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さて先日のことですが、当院ではエレックス社のYAG/SLTレーザー機械、タンゴネオを新規導入しました。 これは白内障の術後に一定の確率で発生して視力低下を引き起こす後発白内障(こうはつはくないしょう)に対して後嚢(こうのう:水晶体の袋の後ろ側の部分)切開術を施行するためのYAG(やぐ)レーザーと、緑内障の眼圧を下げる効果のあるSLT(えすえるてぃー)レーザーの2つがニコイチで1つに収まったスタイリッシュなマシンです。 自分は以前からエレックス社の製品が大好きなのですが、その理由は筐体がコンパクトで同時にデザインがとても美しいからです。大切な患者様を常に最高の笑顔でお迎えしたいですし、そのためにもまずはスタッフの我々自身が快適でリラックスした環境下で仕事を継続出来ることが大切だと考えています。 さてそれではマシンの実際を見ていきましょう。 旧型機種に比べて、操作画面が大型化されてより快適になりました。また顕微鏡の性能が上がって非常に見やすくなりました。 機能面で言うと、旧機種ではピントを後ろ側にしかずらせなかったのが、 新機種ではピントを前側にもずらせるようになりました。これは大きな進化です。 具体的なメリットを言うと、白内障術後に前嚢収縮(ぜんのうしゅうしゅく:水晶体前面の袋が収縮してくること)と言うものが発生して視力低下や視界が狭くなったりと言う合併症が起こることが稀にあるのですが、そういう時にピントを前にずらせると、より安全に前嚢切開と言うレーザー治療が出来るのです。 またレーザー自体のパワーも上がっていて、それもとても快適に感じました。「切れ味良いねー。」と思いました。当院ではメインテナンスをしながら旧機種は開院以来16年間使い続けていただけに、より新機種の素晴らしさが滲みたのかもしれません。(笑) ディーラーの吉田メディカル様、製造発売元のエレックス社様、本当に有難う御座いました。
2024.11.10
いやあもうすぐ9月も終わるというのに相変わらず暑いですね。日本からは四季がなくなり東南アジア型の夏と冬だけの二季になっていくのかな?という感じがしています。 さてこの夏から秋に移り変わるこの時期なんですが、「このところ急に目がムズムズ&ネチネチしてかゆくなった」という患者様が意外にも多いんですね。皆様「今、目がかゆくなるはずはないし、おかしいなー。」と言う感じで受診されます。 全然おかしくありません。実は今は、キク科・ブタクサ属の1年草であるブタクサによる花粉症のピークの時期なのです。そこら中に生えています。スギ・イネ・そしてこのブタクサが「世界3大花粉症」の原因で、日本でも花粉症の原因の第3位なのです。 (上記データは花粉図鑑より引用) また今の時期は花粉症原因2位のイネ科の雑草(イネ・オオアワガエアリ・メヒシバなど)による花粉症もまだ残っています。更にそれに加えて秋特有のカナムグラ(アサ科)、セイタカアワダチソウ(キク科)、ヨモギ(キク科)による花粉症もあります。(上記データは花粉図鑑より引用) つまり、 秋と言うのは、実は「1年で一番花粉症の原因物質が多い地獄の時期」 なんですね。下記の表を見て頂けると一目瞭然と思います。 (上記データは花粉図鑑より引用) 目薬・内服薬で速やかに改善しますので、症状のある方は我慢せず早めにお近くの眼科専門医を是非受診されてください。我々は皆様の不快な眼症状を取り除くためのプロですからね。
2024.09.29
さて先日紹介した、エンジェニュイティー(NGENUITY® )3D ビジュアルシステムですが、高いポテンシャルがありそうだったので、製造販売元の日本アルコン社様とディーラーの吉田メディカル様のご厚意で松山市のアルコントレーニングセンターにウェットラボに出かけてきました。 これは具体的に言うと、人間の顔の模型に豚さんの目をセットして実際に白内障手術をやって見るというものです。何故豚さんかと言うと、流通量が豊富で目が手に入りやすいのと構造が人間と似ていて手術トレーニングに最適だからです。 ちなみに20年以上前私が研修医だった頃には、今回もお世話になった同じ日本アルコン社のトレーニングセンターにお邪魔して連続で10眼以上豚眼で手術の練習をさせて頂いたこともあります。本当に昔からお世話になっているんですね。ちなみに手術機械も道具も患者様に使っているものと全く同じです。 手術準備中の写真。↓ 実際の手術の様子。↓ 豚さんの目を模型にセットしたところ。↓ 手術が終わって、無事に目の中に眼内レンズが入っているところ。↓ さて結論を言うと、このエンジェニュイティー(NGENUITY® )3D ビジュアルシステム、凄くいいと思いました。良く見えるし立体感があって目の中の深さがはっきりと分かるし、「手術眼科医としての寿命を延ばしてくれる魔法のシステム」だなと感じました。 自分は今の従来型の顕微鏡を使っての手術で特に問題を感じていないので現時点では導入はしませんが、後10年とか、もう少し年を取ったら検討しようと思いました。
2024.09.04
さて先日のことですが、ディーラーの吉田メディカル様と製造販売元の日本アルコン社様のご厚意で、新しい手術システムである、エンジェニュイティー3Dビジョンシステムのデモをさせて頂きました。 これは簡単に言うと、顕微鏡を覗いて手術をする代わりに、3Dメガネをかけて大きなモニターを見ながら手術が出来るという画期的なものです。 この日は模擬眼を置いて実際の見え方や操作感を体験しました。ちょっと慣れが必要ですが、今までの顕微鏡を使っての手術より術野も広いですし見え方もクリアですし、習熟すればより安全で精度の高い手術に繋がりそうだな、と感じました。
2024.08.29
さて当院では常に清潔かつ快適な環境下で眼科医療を提供するために、毎年専門の業者の方にお願いして院内のエアコンのクリーニングをしています。 段取りとしては夏が始まる頃にプロに見に来てもらって、必要があるものをクリーニングして頂くという形にしています。エアコンって非常に汚れやすいものですし、クリニック運営に当たってとても大切なことであると考えています。 今年も少し前の事ですが、7月上旬にクリーニングを受けました。今日はその時の様子をちょっとだけご覧いただきます。 準備も結構大掛かり。 このように当院では、隅々までしっかりとメンテナンスをしながら、毎日の患者様の診療に当たっています。
2024.08.05
さて当院では日本のトプコン社のOCT(3次元眼底撮影装置)である、 スウェプトソースOCT DRI OCT Triton(トリトン) を2017年に導入していました。 このOCTと言うのは現代の眼科医療においては既に無くてはならない必須機械となっており、当院でも毎日大活躍してくれています。ただ、導入時に付いていたマシンの制御パソコンがウィンドウズ8で、今の視点で言うと処理速度の点で物足りなくなっていたこととメンテナンス性の問題があることから、ウィンドウズ11搭載の最新のパソコンに入れ替えてアップデートして頂きました。 普通に市販しているものではなく、OCTの製造元のトプコン社がHP社に特注でオーダーして作って貰っているmonsterマシンになります。↓ 今回のOCTアップデートにより撮影した画像の処理速度が上がりました。当院では「身近なコンビニ」的な開業医として、「とにかくお待たせせず、スピーディーで快適&高品質な医療サービスを提供する」ことを強く意識しており、これからもその目的達成のためにスタッフ一同全力で努力していきます。
2024.06.30
さて当院では開院時からドイツのカールツァイス社のルメラという手術顕微鏡を導入しています。15年前には我々眼科専門医の間で「最近出たツァイスのルメラ、ヤバいくらいに良く見えるよ。」と話題騒然となったニューマシンで、当時目が飛び出るほどに非常に高額だったものの、頑張って買ったのでした。 それから長い時が流れましたが、このルメラは今でも現行機種として販売が継続されています。「時を超える力のある名機だった」ということですね。 さてそんなルメラですが、最近少しだけ手術時の見え方に違和感があったので、カールツァイスの技術の方に出張して頂いて見て貰いました。 その結果、顕微鏡内部のハーフミラーというものが少しズレていたとのことで直して頂きました。同時にすべての光学系のクリーニングもして貰いました。 当院ではこれからも設備投資と機器のメンテナンスにお金を惜しまず、常に万全の状態を保って大切な患者様の診療に当たって参ります。
2024.06.25
さて眼科と言うのは、ほとんどすべての検査を自前で行わなければならないという特色のある診療科です。ちょっと特殊なんですね。 そのために、院内にはぎっしりと様々な機械が立ち並んでおり、日々しっかりとメインテナンスをしながら皆様の来院をお待ちしています。 また機械が日進月歩で進化していくこともあり、時代の変化に対応し続けるためにマシンを最新型に買い替えるということも頻繁です。 ただ、そんな中で超音波画像診断装置(エコー)だけは大きく進化していないことと、開業時の15年前に買ったものがずっと元気で壊れずにいてくれていたので、そのまま買い替えずに今日に至っておりました。 ただ、流石に15年が経過すると最新機種と較べると画像の精度が劣るということもあり、ついに新機種に買い替えることとなりました。 さよなら、US-4000。長い間元気にトラブルもなく働いてくれてありがとうございました。
2024.06.03
