。 というお話でした。使いにくい軟膏なので、患者様がキチンと1日5回使用するのは至難の業というのが実際なんですね。今後のヘルペス角膜炎の治療にあたって、肝に銘じようと決意しました。 これで第6回四国EYEランドセミナー参戦記は終了です。来年の第7回も是非参加したいと考えています。
2012.06.26
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「ためしてガッテン」余波で中断していましたが、今日は久々に「瀬戸内眼科コロシアム2012参戦記」をお送りします。 続いてのセッションは「アレルギー性結膜炎」でした。 これは非常にありふれた病気であり、新鮮な話題が少ない分野なのですが、今回はアレルギー性鼻炎(花粉症)の鼻症状に対して耳鼻科で頻用されている点鼻(噴霧)ステロイドが実は眼症状にも有効である、という話題が少し新しかったです。 この点鼻ステロイド、具体的にはアラミスト、ナゾネックスなどの製品がありますが、本当に目のかゆみを取るのにも効果的なんですね。実は私自身もその効果を以前から実感していて患者様にも良く処方しますし、実際に自分でも使っています。(笑) この点鼻ステロイドの効果は、抗ヒスタミン薬の内服とほぼ同等ということでかなり強力です。ただ、何故効くのか?については実は不明な点も多いのですが、今のところ鼻の中のヒスタミンなどの炎症性メディエーターの減少により、鼻-眼反射(naso-ocular reflex)が減ることによるものとの説が有力です。またこの点鼻ステロイドは経口ステロイドと較べて眼圧に影響しないので、直接的な作用は否定的ということでした。 「耳鼻科でフルメトロン点眼などのステロイドを含めてアレルギーの目薬を貰っている患者様は多いが、逆に眼科で点鼻ステロイドを貰っている患者様はほとんどいない。副作用も極めて少ない薬だし、我々眼科医はもっと積極的に処方しても良い。」という、講演した先生の話が非常に印象に残りました。
2012.11.05
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小さなお子様やお身体が不自由な患者さまの目の表面(前眼部)の検査・観察に必要な検査機械に「手持ちスリットランプ」というものがあります。眼科では絶対に必要な機械であり、私も7年前の開業時に当然買っていました。 これはシンプルな機械なのですが、ここにも技術革新の波は及び、光源がLEDとなり耐久性と明るさが飛躍的に増した新製品が出ました。試しに使ってみたところ従来型のものとは較べものにならないくらい目の表面が見やすかったので大喜びで買い換えました。日本のコーワというメーカーのSL-17というモデルになります。 従来型のものよりもグリップ形状が良くなっており非常に持ちやすいです。そして何より目の中が良く見えます。具体的に言うと従来型では全然見えなかった虹彩紋理まで鮮やかに確認できて、私は毎日の診療がより楽しくなりました。 従来型のマシンをお使いの全国の眼科専門医の方、これはガチで買い替えの価値があると思います。騙されたと思って是非一度使ってみてください。(笑)
2015.08.19
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しばらく前にブログのコメント欄で、さおさんに「目薬を点した後、どうして1分ほど目を閉じておかないといけないの? 何の意味があるの?」という質問を戴きました。今日は、その質問について考えてみます。 目薬の点眼後に目を閉じた方が良い理由ですが、目薬が目頭にある涙点(るいてん)から流れ出て行かない様にするためです。涙点から目薬が流れ出ると、 1. 全身に成分が移行するので、目薬の内容によっては副作用を起こす危険性がある。(特に緑内障のお薬) 2. 肝心な目の中(角膜からの浸透)での濃度が薄まってしまい、目薬が期待される十分な効果を発揮出来ない恐れがある。 という、2つの問題点があるのです。 我々の目と言うのは、高速カメラで撮影して調べてみると、まばたきをするときには 「目尻側から目頭側へチャックを閉めるように閉じて行く」 ことによって、目の中の水分を涙点へと押し流していくようになっています。 ↑ これは、チモプトールという長年ベストセラーを続けている緑内障の名薬で、点眼後に、未処置(普通に瞬きをする)、閉瞼(へいけん:静かに目を閉じる)、涙のう部圧迫(目を閉じ、更に目頭の涙穴の部分を圧迫する)の3つに分けて、点眼成分がどれだけ血漿(けっしょう:要は血の中)に移行したかを見たグラフです。 このグラフからは大切なことがいくつか読み取れます。それは、 1. 点眼後にまばたきをすると、成分がかなり血の中(要するに全身)へ移行してしまう。これでは全身性の副作用が心配だし、目薬の濃度も下がってしまうので効果も下がってしまう。 2. 点眼後には、目を閉じるだけで(閉瞼)、目頭を押さえる(涙のう部圧迫)まではしなくても全身への移行はかなり防げている。患者様が目薬を貰うと、良く調剤薬局で「点眼後は5分ほど目を閉じ、更に涙穴を押さえてください」という指導をされると思うが、実際問題としては「忙しい日常生活の中で、目薬のためだけにそんな時間と手間なんかかけられるか!」というのが患者様の実感だろうし、 「点眼後は最低1分目を閉じておく」 くらいでもかなり大きな効果があると考えられる。 ということです。 以上をまとめると、目薬の点眼後は、 少しでも目を閉じてじっとする。そしてまばたきをしない。 ことが大切ということです。皆様も是非覚えておいて下さいね。
