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2005.10.23
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バラ迷宮

~講談社ノベルス~

「サーカスの怪人」「天竺大サーカス団」でおよそ30年前に起こった怪事件。サーカスでは、「人間大砲」という見世物があった。子供を大砲に入れ、天井の的に飛ばす。そして、宙に張った網の上に、子供が落下する、という手品だった。その際、衆人環視の中、網の上にとつぜんバラバラ死体が出現したのだった。
 コメント。衆人環視の中、いかにバラバラ死体が現れたか。そのトリックが本作の根幹であって、他の部分(動機の裏付け)など、弱い部分はあります。そこは蘭子さん自身も、「事件の要素が全て割り切れたわけではない」と弁明していますが。なので、謎解きに重点をおいたミステリとしては若干ものたりませんが、そこは、サーカス団という、いわば「異人」たちの世界を舞台とし、独特の雰囲気を伝えてくれている部分で、補われているかと思います。「自己」と「他者」。興味深い問題です。自分の研究の中に、他者認識という観点からの切り口もとりいれていきたいところです…と、これは本作とは全く別の話ですが…。
「変装の家」裕福な未亡人が、親類を探し、一人の若い娘が見つかった。未亡人は彼女と、孤児だった彼女を満州から日本に連れ帰ってきた者たちに、崖の上の家を与えた。その家で起こった殺人事件。被害者から電話があった、ということで、未亡人は警察に電話。しかしその時間までに降り積もっていた雪には、足跡はなかった。崖の上の家には、被害者の死体があるだけだった。
 コメント。雪の密室ものです。このトリックはなかなか面白いですね。
「喰顔鬼」R湖畔付近で、4人の男女が殺され、顔面あるいは頭部を破壊されるという事件が起こっていた。蘭子と黎人は、R湖畔付近の洋館に住む画家の友人、津村氏とともに、画家のもとを訪れる。しかしそこでも殺人は起こった。入浴中の津村氏が、密室状況で殺されたのだ。死体に、首から上はなかった。
 コメント。密室殺人です。「変装の家」はともかく、こういうトリックは、あんまり好きじゃないです…。結局へぇ~ってだけなんですよね。なんで二階堂きょうだいや刑事は殺されなかったのだろう、など、ツッコミどころはありますね。感想に、批判的意見が増えてきてしまった気がします…。
「ある蒐集家の死」ホテルの一室で、男が殺された。男と毎年そのホテルで出会っていた五人の男女。ある理由から、誰もが男を殺す動機をもっていた。被害者が残したダイイング・メッセージが、容疑者の絞り込みを多少複雑にした。

「火炎の魔」人体の「自然発火」による死。。それが、黎人の後輩の友人の家族に、何度か起こっていた。予言では、次は自分が死ぬことになる-。黎人と蘭子への依頼者の姉は、そう言って怯えていた。しかし、事件は起こってしまう。密室状況の中で、その女性は、焼け死んでしまった。
 コメント。この短編集の中で、一番面白かったです。ここまでくると、ミステリというより、うんちくの部分で楽しむ感じですね。冒頭で、蘭子さんが過去にあった人体の「自然発火」の事例を紹介してくれるのですが、そういう話を私は大好きですし。「なんでそんなに事例を知ってるんだ?」とツッコミが浮かんだのですが、ちゃんとワケもありましたし。
「薔薇の家の殺人」20年前、《薔薇の家》で起こった、ある女性の毒死。黎人は《薔薇の家》の女の子の家庭教師となるのだが、その叔母にあたる女性は、自分はその事件の犯人の子供なのだといって、身ごもった子供を産むことをためらっていた。蘭子は、20年前の事件を再検討する。
 コメント。衆人環視の毒殺事件です。トリック自体はくだらないといえばくだらないのですが、たしかに盲点でした。「やられた!」という感じですね。

 久々の再読です。
 全体を通して。どの短編も、トリックに重点をおいています。専門的な知識が必要なトリックは批判される傾向があるかと思います。本書の中にもいくつかそうしたものはありますが、それはミステリとしてというより、雑学として役に立つ、というスタンスで読めばいいかな、と。さほど感動するようなお話もなかったですし。もっとも、ガチガチのミステリが二階堂さんの作風かと思いますので、そういう作品として読むには面白いです。
 ミステリに夢中になりはじめた頃は、こういうトリックものは大好きだったのですが…。





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Last updated  2005.10.23 12:50:00
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