さて最近はスマホやタブレット端末で長時間目を酷使される方が激増しています。そしてその結果として近視の患者様が世界的に急増して大きな問題となっています。また特に受験戦争で幼い頃から眼をハードに使うことの多い東アジア(中国・韓国・日本)では明らかに近視の子供が多いことも知られています。 そしてこの近視の何が怖いかというと、 強度近視(具体的にはマイナス7D以上)になると加齢と共に加速度的に目の病気が増えることが統計的に明らかになっている からです。具体的には加齢黄斑変性や緑内障などです。そしてこれらの病気により世界中で将来の失明者が激増するのではないか?と心配されているのです。 失明は社会や医療経済に及ぼす影響が大きいので、社会全体として近視の進行を抑えることが非常に重要です。 そしてこの近視の進行抑制にはシステマティックレビューや大規模なコホート研究により、「間違いなく有効な方法」が実は既に明らかになっています。知りたいですよね。 それが何かと言うと、、、、、、 1日あたり120分以上の屋外活動をすること なのです。 屋外で太陽の光に当たること(光線曝露)によって近視の発症率が有意に低下することが証明されている んですね。 これはとても簡単で誰でも明日からできるやりかたです。なので、大人も子供もスマホやパソコンばかりせずに毎日2時間は外で活動するといいのです。是非覚えておいてくださいね。
2024.05.17
さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
さて今の世の中、目にアレルギー・かゆみを起こす原因と言うのは何かしら年中あるものです。 スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどの花粉がどの季節でも飛んでいますし、中国からの黄砂や大気汚染物質のPM2.5 も目に症状を引き起こします。 そんなこんなで、最近は「年中かゆみ止めの目薬が欠かせない。」という患者様も増えてきています。ただ目薬を嫌がるお子様や、手が震えてなかなか目薬がちゃんと入らない高齢者の方もたくさんいらっしゃいます。 ここでちょっと余談なのですが、当院では白内障手術前に患者様が目薬を自分で点せるか実演して頂いています。看護師が「目薬、点せますか?」とお聞きすると、ほぼ100%の方が自信満々に「はい、大丈夫です。」とお答えになるのですが、実際にやってもらうとまともに出来ている方は半分もいません。そのくらい目薬を点すというのは難しいことなんですね。(笑) もちろん、点せない方にはその後正しい点眼方法を指導させていただいています。 そんな中、アレジオンLX点眼液と言う現在ナンバーワンのアレルギー点眼剤をクリームにしたものが近日発売されることになりました。なんと1日1回目の周りに塗ればそれが皮膚からジワーっと浸透して目のかゆみを抑えてくれるという、画期的な魔法のようなお薬です。 眼科専門医としての勘から言うと、これは滅茶苦茶売れそうな気がします。実際の製剤のサンプルを戴いたので、次回はその使用経験についてお話ししようと思います。(続く)
2024.05.10
さて当院は開業して15年が経過しているわけですが、それに伴って経年劣化で色々とボロが出てきております。 そういったものは見つけ次第迅速にメンテナンスを入れているのですが、その一環として先日院内のボイラー設備を新品に交換しました。 今後もあらゆる保守・点検を怠らず、日々最高の状態を保って皆様の診察に当たって参ります。
2024.04.24
さて2012年の発売以来ドライアイ治療で大きな役割を果たし続けてきた名薬 ムコスタ点眼液 。 このお薬は元々は胃薬でそれを目薬に仕立てたものなのですが、なかなか溶けない・成分が安定しないという欠点があったようで、開発元の大塚製薬は製剤化に苦しみ抜いていました。そもそもは2010年位に発売予定だった記憶があるのですが、それがどんどんと延期され我々眼科業界の一部では「出る出る詐欺」とまで言われるくらいのお待たせ状況でした。(笑) そうしてようやく2012年に発売となったのですが、普通の点眼瓶(マルチドーズ製剤)で出すことが出来ず、1回きりの使い捨てタイプ(ユニットドーズ製剤)での登場となりました。 このタイプの製剤は毎日使うにはやや不便があるので、当然大塚製薬は製剤をより安定させて普通の点眼瓶タイプでの発売を目指していると2012年からずっと聞いていました。そして我々臨床の第一線に立つ眼科専門医もそれに強く期待していました。 ただ、時が流れても一向に実現せず、複数の情報源によると「チャレンジを続けているが、技術的に極めて困難で難しい。」とのことで、私は「あぁ、これはもう無理なんだろうな。」と半ば諦めていました。。。。 そんな中、今回不意に登場した参天製薬からの後発品(ジェネリック)は、何と平然と普通の点眼瓶タイプとして我々の前にその姿を現しました。! 日本有数の製薬会社である大塚製薬が、「恋焦がれ全力を尽くし10年の歳月をかけても達成できなかった幻の姿」で忽然(こつぜん)と出てきたのです。 中身が白濁液なのは先発品のムコスタ点眼液と一緒ですが、 粒子がより細かくなっているのかな?、点眼後の霧視(むし:霧がかかったようにぼやけて見える症状)がより軽くなっているようにも個人的には思いました。 眼科専門メーカーである参天製薬は元々、「薬を溶かして目薬に仕立て上げる能力」が世界一 と言われています。今回の「レバミピド懸濁性点眼液2%参天」の登場は、その技術力の異次元の高さと巧みさを改めてはっきりと満天下に示す象徴的な事例となりました。 ちなみにここで一言補足しておくと、これは大塚製薬の技術力が低いという事では全くありません。大塚製薬は抗精神病薬「レキサルティ」などでは世界トップクラスの戦闘力を誇る、日本を代表する製薬メーカーだからです。そうではなく、眼科専業で命を賭して日々目薬作りに邁進している参天製薬があまりにも特異的に凄い、というだけのことです。(笑) ま、いずれにせよ、秋になればこの待望の「参天版ムコスタ点眼液」が市場に登場してきます。実際に点眼した感触も非常にいいですし、眼科専門医としての私の直感では馬鹿売れしそうな気がします。実際の発売が今から楽しみですね。♪
2023.07.14
さて今年2023年のおそらく9月以降くらい(現時点ではまだ決まっていない)のことになるのですが、レバミピド懸濁性(けんだくせい)点眼液2%「参天」が発売になります。 これは2012年に大塚製薬から発売されたドライアイ治療薬であるムコスタ点眼液の後発品(ジェネリック)となります。発売後10年以上が経過しすべての特許が切れたので他のメーカーが安価な後発品を出せるようになったんですね。 さて先発品のムコスタ点眼液ですが、作用としては結膜(白目)の杯細胞というものを増加させます。そしてこの杯細胞は「分泌型ムチン」というネバネバ物質を出すので、結果として目の表面で働く分泌型ムチンが増加するということになります。これによって涙の質と量が改善されます。 更にドライアイには炎症が深く関与しているのですが、元々が胃薬であるムコスタには炎症を抑える作用もあります。この「杯細胞の増加&抗炎症作用」の2つの力で、この10年間ドライアイ治療のキープレーヤ的な存在として大活躍してきました。 そして今回、このムコスタ点眼液の後発品がひっそりと参天製薬から発売されることになったのですが、そこには、 我々全眼科医を震撼させる「衝撃の事実」 が隠されていたのでした。。。。(続く)
2023.06.22
さて世の中には、「寝る前には、決して目薬を点してはいけない」 という昔から語り継がれている伝説があります。 今でも特にご高齢の患者様では信じている方が多く、「夜、寝る前に目薬をすると、寝ている間に急死することがあると昔聞いた。あぁ、恐ろしい。絶対に点さない。」と診察室で言われることもあります。 またこれの違うバリエーションでは、目の病気が悪化したときに「もしかして、寝る前に目薬をしたのでそれが悪かったのでしょうか?」と真顔で訊かれることも良くあります。 最初に結論を申し上げると、「寝る5~10分前までに目薬をすれば何の問題もありません。寝る直前だと、涙の流れが停滞することにより成分によっては目への刺激が長引くことがあるので望ましくありません。」 ということになります。 では、一体どうしてこのような不思議な伝説が生まれたのでしょうか? それは、大昔に良く売れていた 「ある目薬」 が引き起こしたことだったのです。 具体的には、収れん・消炎作用がある 「サンチンク点眼液」 です。 この目薬には「硫酸亜鉛」という強い成分が入っていて収れん作用があるので、充血が良く取れる・目が白く見えるということで人気があり、大昔には良く病院で処方されていました。ただ硫酸亜鉛は刺激が持続する可能性があるので、「決して寝る前に点してはいけない。」と添付文書に書かれていたのです。でも当時はとても人気のある目薬だったので、きっと多くの副作用が出たのでしょう。そして上記の伝説が生まれたという事です。 今では硫酸亜鉛の様なリスクのあるお薬を使わなくても、もっと安全に充血を改善することが出来る目薬がたくさん出たので、サンチンクは「過去のお薬」となりました。そしてついに今年2023年、販売中止となりました。 「1つの時代が終わり、伝説だけが残った。」 ということですね。
2023.01.13