2011.08.19
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義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
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「緑内障の目薬で毛が生えるって本当なの?」という質問を患者様から戴きました。今日はこの疑問について少し考えて見ましょう。 現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 眼圧(目の血圧)を下げる効果が高く全身への副作用がほとんどないからですが、局所への副作用はかなりあります。充血・目の周りの色素沈着(黒くなる)などですが、その一つに多毛があります。目の周りに目薬がこぼれると、皮膚が黒くなりますし、明らかに毛が生えているのが分かりますね。 この多毛という副作用を避けるため、私は入浴前の点眼をお勧めしています。(この系統のお薬は全て1日1回点眼です)点眼後にお風呂でしっかりと顔を洗えばかなり予防できますからね。 ここからは余談になりますが、ちょうど友人がストレスで円形脱毛症になったのでちょっと上記の点眼薬を脱毛部に使ってみました。 かなり禿げていますが、お薬を使って2ヶ月後には、 かなり生えています!。その後も増毛は続き、現在では脱毛部は消失しています。かなり効果がありそうですね。 このようにお薬の作用というの本当に不思議なものですね。
2009.04.29
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瀬戸内眼科コロシアム、続いてのセッションは、「サージカルレチナ・涙道領域」でした。 この中では、先天鼻涙管閉塞症(せんてんびるいかんへいそくしょう)という、赤ちゃんの鼻涙管が下鼻道に開口する部分で閉鎖しているため、涙やめやにが止まらない病気の治療についての話が印象に残りました。 ほんのしばらく前までは、抗菌薬の点眼と涙嚢部のマッサージで生後3~4ヶ月までは経過観察をし、この方法で治らなければ生後4~5ヶ月をめどにブジーという細い針金のような器具で開通させるというのが一般的で、当院でもしばしば施行していたのですが、最近になって、「治療は観察のみでよい。目やにのあるときのみ抗菌薬点眼を短期間使用しても良いが2週間以上は使用しない。涙嚢部のマッサージは炎症のある時は破裂の恐れがあるので注意しなくてはならない。ブジーは汚染手術で敗血症などのリスクも0ではないし、自然開通が極めて多いので急性涙嚢炎などの場合を除き、7~12ヶ月は経過観察するべき」という意見を述べる専門家の方が多くなっているのです。 そのため、先天鼻涙管閉塞症は以前よりも積極的な治療に踏み切るかどうかの判断時期が遅れる傾向が強まっています。 今回のセッションでもまさに上記の意見を仰る専門家の方がいたのですが、この方法には1つ問題点があり、もしも12ヶ月待っても治らなかった場合に、赤ちゃんがかなり大きく力が強くなっているので、沈静や全身麻酔をかけないとブジー治療がかなり困難であるということがあるのです。 今回のセッションでも結局ベストの治療法の姿が提示されず、私の心の中にはかなりのモヤモヤ感が残りました。「全ての病気の治療法がすっきりクリアカットになるわけではないこと」、これもまた医学の真実の一つなんですね。
2012.10.13
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コンタクトレンズにはソフトタイプとハードタイプがあるのですが、現在ではソフトタイプが主流となっています。ただ、今から20年程前にはソフトタイプは角膜(黒目)への酸素透過性が十分ではなかったこともあって、ハードコンタクトレンズを処方されることが多くありました。 そのため、その頃からずっとハードコンタクトレンズを使用されている患者様が一定数今でもいらっしゃるのですが、実はこのハードコンタクトレンズ、長期間装用をし続けると目に色々なトラブルを起こすのです。 この写真の患者様は現在30歳代後半なのですが、10歳代半ばから25年近くハードコンタクトレンズを使用し続けたことにより、まぶたを上げる筋肉(挙筋腱膜)が機械的な損傷を受けて、まぶたが上がらなくなる眼瞼下垂という状態になってしまいました。写真だけでは分かりにくいので下に図解してみますね。 また、ハードコンタクトレンズは常に目の中で動き回り特に左右に動くのでそれが慢性的な刺激となり、黒目の横に盛り上がりを伴う瞼裂班(けんれつはん)という病気を発生することも多くあります。 こういったことがあるため、よほど近視や乱視が強くてハードコンタクトレンズでないと視力が出ない方を除き、最近ではハードコンタクトレンズを処方することは極めて稀になってきています。 長年ハードコンタクトレンズを使用している方で上記のような症状が出てきている方は、可能ならばソフトコンタクトレンズ・眼鏡への変更をした方が安全なので、近くの眼科専門医で是非相談されてみてください。
