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最初に参加したのは、
「全身疾患と白内障手術」というシンポジウムでした。もちろん会場の最前列に座って気合を入れて勉強しました。
この中で勉強になったことを自分用のメモ書きとして下にまとめておきます。一般の方で難しい場合は読み飛ばしてください。
1. アトピー性皮膚炎がある患者様の白内障手術はとにかく要注意。 鋸状縁(きょじょうえん:目の奥の網膜の一番隅っこの見えにくい場所)付近の毛様体上皮裂孔や、網膜剥離裂孔を伴っていることが多いので、強膜圧迫による手術中の眼底検査が必要である。
2. 前立腺肥大で排尿障害の治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増している。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多い。これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されている。泌尿器科の先生はカジュアルに気軽に処方するが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こす。
これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからだが、 α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できる。 ただしミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけない。後、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っているが、原液でないと前房内濃度が足りない。ミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理。
3. 糖尿病を合併している患者様の白内障手術は非常に多いわけだが、手術前にHbA1C値を3ヶ月で3%以上、つまり1ヶ月で1%以上改善させると、元々中等度以上の非増殖性網膜症では高率に術後に網膜症と黄班浮腫が悪化する(いわゆる糖尿病治療後網膜症)。そのため、 内科の先生方に対して我々眼科医側から、「手術のための急速な血糖改善はかえって良くない」ことをしっかりと伝えていく必要がある。
後、糖尿病の基準が11年ぶりに改定されて、「HbA1C6.1%以上」となった。
4. 白内障手術前に抗血栓療法(ワーファリンや、アスピリンなどの抗血小板薬)を一旦中止すべきかどうかということが以前から議論されてきたが、 基本的に休薬の必要はない。 (2009年の循環器科の治療ガイドラインにも記載されているとのこと) 白内障術中には0.04%の確率で「駆逐性(くちくせい)出血」という恐ろしい合併症が起こるわけだが、最近は「極小切開なので更に減っているでしょう」と。
「むしろ休薬によって高頻度(1%)の確率で虚血性の恐ろしい脳梗塞や心筋梗塞などのイベントが起こるので、そっちの方が危ない」 とのこと。そのため、「休薬する場合は必ず同意書を戴く必要がある」と。
ちなみに当院では開院時から抗血栓療法薬の休薬はしていません。
非常に勉強になるシンポジウムでした。(続く)
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