毎日外来診療をしていて良く頂く質問の1つに、 コンタクトレンズは何歳から使用できますか? というものがあります。 今日はこの問題について考えてみましょう。 一番よくあるパターンはそうですね、小学生のお子様の保護者の方からの質問が多いです。男の子の場合だと、「サッカーをしていて眼鏡だと動きにくいのでコンタクトにしたい。」、女の子の場合だと「美容上の理由で眼鏡をかけたくない。」などというのが主な理由ですね。 次に、質問の答えですが、「人による。」というのが結論です。ポイントは、1. 自分でコンタクトレンズの出し入れがきちんと出来るか?2. コンタクトレンズのケアがちゃんと出来るか? の2点になります。順番に見ていきましょう。 まず1番ですが、これは大原則です。コンタクトレンズは「高度医療機器」ですからね。我々の現場で良くあるのが、「怖くて目が開けられないので、レンズが入らない。」状況です。この場合は、出来るようになるまで何度も練習に来てもらうことになります。また「何とか自分で目にレンズを入れられるけど、今度は怖くて外せない。」というバージョンもあります。コンタクトレンズをずっと一生入れっぱなしにする訳にはいかないので、これもひたすら練習が必要です。 次に2番ですが、小学校の男の子だと厳しい場合が多いです。女の子は比較的出来る子が多い印象です。また出来ればケアが不要な1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズを選ぶことも非常に良いと思います。 以上をまとめると、 小学生でもコンタクトレンズは使用できる。但し自分で適切なケアができることが前提であり、結局はその子による。 と言うのが結論となりますね。
2022.09.12
「ヘルペス角膜炎」という病気があります。目の表面や中にヘルペスが出て来て悪さをするというものです。以下に実際に当院で治療した患者様の写真をお示しします。 このヘルペス角膜炎、ずいぶん以前には良い治療法が無くて多くの方が失明した恐るべき病気なのですが、エリオン博士と言う方が、アシクロビル(ゾビラックス)という特効薬を発明してほとんどの方が綺麗に治るようになりました。これは画期的な業績で、エリオン博士は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞された程でした。 ところがこのアシクロビルは粒子が粗くて目薬に出来ず、眼軟膏(塗り薬)の形でしか使用できないという欠点があります。また、薬の粒が大きくて目に入れると角膜(黒目)の表面が荒れやすい、更にヘルペスのウイルスは特に活動期は分裂が早くて凶暴なので、それに対抗するために1日に5回も使用しなくてはならない、と言う弱点もあります。 ちなみに、 眼軟膏を処方してもなかなか症状が改善しない、効かない患者様と言うのが良くいらっしゃるのですが、経験上そういう方はほぼ100% 単にお薬がちゃんと目に入っていない だけです。なので、当院ではヘルペス角膜炎の患者様が来院されたときには「軟膏がちゃんと入れられるようになるまで、何度も熱血指導」をしています。これでほとんどの場合は治ります。 、、、前置きが長くなりました。このヘルペス角膜炎、元々それほど多い病気ではないのですが、最近患者様の数が激増しています。そして、新型コロナワクチンの接種後に発症するケースが特に目立ちます。 なので、コロナワクチンを打った後に、目がぼやける、霞む、ゴロゴロする、涙が止まらない、などの症状がある場合は、是非早めに一度近くの眼科専門医を受診してくださいね。
2022.04.21
さて40歳以上の20人に1人、70歳以上だと7人に1人が罹っている今や日本人の「国民病」とも言われる緑内障。 以前この緑内障について、 治療すればするほど得をする 目の健康貯金が出来る病気である ことを説明しましたが、なるべく視野障害の少ない、早期の段階から治療を開始したほうが有利であることは間違いありません。 ところがこの緑内障という病気は、なかなか自分では気付けないんですね。それが非常にやっかいなところなのです。 今日は、どうして緑内障は自分で気付けないのか? について見ていきましょう。 それではまず 緑内障の進み方 がどのようなものなのか? を御覧戴きましょう。 まずは正常の状態から。 壁にお花が飾ってあります。地面には可愛い猫もいますね。 これが初期の緑内障になると、、、 右上のお花が消えてしまっています。でも別にそこが黒く抜けたりしているわけでもなく、違和感のない見え方ですね。 中期の緑内障になると、、、 壁のお花が完全にかすんで見えます。地面にいたはずの猫も何故か消えてしまっていますね。でもこのくらいの時期でもよほど敏感な方以外は残念ながら自分では気付かないんですね。 末期の緑内障になると、、、 テーブルの一部しか見えません。 このくらいになると急激に日常生活に困難が生じてきて自分でも「何かおかしい。」と思うようになります。「横断歩道を渡ろうとしたら、車が来ていないことは十分に確認してはずなのに、何故か急に車が飛び出してきて轢かれそうになった。」とか、「階段の上り下りが苦手になってしまい、段を踏み外すことが増えた。」などの自覚症状が出て、「おかしい。何かがヤバいぞ。」と気付いて慌てて眼科に駆け込んで来ることになります。 でも、どうしてこんなに進行するまで自分では気付けないのでしょうか? その理由はいくつかあります。 1. 緑内障は超慢性疾患で一般的に進行が非常にゆっくりなので、 患者様にとっては「常に違和感が無い」状態のままで静かに症状が悪化してしまう。 2. 上の進行具合の写真を見てもらえば分かるように、緑内障で見えない部分は脳(スーパーコンピューター並みの力があります。)が瞬時に視野を再合成して、見えている部分と同じような色調に補正してくれる。そのためよほど進行しない限りは見え方に違和感を感じることは無い。 3. 目は2つあるので、片目の視野が欠けていてももう片方の目がそれを補ってくれる。 このように、 緑内障は自分では気付けない病気なのです。 だから怖い のです。でも、このブログを御覧になってくれている貴方が40歳以上ならば、20人に1人は確実に緑内障なのです。また遺伝的素因も大きい病気なので、御両親が緑内障だったりするとその確率は更に跳ね上がりますし、近視の強い方も緑内障である可能性が高まります。 なので、少しでも目に心配がある方は、是非一度近くの眼科専門医を受診して下さいね。
2022.04.19
さて数か月前に新規導入した新型白内障手術装置、センチュリオンですが、日本アルコン社の担当の方と相談しながら、セッティングを煮詰めてきました。 私はすべての手術を「自分の両親の目の手術をするような気持ちで、とにかく丁寧に確実に施行する。」と決意しています。そのためマシンセッティングは時間短縮&効率重視ではなく、若干効率が悪くても合併症を起こさないことを最優先したマイルドなところを目指しました。 ただそうは言っても、早い手術=患者様の負担の少ない手術という側面もあるので、安全性を担保できる範囲内での効率化も同時に追求しました。 そして試行錯誤の末、「まずまずだな。これでイケるな。」というところに到達できたと考えています。 以下は現時点でのセッティングの画面です。ちょっと眼科専門医向けのマニアックな内容になりますが、自分用のメモも兼ねて貼っておきます。 私はCCC(水晶体の前嚢というところを丸く切除する手技。手術で一番重要なところ)の時に安全性最優先のためにヒーロンVという目の中の空間保持力が一番強い粘弾性物質を使って行っています。そのためUS(水晶体の中身を超音波で削る手技)の前に、内圧を下げるためにヒーロンVを一部抜かなくてはなりません。ただセンチュリオンは以前使っていたインフィニティに較べてtipの内径が小さいため、詰まってしまうことが多発しました。そこで細かく何度も設定を変えて、結局吸引の立ち上がりを300mmHgからと高めにし、更にトーショナルという超音波の横振動を10%入れることによって、問題はほぼ解決しました。 USは全例「ディバイト&コンカー」というこれまた安全性最優先のやり方で、核の2分割後の設定がこちら。自分は前房(手術時の目の中の作業スペース)がしっかりと保たれているのが好きで、それでボトル高は高め。そして吸引圧と流量は低め。核の寄ってくるのがマイルドで若干物足りないが、合併症防止のためにはそのくらいでいいと思っている。 最後のI/A(水晶体核を処理した後の、残った皮質を取る手技)はこちら。これもマイルドな設定。それにしても本当にセンチュリオンのI/Aは優れている。安心感が半端無い。まだ旧機種のインフィニティーを使っている先生はこのI/A目的だけで即買い替えて良いレベル。
2021.09.08
しばらく前から気になっていたのですが、コロナワクチン接種後に目の充血と強い痛みを訴えて来院される患者様が散見されます。 具体的には、下のような感じです。ちょっと赤黒い充血が特徴で、充血部を触るととにかく痛いのがポイントです。 これは実は、強膜炎と言う病気になります。関節リウマチやベーチェット病などの全身疾患を持つ方に良く出る病気なのですが、これが何故かコロナワクチン接種後の方に頻発している印象があるのです。 原因ははっきりとは分かりませんが、もしかするとワクチンの副反応の一つなのかもしれません。ただ、ステロイドの目薬を適切に使用すればほとんどの方はスーッと症状が治まりますので大きな心配はありません。 なので、皆様もコロナワクチンを打った後に、目の充血や強い痛みを感じた場合には、我慢せずに是非近くの眼科専門医を受診してみてくださいね。
2021.08.16