2009.08.07
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
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シリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬の紹介が終了しました。 続いては、第2章 ベータ(β)遮断薬 です。 この系統のお薬は、効き方としては主に房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)産生抑制作用となります。 ベータ遮断薬は前回までに紹介したプロスタグランジン関連薬とは効き方が全く違うので、両者を併用するとより大きな眼圧下降効果が期待できますし、実際の臨床でも多用されています。 さてベータ遮断薬は、現在緑内障治療の第二選択薬(セカンドライン)として使用されています。第一選択薬(ファーストライン)のプロスタグランジン関連薬だけでは効果不十分だったり、もしくはその副作用で使えない場合などに検討される薬剤ということですね。 このベータ遮断薬は、キサラタンに代表されるプロスタグランジン関連薬が登場するまでは長い間第一選択薬の地位に君臨していました。その理由は何と言っても「眼圧がまずまず良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なんですね。 ベータ遮断薬には、PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)のような眼局所の副作用はありませんが、その一方で、気管支ぜんそくや重い心臓病がある患者様には使用することが出来ません。 高齢の緑内障患者様の中には「自分で自分の病気を把握しきれていない」ケースもあり、それがこのベータ遮断薬処方の難しさに繋がっています。ただ逆に言うと、全身状態が良好で問題なく使える患者様にとっては「安全に使える、歴史のある良いお薬」でもあります。 それでは次回からは、このベータ遮断薬を詳しく見ていきましょう。(続く)
2019.07.11
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緑内障患者様の基本的な検査として、「見える範囲を調べる」視野検査というものがあるのですが、当院ではその検査装置の3代目として最新鋭のマシンとなる日本のコーワ社のAP-7700を導入しました。 前回は、 2015年に当時の最新マシンである同じコーワ社のAP-7000を入れていた のですが、ちょっとあまりにも休みなく酷使し過ぎたせいかボロボロになってしまって不具合があったのと、AP-7700をデモで使わせて貰ったら滅茶苦茶パワーアップしていてびっくりするくらいに最高だったので、思い切って買い換える形となりました。 このAP-7700は実際には数年前に発売されていたのですが、今回 「スマートストラテジー」という画期的かつ革新的なプログラムの新規追加 があり、それが購入の決め手となりました。 簡単に言うと、 検査時間の短縮と検査精度の飛躍的な向上が、ダブルで達成 されています。 正直に言って「今までのAP-7000とは何だったのか?」という根源的な疑問を感じるほどの良い出来です。もちろん私はコーワ社の回し者などではありません。1ユーザーとして使ってみての、率直かつ正直な感想です。(笑) 当院では、これからも必要な設備投資を決して欠かすことなく、常に「新しくて、かつ安全で快適」な眼科医療を提供し続けて行くことを皆様に誓います。
2021.01.29
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我々人間は外界からの情報の80%を目から手に入れていると言われており、だからこそ目はとても大切なわけですが、その目の真ん中に開いているのが瞳孔です。この瞳孔なんですが、動物によって形が違うことは割りと知られていません。 (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より) 我々人間が真ん丸なのは皆様ご存知でしょうが、ヒキガエルはなんとハート型なんですね。 ネットを巡回していると、なんと 「ハート型の瞳孔を持つ猫」 もいました!。 ただ残念ながらこの猫は「エイプリルフール用の合成写真」だったようなのですが(私は本物かと思ってかなり驚いていたのですが)、 実は 人間でも「ハート型の瞳孔」を持つ方が存在する のです。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので私は外来診療が大好き なんですね。
