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最近の検査機器の進歩によって
PPG (Preperimetoric glaucoma : 視野障害前緑内障
と言う概念が急速に広まってきています。これは、
視神経に緑内障性変化を認めるものの視野異常を認めない状態
のことです。
私達人間には目の視神経が元々120万本あります。そして大雑把に言うとこれが半分の60万本を切ると視野(見える範囲)が欠けてきて緑内障発症ということになります。
そして視神経に異常がありそれに一致する視野欠損があれば、どこからどう見ても立派な緑内障で当然に治療開始と言うことになる訳ですが、例えば今の視神経が残り70万本位で思い切り緑内障性の視神経変化を認めるけれども、視野検査では色々な検査法を駆使してチェックしてもまだ完全に正常であると言うことは臨床上非常に良くあります。つまり、
視野検査と言うのは「もどかしい位に非常に感度が低い検査」
なんですね。
分かりにくいので、具体的にPPGの症例を見ながらお話をしましょう。
これはある患者様の目の視神経をOCTという機械で解析したものです。上の図の左側が右目の神経の状態を示しているのですが、良く見ると下側に色が赤いところがありますね。これはその部分の視神経が減ってきていることを示しています。この状態で視野検査をしましたが全く正常でした。患者様は同時に高眼圧症と言って眼圧が非常に高い状態だったのですが、治療を希望されなかったのでそのまま様子を見ることになりました。。。。。。
さてこれが同じ患者様の 2年半後の写真 です。赤い部分が少しだけですが明らかに広がっていますね。 視神経が更に減ってしまった のです。ただ この段階でも視野検査はまだ完璧に正常 です。でも眼圧は25前後(正常値は10~21mmHg:単位の読み方はミリメートル水銀柱)と非常に高い状態が続いていました。眼圧が高いと視神経が非常に痛みやすいこと、またこの2年半での視神経の減り方を考えると今後数年以内に極めて高い確率で視野異常が出てきて「どこからどう見ても立派な緑内障」に移行するであろうこと、これが仮に私自身の目だとしたら絶対に目薬を使うことを説明したところ、治療開始を希望されたのでこの患者様は眼圧を下げる緑内障点眼を開始することになりました。
ただこのPPGをどの段階から治療開始とするか?については今のところ 明白な決まり がありません。1人1人の患者様と個別に丁寧に相談しながら決めると言うことになります。ただ、私自身の考えを言えば、 PPGは積極的に治療を開始すべき であると思います。
なぜなら 緑内障は進行すれば失明することもあり、しかも一度発症してしまえば「決して良くなる事は無い」怖い病気だから です。 進行傾向が明らかなのに、近い将来に視野が欠け始めることが分かっているのに、「その日が来るまで、ただひたすら座して待つ。」などということが良い選択だとはとても思えない からです。
このように医学の進歩と言うのは、様々な複雑で難しい問題を引き起こすことがあるんですね。
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