さて当院では現在更なる業務拡大のため、常勤看護師1名 事務・検査スタッフ1名 を募集中です。 その理由なのですが、根本的な理由として「眼科医療が成長産業である」ということが挙げられます。 目と言うのは、若い頃は多くの方は何のトラブルもないものですが、加齢と共に様々な病気が表れてきてどうしてもメインテナンスが必要となる組織です。そして日本は世界ナンバーワンの高齢化社会なので、眼科医療の需要が以前に比べてどんどんと増加しているのです。 また、眼科医療の進歩の速度が凄いということもあります。一例を挙げると、私が13年前に開業した当時には存在しなかった治療に抗VEGF薬硝子体(しょうしたい)注射というものがあります。これは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの疾患で、目の奥の網膜に腫れが出たときにそれを改善してくれるものなのですが、非常に強力な効果があり、現在多くの患者様がその恩恵を受けています。 ただ、患者様によるのですが、場合によっては繰り返しの治療が必要になる場合があり、結果として注射を打つ回数がどんどんと増えています。当院でいうと、最近では年間の白内障手術数に近いくらいの症例数になってきています。そしてこれは「13年前には全く存在しなかった医療」なのです。 ということで、当院ではより良い医療を提供し続けるために、新しいスタッフの力を必要としています。興味のある方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
2021.08.09
さて当院では、先日新型のスリットテーブルST-50 を導入しました。 これは毎日の患者様の診察に使用している細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を載せているテーブルなのですが、前モデルは開業以来13年以上酷使して何十万回も稼働してボロボロになっていたのと、もしも故障した場合の代替部品がもうないということもあり、買い替えを決断したのでした。 それでは実物をご覧頂きましょう。 非常に薄型でスタイリッシュに仕上がっています。また上下の可動域が飛躍的に大きくなり、車いすで来院される患者様の診察に強力に役立つように進化しています。 当院では、これからも「日々少しでも良いクリニック」になれるように、絶え間ない努力を続けていきます。
2021.08.02
さて新型白内障手術装置のセンチュリオンですが、使ってみると旧機種であるインフィニティに較べて圧倒的に進化していました。 実はセンチュリオンのデビューからは既に結構年月が経っているのですが、目の中に入れるハンドピースにセンサーが新規に掲載されて、目の中の圧を常にモニターしながらより安全に手術できるように進化したことが今回の購入の決め手となりました。 さてこのセンチュリオンを実際に使ってみると、目の中で水晶体を削る先端のチップの性能が上がっていて非常に効率が良くなっていることに感心しました。 ただ、実はそれ以上に、水晶体核を処理した後の、周りの皮質というものを除去するI/A(アイエー)という過程での前房(ぜんぼう:目の中のこと)の安定性の向上が凄いと思いました。インフィニティユーザーの先生なら、100%その差が実感できると思います。私はセンチュリオンで最初に手術をした瞬間に「後嚢(こうのう:水晶体の後ろ側の袋のこと)がぴくりとも動かない。すげえ安全になってるな。これは買い替えて良かった。」としみじみ実感しました。 これからどんどんセッティングを煮詰めながら、新マシンと共に更に白内障手術に精進していく所存です。
2021.07.05
大きなトラックに乗って、当院にとって10年振りとなる新型白内障手術装置のセンチュリオンがやってきました。 大きな段ボール箱に入っています。 、、、実は、2台同時に購入しました。目の玉が飛び出るほどの金額でしたが、万一の機械トラブルに備えてのことです。大切な患者様の目の健康を守るためには「出来ることはなんでもやる。」のが当院のポリシーなんですね。 ついに、手術室に搬入されました。これからセッティングを詰めていきます。。。
2021.06.07
さて当院では、2011年の9月から日本アルコン社のインフィニティという白内障手術装置を使用して毎週の手術を行ってきました。また数年後には万一の機械のトラブルに備えて2台目も購入し、万全の態勢で臨んできました。 白内障の進行した水晶体核を砕く力が強く、また眼の中(前房:ぜんぼう)の安定性も高く、本当に良いマシンでした。ちなみに、2011年9月当時の導入時の記事はこちら。↓ 新型白内障手術機械インフィニティ、購入しました。! ただ、導入後10年が経過して細かいトラブルがポロポロと出ていたことと、後継機種のセンチュリオンがバージョンアップされて非常に洗練度が上がっていたことから、ついにお役御免で買い替えることとなりました。 これがインフィニティの最後の雄姿です。流麗なデザインも魅力の1つでしたね。 10年間クリニックを支えてくれました。本当に感謝しています。有難う御座いました。
2021.05.31
さてコロナ渦でほとんど参加者のいない第125回日本眼科学会に参加してきた理由ですが、実は発売されたばかりの英国オプトス社のシルバーストンという最新鋭マシーンを実際に自分の目で見たかったからでした。 じゃーん、これがシルバーストンです。! いつの間にか日本のニコン社に買収されていたとのことで、マシン筐体はニコンとオプトスのダブルネームになっていました。スタイリッシュでカッコいいですね。 さてこのシルバーストンですが、正式には「SS-OCT付き超広角走査型レーザー検眼鏡」と言います。 具体的には、眼底(眼の底)の超広角写真と同時に、高精度な3次元解析画像を撮影できるという、夢のような装置です。 実際に私の目を撮ってもらいました。寒気がするほどに凄まじい、そして同時に素晴らしい圧倒的な情報量です。もしもこのシルバーストンがクリニックにあれば、もう目の病気を見逃すことはほとんどなくなると思います。まさに、眼科検査における現時点での「究極のマシン」と言ってもいいでしょう。 ただ、何とお値段が、、、、 税抜きで、4480万円。!!! 当院にはすでに同じオプトス社の不朽の名機、デイトナが何年も前から大黒柱として活躍してくれているので、 「ウチにあるデイトナを下取りして貰って、それでなんとか1500万円くらいにしてくれませんか?」とお願いしてみたのですが、「絶対にダメです。限界で税抜き3500万くらいです。」ということでした。(涙) 「ふー、シルバーストン、凄いマシーンだけど、あまりにも高価過ぎる。これはちょっと手が出ないなあ。それにしてもこの名前はイギリスにある有名なサーキットの名前と一緒だけど、何か意味があるのかな?」と思って質問してみたところ、「創業者がカーレース好きなので、そのサーキットから名前を取っています。」ということでした。 シルバーストンサーキット は世界有数の高速コースとして知られていますが、このオプトス シルバーストンもそれに負けないくらいに超高額なので、まさに「名は体を表す」んだなあ、と納得しました。 そして、「よし、もっと仕事を頑張って、きっといつの日か自分もシルバーストンを手に入れよう。」と思いながら、学会場を後にしました。
2021.04.19
先日大阪で開催された第125回日本眼科学会総会に参加してきました。この学会は我々の業界では日眼(にちがん)と呼ばれている「年に1回のお祭り」です。例年だと、人気のあるセッションは立ち見の大混雑がいつもの風景なのですが、今年はコロナ渦の真っ只中で行われたこともあり、会場にはほとんど参加者がいないという異様な状況でした。 それを象徴していたのがいつもは多くの人でごった返している機械展示場で、何と眼科業界では最大手のひとつであるアルコン社は「あまりにも参加者が少ない。」という理由で、学会中であるにも関わらず既にブースを閉鎖して撤退してしまっていました。 茫然としながら機械展示場をポテポテ歩いていると、知り合いの白内障手術機械メーカーの営業さんが、ガラガラとスーツケースを転がしながら、こちらに歩いてきます。私が、「えっ、Aさん、もう帰っちゃうんですか?」と驚いて質問すると、「はい、先生、もう撤収です。我々外資系はドライですから。もうお店開けていても先生たちも全然来ないし、どうしようもないです。」とのことでした。 「えらいことになってるな。」と思いましたが、実は自分がここに来たのは「あるミッション」があったからなのでした。(続く)
2021.04.11
さて当院では先日、携帯型のレフラクトメータ(眼の近視や遠視などの屈折度数をチェックする機械)である、米国ウェルチ・アレン社の新型マシン、スポットビジョンスクリーナーを新規導入しました。 これは検査員が遠く離れたところから目の屈折度数や斜視がないかを測定できるという、まるで魔法の様に優れた装置です。以前からずっと欲しかったのですが、現在のコロナ渦で「蜜」を避けてより安全な眼科検査を出来る様にとの思いから、今回思い切って新規導入しました。 また小さなお子様に対しても、距離を取って恐怖心を与えることなくリラックスした環境下で目の状態を調べることが出来るのも大きなメリットです。 それでは実際のマシンをご覧いただきましょう。 驚くほどにコンパクトですね。 当クリニックは、これでまた「新たな武器」を手に入れました。これからも「常に安全で快適」な眼科医療を提供し続けられるように、スタッフ一同精進していく所存です。
2021.04.01