2009.08.04
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さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09
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シリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 今日も緑内障治療の第一選択剤である、プロスタグランジン関連薬の世界を見ていきましょう。 6回目となる今回はエイベリス点眼液(一般名 オミデネパグイソプロピル)です。一般名がえらく難解ですね。そういえば、しばらく前に学会に行った時に、緑内障の世界では有名な某大学教授が、名前を言い間違えて舌を噛んでいました。 このエイベリス点眼液は以前にも当ブログで紹介したことがあるのですが、プロスタグランジン受容体のサブタイプのひとつであるEP2受容体作動薬です。今日は復習として改めて詳しく見ていきましょう。 これは今までに全くなかったブランニューの効き方をする画期的な新しいお薬となります。具体的には、目の中を流れている「房水(ぼうすい)」を2種類の経路を使ってその流出を促進することで眼圧を下げてくれます。 一番気になるのはその効き目ですが、 現在緑内障治療でファーストラインとして使用されている名薬 キサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト) に比べて「非劣性」 であるというデータが出ています。つまり、 滅茶苦茶良く効く ということですね。 またキサラタンに代表される プロスタグランジン製剤(他にはトラバタンズ、タプロス、ルミガンなどのお薬があります。) には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があるのですが、エイベリスはこのPAPが少ないと言われています。 ただその一方で、 結膜(白目)の充血や黄斑浮腫(目の奥の網膜の視力に関係する大切な部分の腫れ)などの副作用がやや多い という欠点があります。そのため、 白内障術後で目の中に眼内レンズが入っている患者様や、タプロス(一般名:タフルプロスト)という点眼液を使っている方への使用は禁忌 となっています。 さて眼科専門医として正直に言うと、このエイベリス点眼液はやや副作用が多そうで、「ちょっと気難しそうな薬」という印象はあります。ただその一方で現在緑内障治療のファーストライン(第一選択薬)である前述の プロスタグランジン製剤のPAPという副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃるので、そういった方々へのオプション的な選択肢としての魅力は凄くある と思います。 後、これはあくまでも個人的な意見なのですが、このエイベリスは副作用として角膜肥厚(点眼によって黒目が分厚くなる)が報告されているのですが、これは逆に色々な感染症や炎症性疾患で角膜が薄くなってしまった患者様に治療薬として使える可能性があるんじゃないかな?と以前から思っています。薬の作用というのは不思議なところがありますからね。 いずれにせよ、「日本発&世界初」のこの新しい機序を持ったエイベリスの今後の活躍が楽しみです。
2019.07.05
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さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬 第二選択薬(セカンドライン)として使用されているβ(ベータ)遮断薬 β遮断薬と同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなるα(アルファ)2作動薬のアイファガン点眼薬 の紹介が終わりました。 そして今回は同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなる炭酸脱水酵素阻害薬です。 効き方としては、目の中を流れている房水(ぼうすい)産生抑制の作用となります。 さてこの炭酸脱水酵素阻害薬には、プロスタグランジン関連薬の様な目の周りが黒くなったり、毛が生えたり、窪んだりという局所の副作用(PAPs)がなく、またベータ遮断薬の様な喘息や重い心臓病の方には処方できないという全身的な副作用もありません。 その意味で、この系統のお薬はある意味で「処方しやすい薬」という面があります。ただ、欠点が全くないのかというとそうでもなく、1. 効き目がやや弱い。2. 目薬にするのが難しく、点眼すると凄くしみたり、もしくは点眼液が白い濁り液だったりして、やや使いにくい。 という問題点もあります。そのためこの系統のお薬は単剤で処方されるよりも、コソプト点眼液、アゾルガ点眼液、アイラミド点眼液と言った形で他の薬剤との合剤という形で使われることが最近は多くなっています。 ただそうは言っても、この炭酸脱水酵素阻害薬が緑内障治療において重要な地位を占めていることに間違いはありません。それでは次回からはこの系統に属する2つの点眼薬を徹底解説することと致しましょう。(続く)
