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2005.07.10
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火事と密室と、雨男のものがたり

~講談社ノベルス~

 八木剛士が通う川崎市立商業高校の敷地内で、その学校の生徒が首を吊って死んでいた。雨でぬかるんだ地面には、一人分の足跡しか残っていなかった。自殺の可能性が濃厚だと見られていたが…。二ヶ月前にも、生徒が殺されたばかりである。小田渚は、不安に襲われていた。
 同じ頃-。町で、火事が多発していた。めったに雨がふらないこの町で、火事が起こったときには、雨が降る…。
 八木と松浦純菜も、火事に遭遇した。火事の家の中に取り残された少年。八木は、火の中へ入っていき、彼を助ける。このときも、その後に、雨が降った。
 火事。その現場でしばしば見られるという男。松浦は彼に興味を持ち、八木とともに彼に接近していく。

 松浦純菜さんと八木剛士さんのシリーズ二作目です。八木さんはいじめられっこで、いじめの描写が生々しくて、前作でも重たかったのですが、やはり本作も重たかったです。別の人物もいじめにあっていて、その描写が生々しくて…。正直、しんどかったです。他者のせいにして、いじめられている人のせいにして、自分のいじめの行為を正当化する。本作の中で八木さんたちが言っているように、彼ら・彼女らはどうしようもない馬鹿だと思います。ただし、いじめに限らなくても、松浦さんが指摘しているように、人は自分の至らなさを他人や社会のせいにしたがる傾向があります。責任を追及していくと、堂々巡りでどこまでもさかのぼっていって、そして後世にもひきづっていくでしょう。主治医に何度も指摘されたことです。Aが、親の敵、と言って、Bを殺す。Bの子供Cは、親の敵と言ってAを殺す。 Aの子供は、親の敵と言ってCを殺す。Cの親族は、恋人は、親友は…。堂々巡りです。実際には、世の中こうはなっていません。この循環は、たたれています。けれども被害者、あるいはその周辺の人物の受けた苦しみが完全に癒えてしまうということはきっとなくて、意識には登らないとしてもきっと残っていて。不条理ですね。
 また話が飛んでしまいました。ミステリとして読めば、足跡のない密室の謎の解明、ということになるんでしょう。他にもいろんなミステリとしての要素はあるのでしょうが。けれども、やはり本作も、ミステリとして読んだ、という感じではありません。少なくとも私は本作を読んで、いろいろと考えさせられました。面白かったです。前作とつながりが深いので、『松浦純菜の静かな世界』を読んでから、この本を読む方がよいでしょう。

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Last updated  2005.07.10 12:47:30
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