さて最近はクリニックの改善に余念がない日々を送っていますが、本日、診察室に患者様への説明用の大型モニターを新設しました。また同時に2画面を表示させるためにスペックアップが必要だったために、パソコンも最新型に買い換えました。 業者の方がやってきて設置するモニターを出してくれています。 32型のワイドディスプレイを診察室の壁面に設置します。 設置前の様子です。 設置が完了しました。下には例として眼底(眼の底の網膜)の写真を出していますが、凄く見やすいですね。 これで、患者様に対してこれまで以上に分かりやすい症状説明が出来るようになりました。今日の午後診から早速実際に使用しましたが、早くも大好評でした。もっと早くにこのアイデアを思い付いたら良かったくらいですね。
2021.03.05
さて御来院頂いた患者様への基本的な検査となる視力検査ですが、当院では開院時より日本のニデック社の液晶検査表を導入しています。 これまで特にトラブルもなく問題なく稼働してきたのですが、しばらく前に以前の職場の先輩が開業されてその内覧会に行った時に、当院に置いてあるマシンのモデルチェンジ版となる最新型が置いてありました。ジーっと見ていると、明らかに画面が明るくなっていて進化していることに気付いたので、当院でもマネして早速採用しました。 また同時に、これまで2台だった検査表を3台に増設しました。検査室のレイアウトを工夫して、下の写真の様に縦2列とそれに直交する形での横1列の合計3列での同時検査を出来る様に改善しました。 別角度から、写真をもう一枚。よく見ると、奥に幽霊が映っていますね。。。 これによって、コンタクト処方希望の患者様が多い日などにこれまでにたまに発生していた「視力検査渋滞」が緩和される見込みです。当院ではこれからも少しでも良いクリニックになれるように、日々たゆまぬ努力を続けていきます。
2021.03.04
緑内障患者様の基本的な検査として、「見える範囲を調べる」視野検査というものがあるのですが、当院ではその検査装置の3代目として最新鋭のマシンとなる日本のコーワ社のAP-7700を導入しました。 前回は、 2015年に当時の最新マシンである同じコーワ社のAP-7000を入れていた のですが、ちょっとあまりにも休みなく酷使し過ぎたせいかボロボロになってしまって不具合があったのと、AP-7700をデモで使わせて貰ったら滅茶苦茶パワーアップしていてびっくりするくらいに最高だったので、思い切って買い換える形となりました。 このAP-7700は実際には数年前に発売されていたのですが、今回 「スマートストラテジー」という画期的かつ革新的なプログラムの新規追加 があり、それが購入の決め手となりました。 簡単に言うと、 検査時間の短縮と検査精度の飛躍的な向上が、ダブルで達成 されています。 正直に言って「今までのAP-7000とは何だったのか?」という根源的な疑問を感じるほどの良い出来です。もちろん私はコーワ社の回し者などではありません。1ユーザーとして使ってみての、率直かつ正直な感想です。(笑) 当院では、これからも必要な設備投資を決して欠かすことなく、常に「新しくて、かつ安全で快適」な眼科医療を提供し続けて行くことを皆様に誓います。
2021.01.29
さて当院は四国有数の漁港である愛媛県八幡浜市の国道197号線に面した、地域で一番の一等地に立地することもあり、毎年頑張ってイルミネーションをしています。今年2020年もスタッフの尽力で、本日から冬のイルミネーションを開始しました。 今年は国道沿いに巨大な蒸気機関車・大きな観覧車・特大スノーマンの3つの「激デカアイテム」を投入し、豪快でアメリカンな仕上がりとなりました。 近くで見ると、今年のバージョンは非常に迫力があって良いと思います。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非聞かせてくださいね。
2020.11.17
さて当院は開院から10年以上が経過しました。クリニックの外壁には天然の焼杉の板を全面に張り付けていたのですが、一部が腐食したり、焼きが剥げてまだら模様になってしまっていました。そのため、しばらく前に足場を組んで焼杉の全面的な張替えを行いました。 その結果、新築時の輝きを取り戻すことが出来ました。また併せて、院内の細かい不具合もすべて徹底的に修繕をしました。 ちなみに当院は「黒×オレンジ」の配色でデザインされているのですが、10年以上前にはこういった外観の医療機関はほぼ皆無でした。 ではなぜこういうファサード(建物の正面部分)にしたのかというと、クリニックを開くにあたって自分の中に、「いかにも病院と言うイメージの見た目には絶対にしたくない。むしろ美容院かカフェのような仕上がりにして、患者様が気軽に気楽にリラックスして受診できるような建物にしたい。」という強い気持ちがあったからです。 そして建築家の先生と議論を重ねる中で、私が「先生、クリニックの外観で絶対に使わない色は何でしょうか?」と質問したところ、「うーん、それは、死をイメージする黒と、後は血をイメージする赤でしょうね。」との返答だったので、「なるほど、じゃあ、逆にウチはそれで行きましょう。」ということになったのです。 ただ、当院が開業している愛媛県八幡浜市は全国でも有数のミカンの産地ということもあり、赤はみかんオレンジに変更し、結局は下の様な「黒×オレンジ」のデザインが完成したのでした。 開院当時は「斬新な見た目ですね。」と言われることも多かったのですが、10年以上が経過し、今では街の皆様に認知され風景に溶け込みました。これからもクリニックの外観も、そして肝心の中身も、常にブラッシュアップし適切なメインテナンスを加えながら、「次の10年」も皆様に信頼され続ける存在であるように努力を続けていく所存です。
2020.10.12
私はいくつかの学校の校医をさせて頂いています。今の季節だと、「秋の就学時検診」の時期になります。 学校に着くと、来年の新一年生が体育館や保健室に集まっていて、内科、眼科、歯科の各々の先生が病気がないかを順番に見ていくのです。 みんな小学校入学前なので完全にフリーダム です。まるで宇宙空間にいるみたいに暴れ周り、走り回っています。 学校へは教育委員会が手配してくれたタクシーに乗っていきます。これは1人の事もありますし、他科の先生と一緒の事もあります。。。 しばらく前に、ある学校に行くのにタクシーに乗り込んだら、同じ学校の歯科の校医をしている先生との乗り合わせになりました。温厚で笑顔の素敵なドクターです。 「歯科はコロナ対策で院内の換気が大変なんですよー。」等とよもやま話をしていたのですが、先生がふと、「後、最近、 患者さんが何故かマスクをしたまま診察台に座る んですよ。外さないと絶対診療できないのに何でなんでしょうね?」と仰られました。 私は、「そういえば、最近 眼科だと、逆にマスクは取るのに何故かメガネを外さずに診察台に顔を乗せる 患者さんが多いんですよ。どうしてでしょうね?」と答えました。 すると、タクシーの運転手さんが、「そういう面白い話はスナックで夜、お姉ちゃん達にしてあげて下さい。」と言われ、車内に笑いが広がり「おやじトーク」は和やかに終わりました。 、、、その後無事に検診も終了し、私は職場に戻ったのですが、ふと、 いや、さっきの話は実は深いな。 と気づきました。 歯科に来る方は口の中に心配があるので無意識にマスクをしたまま診察台に座ってしまうし、眼科に来る方は目に心配があるので無意識にメガネをしたまま診察台に顔を乗せてしまうんじゃないかな? 無意識のうちに弱いところを守ろうとしてしまうんじゃないのかな? と思ったのです。 そして私は、 患者様の不安をより取り除けるような、的確で高品質の眼科医療を提供し続けないといけないな。 との思いを新たにしたのでした。
2020.10.03
新型コロナウイルスが日本列島を席巻しています。全国的な感染状況は落ち着いてきましたが、未だに「3密」の状況下ではマスクが手放せないですね。 さて眼科外来での基本的な検査として視力検査があります。これは検査用の眼鏡をかけて行うのですが、しばらく前に「それまでは良好な視力が出ていたのに、急に出なくなった。」患者様が何人かいらっしゃいました。 最初は、「コロナウイルスの暗いニュースが多いので、心因性のものかな?」とも思ったのですが、すぐに違う原因が判明しました。 それは、、、、 視力検査の時にコロナウイルスを恐れてマスクを目の下ギリギリまでしていたせいで、検査用のレンズが曇ってしまい、それで視力が出なかった のでした。 幻の、 ゴースト白内障 だったんですね。(笑)
2020.07.20
さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬 第二選択薬(セカンドライン)として使用されているβ(ベータ)遮断薬 β遮断薬と同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなるα(アルファ)2作動薬のアイファガン点眼薬 の紹介が終わりました。 そして今回は同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなる炭酸脱水酵素阻害薬です。 効き方としては、目の中を流れている房水(ぼうすい)産生抑制の作用となります。 さてこの炭酸脱水酵素阻害薬には、プロスタグランジン関連薬の様な目の周りが黒くなったり、毛が生えたり、窪んだりという局所の副作用(PAPs)がなく、またベータ遮断薬の様な喘息や重い心臓病の方には処方できないという全身的な副作用もありません。 その意味で、この系統のお薬はある意味で「処方しやすい薬」という面があります。ただ、欠点が全くないのかというとそうでもなく、1. 効き目がやや弱い。2. 目薬にするのが難しく、点眼すると凄くしみたり、もしくは点眼液が白い濁り液だったりして、やや使いにくい。 という問題点もあります。そのためこの系統のお薬は単剤で処方されるよりも、コソプト点眼液、アゾルガ点眼液、アイラミド点眼液と言った形で他の薬剤との合剤という形で使われることが最近は多くなっています。 ただそうは言っても、この炭酸脱水酵素阻害薬が緑内障治療において重要な地位を占めていることに間違いはありません。それでは次回からはこの系統に属する2つの点眼薬を徹底解説することと致しましょう。(続く)