2020.07.15
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「眼が真っ赤になって市販の目薬さしても治らないし、なんだか眼がズキズキして痛いので来たんだけど。」という訴えで本日女性の患者様が来院されました。早速眼を拝見すると、 確かに眼が強く充血していますね。ただその充血の先を追っていくと、、、、 充血の仕方が普通の結膜炎とは違います。なんというか、「赤黒い」感じがあるんですね。実はこの方は、、、、、 強膜炎という病気でした。 これは 充血と強い眼の痛み が特徴で、悪化すると目の一部が壊死してしまうこともある怖い病気 です。治療には強力なステロイド薬の目薬や飲み薬を使います。 このように「タダの充血だろう」と思っていても、実は結構重い病気のこともありますので、「なんだか結膜炎が治らないなあ」というときは、是非お近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2009.09.07
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さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
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暑い毎日が続きますね。 さてクリニックの方では以前からお知らせしていますが、 8月9日(金)の午後から8月15日(木)まではお盆休みとさせて頂きます。尚、8月16日(木)からは通常通りの診療・手術を行います。 ちなみにお盆休みについては開院以来色々なパターンを試しました。最初の頃にはあまりお休みを頂かずに頑張って開けていたこともあったのですが、なんとその時に、「開院来で最小の外来患者様数」を記録しました。(笑) そしてこの時の経験から、「なるほど、お盆と言うのはやっぱり休みべき時期なんだ。そもそも患者様からの需要もあんまりないんだ。」と深く体感&納得致しました。 その後患者様にも色々とお伺いしていると、「お盆は子供や孫が都会から帰って来るから、病院なんかに行ってる場合じゃない。準備することがたくさんあるし、何だったら1年で1番忙しい。」との意見が大多数でした。 そういうこともあり、この数年は当クリニックも「長めのお盆休み」を取らせて頂くようにしています。ちなみに、街に「お盆休みに医療の需要が乏しい」ことの当然の反動として、お盆前の外来は例年大変な混雑となります。スタッフ一同全力で頑張りますが、少しお時間の余裕を持って受診して頂けると幸いです。
2019.08.04
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開院2年目ということで、待合室のマガジンラックを新しいものに入れ替えました。 以前のものよりも一回り大きくなり、雑誌も取り出しやすくなりました。雑誌の内容についてはどのジャンルがよく読んで貰えるのかを分析して常に入れ替えています。 「こんな雑誌を置いて欲しい」などの要望が御座いましたら気軽に受付スタッフに提案して戴けたら幸いです。
2009.05.14
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現在緑内障の治療では「プロスタグランジン関連薬」という系統のお薬を第一選択薬として使います。眼圧(眼の血圧)を下げる効果が一番強いからですが下に示すのがその代表的な薬(プロスト系)です。 上の写真の中で、左端の 「キサラタン点眼液」 が発売されたのが1999年、この薬の登場が緑内障治療を劇的に変えたといわれる、当時まさに画期的な新薬でした。ちなみに私が眼科医になったのも1999年のことで、それで我々は「キサラタン世代」と呼ばれています。 キサラタンはあまりに画期的なお薬だったためにその後何年もライバルが現れませんでした。数年前からようやく「トラバタンズ点眼液」、「タプロス点眼液」という同系統の薬が発売されたのですが、その薬の効果はキサラタンとほぼ同等で、「もっと眼圧の下がる」キレの良い薬の発売が望まれていました。 10月第一週に 「ルミガン点眼液」 という新薬が発売になるのですが、 この薬は前述の「キサラタン」に対して有意差を付けて眼圧が下がるというデータが出ています。 簡単にいえば 「過去最高の効き目の薬」 ということです。その理由を下の図に示していますが、分かりやすく言えば 「患部に直接ガツンと効く」 ということになります。 ただ、良いお薬には当然副作用もあります。このルミガンは今までの薬よりも 強烈に目が充血する と言われています。早速当院のスタッフにお願いして実験してみました。 右目だけにさしたのですが、 明らかに左目 より強く充血していますね。ただ、肝心の眼圧の方は、 13.7→8.7と確かに良く下がっています。これは期待できそうですね。! この期待の新薬、ルミガン点眼液、発売と同時に当院でも採用します。少しでも緑内障患者様の不安が減ってくれたらと思いますし、私も発売を心待ちにしています。
2009.08.21
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さて来たる6月11日に、全国の患者様からその登場が熱望されていた緑内障新薬のコソプト配合点眼液がいよいよ日本でも発売となります。 このコソプト配合点眼液は、房水の産生を抑制する「β遮断剤」のチモロールと「炭酸脱水酵素阻害剤」のドルゾラミドの2種類のお薬が1瓶に入ったものです。 薬の承認に関しては世界一厳しいと言われるアメリカFDAで唯一承認されている配合点眼液であり、その売上高は緑内障薬の中ではPG製剤のラタノプロストに次いで世界2位のベストセラー薬です。その効果はまさに「折り紙付き」、この名薬をついに日本でも使用できることを、私は緑内障治療医として本当に嬉しく思っています。 サンプルを戴いたので、早速当院のスタッフがチャレンジしてくれました。まずはきみちゃんから。 眼圧は16.0から11.7へと下降しています。 次はゴンちゃんです。 眼圧は15.0から11.3に下がっています。2人とも良く効いていますね。 このコソプト発売日には、同時に以前紹介した「デュオトラバ配合点眼液」も発売となります。新薬の登場スピードに負けないように私自身も勉強を重ね、ひとりひとりの緑内障患者様それぞれの状態にぴったりと合った、オーダーメード感覚のベストの緑内障治療を提供できるように努力していきたいと思っています。
2010.06.05
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しばらく前にテレビのバラエティ番組を見ていると、「人間の視力の限界はどのくらいなのか?」を、視力が良いので有名なアフリカのマサイ族の元に出かけて調べるという企画をやっていました。 前提として眼科専門医として基本的な事項を説明すると、人間が持っているレンズ(水晶体)の光学的限界からは視力4.0程度が、また光を感じる網膜の視細胞の密度からもその程度が限界であろうとされています。 では、果たしてその実際はどうだったのでしょうか? 以下に番組の内容を引用しながら見て行きましょう。 なんと視力5.0はあっさりとクリア。アフリカの人たちは遠くの獲物を見つけなくてはならないので、人間が持っている能力の限界まで使い切っているのでしょうね。 次はなんと視力20.0!に挑戦です。 まさかの視力20.0もクリアでした。また、以前の別のテレビ番組でも、視力8.0 の方が紹介されていました。ただ、日本人で視力検査をすると3.0以上の方はほとんどいないと言われています。育った環境によっては人間は驚異的な能力を発揮できる、ということでしょうね。
2012.09.11
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2種類以上の目薬を処方させて頂いている患者様から、「どうして点眼間隔を5分あけないといけないの? そんなのめんどくさいから、連ちゃんでちゃっちゃかちゃっちゃか点してるけどなにか悪いことでもあるの?」という質問を良く戴きます。 この質問の前提として、まず私は眼科専門医として「できるだけ処方する目薬の種類を減らす」ことを心がけています。出来れば絶対に必要な1種類だけ、ダメなら2種類、それで無理なら1増1減でやっぱり2種類、それでもどうしても無理ならやむを得ず3種類、そのあたりが限界だと思っています。患者様は目薬を点眼するためだけに日々を生活しているわけではないですし、点眼の種類が増えるとどうしても確実にさせなくなるからです。 さて最初の質問の話に戻りますが、点眼間隔を5分空けなくてはならない理由は、「先にさした目薬が後からさした目薬で洗い流されてしまって効かなくなるから」です。 上の図を見ると分かるように、もしも1分間隔で目薬を点すと最初に点した方は60%くらいしか効かない、というデータがあります。 専門的に言うと、目薬の目の表面(結膜嚢:けつまくのう)からの消失時間は一般的に2分と言われています。なので点眼間隔は最低2分空ければまあ大丈夫なのですが、目薬同士の相互作用を防ぐために、念のために「5分」というお願いを我々眼科専門医はしているわけです。(一部の緑内障薬では10分以上の点眼間隔が必要なものもあります。) なので、2種類以上の目薬を同時に使用するときは「最低2分、できれば5分」と覚えて置いてくださいね。
2011.05.15