2020.07.15
さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬 第二選択薬(セカンドライン)として使用されているβ遮断薬 の紹介が終わりました。 そして今回はβ遮断薬と同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなるアルファ2作動薬のアイファガン点眼液です。 効き方としては、ぶどう膜強膜流出路からの房水排出促進+房水産生抑制の2つの作用となります。 さて私の個人的な考えをここで述べると、現在発売されているあらゆる緑内障点眼薬の中で、 アイファガン点眼液が総合力ナンバーワン と思います。 高い眼圧下降効果(リターン)と少ない副作用(リスク)が両立していて、使えば使うほどに、「アイファガン、ほんとにいい薬だなあ。」という実感がどんどんと高まっているからです。 これまでに紹介したように、緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多いのですが、 アイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインの チモプトール と同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 そしてその「突出したガチンコ力の高さ」によって、現在アイファガン点眼液は多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップ(2018年度売上高136億円)に君臨しています。 尚、このアイファガンについては、当ブログで過去に既に徹底解説しています。未読の方はぜひこの機会に目を通してみて下さい。↓ アイファガン点眼液が、売上1位のベストセラー緑内障点眼薬となりました。 アイファガン点眼液が起こした奇跡 さてそんな無敵のアイファガン点眼液なのですが、ただ1つ心配なことがあります。それは、発売元の千寿製薬が失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円と製薬会社としては超小粒。)であり、このアイファガンは千寿製薬にとって他に代わるものの無い大エース=屋台骨となっていることです。 そして現在はベストセラー街道を驀進中のアイファガンなのですが、近い将来ついにジェネリック(後発)医薬品が登場します。その時、偉大な孝行息子を失うことになる千寿製薬はどうなってしまうのか、果たして大黒柱が倒れた後にも生き残っていけるのか、それを私は眼科専門医としてとても懸念しています。
2020.03.11
毎日の患者様の診察に使う、外来用の顕微鏡である細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)。当院では 日本のタカギセイコー社 の名機、 300XL というマシンを導入しています。 皆様も眼科を受診されると、100%これにあごを乗せ頭をくっつけて診察を受けると思います。ちなみにこの細隙灯顕微鏡は1911年に発明されたものなのですが、それから100年以上変わらず眼科診療の王様であり続けてきました。それだけ完成度の高い機械であるということですね。 さてこの大切な外来顕微鏡なのですが、視界の片隅に僅かなほこりが見えるようになってしまい、メーカーに出してオーバーホール修理をして貰いました。全てのパーツをメインテナンスしてもらったので新品同様のコンディションに戻り、びっくりするくらいに良く見えるようになりました。これでまた毎日の患者様の診察をより楽しくさせていただく事が出来ます。 これからもクリニックの隅々にまで気を配り、常に万全の状態で大切な患者様をお迎えしたいと考えています。
2020.02.01
「遠くも近くも見えないので眼鏡屋さんで何回も何回もメガネを作り変えたんだけど、どうしても合わないので、良く見えるメガネの処方箋を出して欲しい。」との訴えで、高齢の女性が受診されました。 「とりあえず、今お持ちのメガネを見せていただきましょう。」と言うと、出るわ出るわ、メガネがどんどんと出てきます。全部で半ダース、6つもありました。 「これは遠近両用で作ったけど、頭がクラクラと痛くなるので使っていない」 「これはアーケードの中の人気のあるお店でしばらく前に作って一番マシだけど、でもあんまり満足はしていない」 「これは近所に移動眼鏡屋さんが来たので、行ってみたら親切にメガネを作ってくれたんだけどあんまり合わない」 「これは大手チェーンの眼鏡屋さんで最近作って貰って、その時に合わないようなら眼科に行って処方箋を出して貰ったら無料でレンズを交換してあげると言われたやつなんだけど、キツイ感じのするメガネで使っていない」 「これは使ってないけど、凄く高かったやつなので一応持ってきた。」 など、1つ1つチェックして見たのですが、どれも度数にそれほどの差があるわけではなく似たようなメガネです。 そこで目の方を診せて頂くと、単に白内障が高度に進行してしまっておりそれで目の力が落ちて、どのメガネをかけても見えない状態になっていたのでした。患者様は「見えないのはメガネが悪いせいだ」と固く思い込まれていたのですが、 悪かったのはメガネではなく目の方 だったんですね。こういう患者様は実に良くいらっしゃいます。この方はすぐに白内障手術をさせて頂き、今は無事に視力を回復されていらっしゃいます。 眼鏡屋さんに行って「メガネが合わないんだけど」と言えば、眼鏡屋さんは喜んで何個でもメガネを作ってくれます。なぜならそれが仕事だからです。 でもそれは、 床屋さんに行って「ねえ、髪の毛切ったほうがいいかな?」と質問するのと同じかもしれないのです。 床屋さんは髪を切るのが仕事ですから「切ったほうがいい」と答えるに決まっていますよね。(笑) つまり、メガネで目の全ての問題が解決するわけではないということです。何回もメガネを交換しても見え方が良くならない時には、ぜひお近くの眼科専門医の受診を検討してくださいね。
2020.01.24
さて当院は四国有数の漁港である愛媛県八幡浜市の国道197号線に面した、地域で一番の一等地に立地することもあり、毎年頑張ってイルミネーションをしています。今年2019年もスタッフの尽力で、本日から冬のイルミネーションを開始しました。 今年も趣向を凝らし、華やかな出来栄えとなりました。 昨年2018年に新登場した「ムービング観覧車」の通称「ドンちゃん」はこの1年間の風雨に耐え2年連続での登場となりました。光源がLED化されているので相変わらず発色がいいですね。 更に2019年のニューアイテムとして、LEDスパークリングホログラム プレゼントボックスとスパークリングホログラムツリーが登場しました。 また当クリニック初の試みとして、LEDガーデンモーションプロジェクターライトも追加してみました。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非聞かせてくださいね。
2019.11.03
さてシリーズでお送りしている、緑内障点眼薬の世界。 今日も緑内障治療の第2選択剤である、ベータ遮断薬の世界を見ていきましょう。 3回目となる今回はべトプティック点眼液(一般名 ベタキソロール塩酸塩)です。 私は実はこの緑内障点眼薬の一覧表を見ていてちょっとギョッとしたのですが、それはこのべトプティック点眼液がまだ現役で販売中の薬剤だった、ということでした。なんとなくですが、「ずっと昔に既に販売中止になった。」ものと思っていたのです。 その理由なのですが、このべトプティック点眼液、 点眼するととんでもなくしみる のです。点したら多分全員「クオーッ」ってなると思います。これは大げさじゃないです。自分で何度も過去に実験しましたからね。 つまり、べトプティック点眼液には根本的に「超絶しみるので点しにくい、患者様に嫌がられる。」という大きな欠点があるのです。 ただ、この弱点はメーカーも当然分かっていたので、その後、しみる欠点を改善してよりソフトにした、べトプティックエス(ソフトのエス)が発売されました。 「おぉ、べトプティック、ついに良くなったのか!」と思って喜んで自分で点してみたところ、、、、 これがまたもや強烈にしみる 一品だったのです。個人的にはどこがソフトになったのか全然分かりませんでした。なので、当院ではそもそもこのお薬は採用していません。 ただ、こんなべトプティックにも長所はあります。それは、β1選択性β遮断薬という特徴があり、ベータ遮断薬の中では比較的全身的な副作用が少ないということです。 それにしてもトータルで見ると、他に良いお薬がたくさんある中で、「敢えて」べトプティック点眼液を使う理由はあまりないのではないか?と個人的には考えています。実際の売上高はどのくらいあるのでしょうか?