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しばらく前のことですが、「子供のめやにと充血がひどい。」との訴えで、女の赤ちゃんを連れた若いお母さんが受診されました。 目を診せて頂くと、確かにひどく充血し目やにもびっしりと付いています。ところが目を良く観察していると、まつげがチリチリでほとんどありません。 「あれ? お母さん、まつげ、どうかされましたか?」 と質問すると、 「はい、まつげを短く切っておくと、毛根の生命力が刺激されて大きくなった頃にまつげがフサフサの美人になると聞いたので、全部私が切りました。」 とのことでした。 まつげは、目の中にゴミなどの異物が入らないようにするために生えており、とても大切なものです。この赤ちゃんはまつげを切られてしまったので、それで目が剥き出しになり炎症を起こしてしまったのです。 赤ちゃんの時にまつげを切ると将来フサフサになる、かどうかは検証した論文もなく真実は分かりませんが、目の健康のためには間違いなく良くないことですし、またどうしても将来まつげフサフサになりたければ、 ↑ このような「プロスタグランジン関連薬」という系統の緑内障用の目薬をまつげの付け根に塗れば、驚くほどあっという間にフサフサに出来ます。それはこれらの薬に「増毛」の作用があるからです。(ただし、美容薬として保険診療機関で処方することは出来ません。一般に美容外科や美容皮膚科での自費での購入となります。) まつげは大切な役割があるからこそ生えているのです。ですので、皆様も安易にまつげを抜いたり切ったりしないようにして下さいね。
2013.07.06
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2012年5月、今から6年前にひっそりと静かに日本国内発売となった緑内障・高眼圧症治療薬のアイファガン点眼液。 このアイファガンは、元々アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けている名薬でした。 少し復習をしておくと、この目薬(一般名 ブリモニジン)は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。先行して発売されたアメリカではずっと緑内障点眼薬売上ランキングの上位を維持し続けてきたベストセラーであり、我々日本の眼科専門医にとっても長年「喉から手が出るほど」使いたい、欲しいお薬でした。 ただ残念ながらその認可は遅々として進まず、なんと「アメリカから16年遅れ!」でようやく発売となったという、その「ドラッグラグ(海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のこと)」の大きさでも話題となりました。 そしてこの2012年にようやく発売となったアイファガンなのですが、 なんと発売から6年が経過した今年2018年になって、多くの屈強な薬剤がひしめき合い、しのぎを削っている緑内障点眼薬の中で、なんと売上1位となった のです。 これはとてつもなく凄いことです。それがどうしてなのかを説明しましょう。1. 現在の緑内障治療においてはいわゆる「標準治療」≒ガイドラインが存在している。そしてその中では、第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズなど)を使うことが推奨されており、 アイファガンは「最初に処方されるお薬」ではない。 2. また同時に保険診療上の縛りもあり、アイファガンは「ファーストライン(疾患に対して効果があるとされる複数の治療薬のうち、最初に投与すべきと考えられる治療薬)」として使うことは出来ない。あくまで「セカンドライン」以降の薬と言う位置づけとなっている。つまり、「大きくは売れないことを元々宿命づけられた薬」である。3. 更に悪いことに、発売元の千寿製薬は失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円。これは製薬メーカーとしてはかなり少ない。)であり、薬の宣伝をする営業マン(MRさん)の数も広告のための予算も非常に少ない。なので「鼻薬を嗅がされた、緑内障学会のとてもエライ先生」が一般眼科医に薬を使うように「啓蒙」し、「応援」してくれることもほぼない。 つまり、 アイファガンが売れたのは、広告や宣伝の力ではなく、薬に本当の実力、「突出したガチンコ力」があったから なのです。でも同時に、千寿製薬には十分なプロモーションのためのお金がありませんでした。なので、アイファガンの良さは静かに口コミレベルで医療現場にじわじわと浸透するしかなかった。その為、2012年の発売からランキング1位となるまでに6年もかかったのです。 そして、資金力のある大手メーカーによる「パワープレイ」が支配的な製薬業界において、発売後6年が経過し更に弱小メーカーからの販売となったお薬が売上ナンバーワンとなるなどということは、医学界の常識では通常ではあり得ない、凄いことなのです。 それでは次回は、なぜアイファガンは数々の不利を乗り越えて売上ナンバーワンとなることが出来たのか? アイファガンのどこがそんなに優れているのか? その、 アイファガンの秘密 に迫っていきましょう。(続く)
2018.05.22
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さてそれでは今回からは、広い広い緑内障点眼薬の世界を個別に見ていきましょう。 初回となる今回は、何といってもプロスタグランジン関連薬です。 効き方としては、主にぶどう膜強膜流出路からの房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)流出促進作用となります。 さてこのプロスタグランジン関連薬は、現在緑内障治療の第一選択薬(ファーストライン)として使用されています。緑内障と診断された方は、まずはざっくりとこのエリアから目薬を処方されるということです。 その理由は何と言っても「眼圧が良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なので、眼圧が下がらない=効かないのではてんでお話にならないのです。またこの系統のお薬には「全身的な副作用がなく、安全で使用しやすい。」という長所もあります。 その一方で、これらのプロスタグランジン関連薬には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があります。 これを防ぐためには、目薬を点眼後に濡らしたティッシュでふき取るか、目を閉じて洗眼するのが有効なのですが、どんなに気を付けていてもPAPが出現してしまう患者様も残念ながら多いです。 この副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃいますし、特に女性の方は嫌います。 大切な「目力」に影響してしまうので当然 ですね。なので、このPAPが強く出た場合や患者様の拒否反応が強い場合には違う系統の目薬を検討することになります。ただ逆に言うと、このPAPが気にならない場合には、 プロスタグランジン関連薬は、無敵に、夢の様に良いお薬 ということも出来ます。とにかく良く効きますからね。 それでは次回からは、このプロスタグランジン関連薬の世界を個別に見ていきましょう。(続く)
2019.03.12
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さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 今日も緑内障治療の第一選択剤(ファーストライン)である、プロスタグランジン関連薬を見ていきましょう。 4回目となる今回はルミガン点眼液(一般名 ビマトプロスト)です。 このルミガン点眼液は、プロスタグランジン関連薬の中で 最強の眼圧下降効果 を持っています。 滅茶苦茶効く ということですね。ただその一方で、 PAPという副作用の出現頻度も断トツ で高くなります。 眼科専門医としての感想を率直に言うと、「非常に気難しい薬」という印象です。眼圧コントロール不良の緑内障患者様には以前はリスク覚悟で処方することも良くあったのですが、最近は違う系統のキレの良い新薬が増えているので、自分は処方することは凄く減っています。「ルミガン行くくらいなら、違う系統の目薬を追加しよう。」と考えることが多いんですね。 それでも今でもどうしてもルミガンが必要と言う患者様は厳然としていらっしゃいますし、なんといっても眼圧はガツンと良く下がるので、必要な薬であることに変わりはないです。まあ、 緑内障点眼治療「最後の砦」 といった位置づけの目薬ですね。(続く)
2019.05.27
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「ヘルペス角膜炎」という病気があります。目の表面や中にヘルペスが出て来て悪さをするというものです。以下に実際に当院で治療した患者様の写真をお示しします。 このヘルペス角膜炎、ずいぶん以前には良い治療法が無くて多くの方が失明した恐るべき病気なのですが、エリオン博士と言う方が、アシクロビル(ゾビラックス)という特効薬を発明してほとんどの方が綺麗に治るようになりました。これは画期的な業績で、エリオン博士は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞された程でした。 ところがこのアシクロビルは粒子が粗くて目薬に出来ず、眼軟膏(塗り薬)の形でしか使用できないという欠点があります。また、薬の粒が大きくて目に入れると角膜(黒目)の表面が荒れやすい、更にヘルペスのウイルスは特に活動期は分裂が早くて凶暴なので、それに対抗するために1日に5回も使用しなくてはならない、と言う弱点もあります。 ちなみに、 眼軟膏を処方してもなかなか症状が改善しない、効かない患者様と言うのが良くいらっしゃるのですが、経験上そういう方はほぼ100% 単にお薬がちゃんと目に入っていない だけです。なので、当院ではヘルペス角膜炎の患者様が来院されたときには「軟膏がちゃんと入れられるようになるまで、何度も熱血指導」をしています。これでほとんどの場合は治ります。 、、、前置きが長くなりました。このヘルペス角膜炎、元々それほど多い病気ではないのですが、最近患者様の数が激増しています。そして、新型コロナワクチンの接種後に発症するケースが特に目立ちます。 なので、コロナワクチンを打った後に、目がぼやける、霞む、ゴロゴロする、涙が止まらない、などの症状がある場合は、是非早めに一度近くの眼科専門医を受診してくださいね。
2022.04.21
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