2019.10.03
さてシリーズでお送りしている 緑内障点眼薬の世界。 今日は前回のチモプトール点眼液に続いて、緑内障治療の第2選択剤である、 ベータ遮断薬 の世界を引き続き見ていきましょう。 ベータ遮断薬2回目となるとなる今回は、ミケラン点眼液 (一般名 カルテオロール塩酸塩) です。 ただ実際には製剤的な工夫で1日1回点眼で済むように工夫されたミケランLA点眼液がそのほとんどのシェアを占めています。 なので以下はこのミケランLAについての説明です。 さてこのミケランLA点眼液は、ベータ遮断薬の中でのシェアは前回紹介した チモプトール点眼液 よりも低いのですが、個人的には圧倒的に優れていると考えています。その理由は、1. チモプトール(XE)よりも角膜障害が少ない。2. 点し心地が良くて使いやすい。3. 長期使用でも効果が減弱しにくい。 という大きな長所があるからです。 そのため当院では以前からこのベータ遮断薬では圧倒的にミケランLA点眼液を多く処方していますが、全国的に見るとチモプトール点眼液の方がシェアは上です。 いい薬が必ずしも売れるとは限らないのが、我々医療業界の7不思議の1つ なんですね。(続く)
2019.09.10
さて前回お伝えした通り、 日本で唯一のマクロライド系抗菌点眼剤となる、 アジマイシン点眼液 がいよいよ近日中(9月11日発売予定)に登場します。 今日は、このアジマイシン点眼液が実際にどのようなお薬なのかを見てみましょう。 まず特徴的なのが、その使用方法です。結膜炎の場合だと、1日2回を2日間、その後、1日1回5日間。そして眼瞼炎や麦粒腫に対しては、1日2回を2日間、その後、1日1回12日間となっています。ちょっと変わっていますね。ただ非常に少ない点眼回数で効くわけであり、それが何よりもこのアジマイシン点眼液のポテンシャルの高さを示しています。 それではいよいよ実際に点眼してみましょう。 ね、粘い。!!! まるで「水あめ」の様な粘りけです。そして目に入ると、しばらくの間目がぼんやりとして見えなくなります。なるほど、これは目薬にするのに苦労したんでしょうね。こういう風にしないと、「どうしても溶けなかった。良く効く目薬に出来なかった。」ということだと思います。ただ、点し心地はそれほど悪くありません。薬の抜群の効き目を考えれば、これは十分に許容範囲だと思いますね。 さて実はこのアジマイシン点眼液、アメリカでは既に2007年に結膜炎の治療薬として発売されていました。そして我々日本の眼科専門医にとっては長年「喉から手が出るほどに欲しい」目薬だったのです。そして未確認情報では既に2010年頃には某製薬会社が日本での発売に向けて動き出していたのですが、実際には日の目を見る事はなく頓挫し、結局アメリカでの発売から12年も遅れてようやく日本でも使えることとなりました。 これは恐らく、「抗菌点眼剤の世界ではニューキノロン系が圧倒的なシェアを占めていて、元々他の系統の薬の売り上げは思わしくないし、更に悪いことにアジマイシンは点し心地が悪いので、日本では多分売れない。」と判断されたためではないか?と思うのですが、私たち第一線の眼科臨床医にとってはずっと待ち望んでいた薬であり、また前述の通り私が体を張って試した感じでもそこまで悪い点眼感触でもなかったので、個人的にはこれは売れると思います。 売れるか売れないか、恐らく大議論があったであろうこのアジマイシン点眼液を日本発売に漕ぎつけてくれた製造販売元の千寿製薬の英断に感謝します。きっと、以前の アイファガン点眼液 の時の様な、ロングセラーの、多くの患者様に愛される名薬になると確信しています。ちなみに、 緑内障点眼薬界の奇跡 とも称される、アイファガンが巻き起こした魔法については下記記事を合わせてご覧下さい。 アイファガン点眼液が、売り上げ1位のベストセラー緑内障薬となりました アイファガン点眼液が起こした奇跡 さてこのアジマイシン点眼液、待望の日本発売は現時点では9月11日予定となっています。今から登場が楽しみですね。
2019.08.30
さて前回の記事 抗菌点眼薬の大問題 では、日本の現在の抗生物質点眼剤のラインナップが非常に貧弱で、心細くて嘆かわしい状況であることを説明致しました。 でも、実はもうすぐこの現状を打破してくれる、革命的な大型新薬が登場します。 それが、日本で唯一のマクロライド系抗菌点眼薬となる、 アジマイシン点眼液 です。 それでは早速実物を見てみましょう。 うーん、クールな外観でいかにも効きそうですね。♬ そして実際の臨床効果も凄いです。 中でも特筆すべきなのが、眼瞼炎(目の分泌腺の炎症で目の周りがただれている状態)に抜群に良く効くということです。今の第一選択薬であるニューキノロン系よりも圧倒的なパワーを発揮してくれるんですね。! ちなみにこのアジマイシン点眼液の眼瞼炎への効果については、LIME研究会の 眼瞼炎について という記事が抜群に分かりやすいので、是非こちらもご覧下さい。 まさに、日本の眼科抗菌剤治療の新たなる救世主。 それでは次回はこの超大型新薬、アジマイシン点眼液の使い方、点し心地のリアル、ぶっちゃけ薬としての総合評価はどうなのか? などを詳細に見ていきましょう。(続く)
2019.08.15
結膜炎や麦粒腫(ばくりゅうしゅ)、眼瞼炎(がんけんえん:目のマイボーム腺という分泌腺の炎症)などの治療には、抗生物質の点眼薬を用います。 ニューキノロン系のクラビット、ガチフロ、ベガモックスなどの点眼薬が有名で、皆様も眼科で処方されたことがきっとあると思います。 このニューキノロン系の点眼薬は非常に良く効きますし、ほとんどの方はすぐに症状が改善するのですが、あまりにも広く使われているために最近ではこの系統のお薬が効かない「耐性化」症例が急激に増えてきています。 そしてニューキノロン系で効果が不十分であれば他の系統の目薬を使うことになるのですが、実はその「ニューキノロン以外」の抗菌点眼剤のラインナップが非常に少ない、セイフティネットが少ないのが「現在の眼科医療の大問題」なのです。 これが何故かというと、抗生物質と言うのは「溶けにくくて目薬にしにくい」という欠点があり、それで目薬にしやすいニューキノロン系以外は急に「貧弱なメニュー」になってしまうのです。 勿論違う系統の目薬もあるにはあります。でもそれらの多くには同時に「大きな欠点」が存在します。 具体的に言うと、ニューキノロン系が効かなかった、もしくは効果不十分だった場合の多くには、第2選択剤としてセフェム系のベストロン点眼液が使われます。これは抗菌スペクトル・作用機序が異なっていてニューキノロン系が効かないばい菌に対して効果があり非常にいいお薬ではあるのですが、安定性に乏しくて「1瓶が1週間しか持たない」という短所があります。そのため治療が長期にわたる場合には毎週毎週新しい目薬に変えなくてはなりません。 それ以外だと、アミノグリコシド系のトブラシン点眼薬などもありますが、点眼時の刺激が強く、また点眼後に高率にかゆみや充血を起こしてくる気難しい目薬であり、眼科専門医としての観点から見ると、「リスクとリターンのバランスが非常に悪い。いいお薬では全くない。」という評価となります。 以上をまとめると、 抗菌点眼剤の世界には大きな問題がある。ニューキノロン系の目薬は王様的な存在で良く効くけど、耐性化で効かない症例も急激に増えてきているし、万一の場合の、王様の控え・セイフティネットとなる有力な点眼薬が極端に乏しい ということになります。これほどまでに医学が進歩しているのに、2019年8月現在の日本の眼科点眼治療の現状は、実はこういう残念な有様である、ということなんですね。(続く)
2019.08.08
暑い毎日が続きますね。 さてクリニックの方では以前からお知らせしていますが、 8月9日(金)の午後から8月15日(木)まではお盆休みとさせて頂きます。尚、8月16日(木)からは通常通りの診療・手術を行います。 ちなみにお盆休みについては開院以来色々なパターンを試しました。最初の頃にはあまりお休みを頂かずに頑張って開けていたこともあったのですが、なんとその時に、「開院来で最小の外来患者様数」を記録しました。(笑) そしてこの時の経験から、「なるほど、お盆と言うのはやっぱり休みべき時期なんだ。そもそも患者様からの需要もあんまりないんだ。」と深く体感&納得致しました。 その後患者様にも色々とお伺いしていると、「お盆は子供や孫が都会から帰って来るから、病院なんかに行ってる場合じゃない。準備することがたくさんあるし、何だったら1年で1番忙しい。」との意見が大多数でした。 そういうこともあり、この数年は当クリニックも「長めのお盆休み」を取らせて頂くようにしています。ちなみに、街に「お盆休みに医療の需要が乏しい」ことの当然の反動として、お盆前の外来は例年大変な混雑となります。スタッフ一同全力で頑張りますが、少しお時間の余裕を持って受診して頂けると幸いです。
2019.08.04
毎日の外来で患者様からたまに聞く質問のひとつに上記の コンタクトレンズが目の裏側に入り込んでしまわないか、心配なのですが ? というものがあります。 これは素晴らしい質問です。確かにコンタクトレンズが目の裏側の中心部の方に入り込んでしまったら、取れなくなりますし、それはとても大変ですね。 でも実は、 目の中は結膜嚢(けつまくのう)という袋状の組織になっていて、コンタクトレンズが入り込むスペースには限界がある のです。 なので、決して「目の裏側」まではコンタクトレンズは回り込んだりしません。ご安心くださいね。
2019.08.01
さて今日からは、緑内障治療の第二選択剤(セカンドライン)である、ベータ遮断薬の世界を見ていきましょう。 初回となる今回はチモプトール(一般名 チモロールマレイン酸塩)点眼液です。ベータ遮断薬の中ではシェアトップの歴史的な名薬ですね。現在では製剤的な工夫で一日一回点眼で済むように改良したチモプトールXE点眼液の方がメジャーな存在となっています。 尚、下記のリズモンTG点眼液も成分は全く同じです。 このチモプトール点眼液はその効き目の強さは折り紙付きですし、副作用に関してもそのすべてが既に出尽くしている状態で、我々眼科専門医にとっては「知り尽くした、とても使いやすいお薬」です。 欠点としては、点眼時にしみる、長期使用で角膜(黒目)障害が出やすい、同じく長期使用で効き目が悪くなる、などがありますが、まあ、総合的に見て緑内障点眼薬の中でいい薬であることに間違いはないですね。(続く)
2019.07.23
シリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬の紹介が終了しました。 続いては、第2章 ベータ(β)遮断薬 です。 この系統のお薬は、効き方としては主に房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)産生抑制作用となります。 ベータ遮断薬は前回までに紹介したプロスタグランジン関連薬とは効き方が全く違うので、両者を併用するとより大きな眼圧下降効果が期待できますし、実際の臨床でも多用されています。 さてベータ遮断薬は、現在緑内障治療の第二選択薬(セカンドライン)として使用されています。第一選択薬(ファーストライン)のプロスタグランジン関連薬だけでは効果不十分だったり、もしくはその副作用で使えない場合などに検討される薬剤ということですね。 このベータ遮断薬は、キサラタンに代表されるプロスタグランジン関連薬が登場するまでは長い間第一選択薬の地位に君臨していました。その理由は何と言っても「眼圧がまずまず良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なんですね。 ベータ遮断薬には、PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)のような眼局所の副作用はありませんが、その一方で、気管支ぜんそくや重い心臓病がある患者様には使用することが出来ません。 高齢の緑内障患者様の中には「自分で自分の病気を把握しきれていない」ケースもあり、それがこのベータ遮断薬処方の難しさに繋がっています。ただ逆に言うと、全身状態が良好で問題なく使える患者様にとっては「安全に使える、歴史のある良いお薬」でもあります。 それでは次回からは、このベータ遮断薬を詳しく見ていきましょう。(続く)
2019.07.11
シリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 今日も緑内障治療の第一選択剤である、プロスタグランジン関連薬の世界を見ていきましょう。 6回目となる今回はエイベリス点眼液(一般名 オミデネパグイソプロピル)です。一般名がえらく難解ですね。そういえば、しばらく前に学会に行った時に、緑内障の世界では有名な某大学教授が、名前を言い間違えて舌を噛んでいました。 このエイベリス点眼液は以前にも当ブログで紹介したことがあるのですが、プロスタグランジン受容体のサブタイプのひとつであるEP2受容体作動薬です。今日は復習として改めて詳しく見ていきましょう。 これは今までに全くなかったブランニューの効き方をする画期的な新しいお薬となります。具体的には、目の中を流れている「房水(ぼうすい)」を2種類の経路を使ってその流出を促進することで眼圧を下げてくれます。 一番気になるのはその効き目ですが、 現在緑内障治療でファーストラインとして使用されている名薬 キサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト) に比べて「非劣性」 であるというデータが出ています。つまり、 滅茶苦茶良く効く ということですね。 またキサラタンに代表される プロスタグランジン製剤(他にはトラバタンズ、タプロス、ルミガンなどのお薬があります。) には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があるのですが、エイベリスはこのPAPが少ないと言われています。 ただその一方で、 結膜(白目)の充血や黄斑浮腫(目の奥の網膜の視力に関係する大切な部分の腫れ)などの副作用がやや多い という欠点があります。そのため、 白内障術後で目の中に眼内レンズが入っている患者様や、タプロス(一般名:タフルプロスト)という点眼液を使っている方への使用は禁忌 となっています。 さて眼科専門医として正直に言うと、このエイベリス点眼液はやや副作用が多そうで、「ちょっと気難しそうな薬」という印象はあります。ただその一方で現在緑内障治療のファーストライン(第一選択薬)である前述の プロスタグランジン製剤のPAPという副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃるので、そういった方々へのオプション的な選択肢としての魅力は凄くある と思います。 後、これはあくまでも個人的な意見なのですが、このエイベリスは副作用として角膜肥厚(点眼によって黒目が分厚くなる)が報告されているのですが、これは逆に色々な感染症や炎症性疾患で角膜が薄くなってしまった患者様に治療薬として使える可能性があるんじゃないかな?と以前から思っています。薬の作用というのは不思議なところがありますからね。 いずれにせよ、「日本発&世界初」のこの新しい機序を持ったエイベリスの今後の活躍が楽しみです。
2019.07.05
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