のぽねこミステリ館

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2005.12.21
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図書室の海

~新潮文庫~

 10編の短編が収録された短編集です。一編ずつ、簡単な紹介とコメントを。

「春よ、来い」入学式、卒業式。桜の季節、二人の少女。デジャヴュの物語。キーワードを列挙すると、こんな感じでしょうか。正直、うまく説明することはできません。不思議な物語でした。

「茶色の小瓶」総務部に所属する「私」が新入社員歓迎会の会場へと向かう途中、事故が起こった。野次馬たちの中から、一人の女性が出てきて、怪我した男性を応急処置をした。「私」は、彼女が総務部に新しく入ってきた人だと知った。看護学校を出て、看護師を目指していたという彼女が一般企業に勤めているのはなぜなのか。「私」は彼女に興味を持つ。
 ホラーだと感じました。「茶色の小瓶」の中身よりも、「私」(?)にかけられる社員たちの疑いの目、それを生んだきっかけの部分が怖かったです。

「イサオ・オサリヴァンを捜して」東南アジアの戦場で、際立った存在だったというイサオ。「私」は、彼を知る人々を訪ね、彼のことを調べていく。
 すみません、よく分かりませんでした。最近、私の理解力が低下してきている気がします…。

「睡蓮」睡蓮の下には、綺麗な女の子が埋まっている-。二人の兄のどちらからか、「私」は聞いていた。「私」が「汚い女の子」かどうか品定めするように見る長男。「私」と楽しく遊んでくれる次男。「普通」の家庭と自分の家庭が違っていることを自覚していた「私」だったが、ある日から次第に恐怖に襲われるようになる。


「ある映画の記憶」波に囲まれる岩。取り残された女。映画と、実体験で、似たような情景を見ていた「私」。実体験では、叔母が死んだ。奇妙な点が残されたままだった。
 海からつきでた岩の上。着物が乾いていたのに、叔母の死因は溺死だった。ミステリ・タッチの短編です。考えてみればミステリとしては分かりやすいと思うのですが、過去に見た映画との絡め方がよかったです。サークルの影響でしょうか、最近読み方が変わってきた気がします…。

「ピクニックの準備」こちらは、あらすじは省略します。ピクニック、夜に歩く…。どうも聞いたことがあるなと思ったら、案の定、『夜のピクニック』という恩田さんの別の作品の前日譚だそうです。これは背表紙に書いていたことです。最近私は、背表紙の紹介すらもよく読まずに本編を読んでますので、小さなことから楽しめます(自分の言葉が意味不明です)。えっと、気になります、続き。『夜のピクニック』も、文庫が出たら買うことになりそうです。

「国境の南」むかしよく通っていた喫茶店。ある事件が起こってから、その喫茶店は営業を終えたが、あらためてそこにくると、また喫茶店になっていた。その喫茶店で働いていた女性、加代子のことが思い出される。
 ちょっと読み返したのですが、人称代名詞を使わないタイプの一人称スタイルですね。「自分が…だと思う」というかたちはありますが、「私」などの一人称がありませんでした。加代子さんの行動を、いかに理解するか。他人の心をそもそも理解できるのか、という疑問は当然あるわけですが(どんなに「君の気持ちがわかる」と言ったところで、本人の気持ちをあますことなくそのまま感じることは他人にはまず不可能でしょう)、一見奇異と思える彼女の行動を、語り手は考えていきます。怖い、とも思います。不思議、よく分からない、とも思います。でもどこか、加代子さんの行動も、私は決してできないと思いますが、十分にありえることだろう、と感じました。

「オデュッセイア」あらすじは省略します。ココロコという、都市(?)は、いつの日からか、歩けるようになっていました。多くの住民とともに移動するココロコ。旅の途中には様々な出来事があります。そしてラストは…。なんとも余韻を残す感じです。こういうの、SFですよね。私は観ていないのですが、「ハウルの動く城」を連想しました。

「図書室の海」私は主人公になれない-そう自分に言い聞かせて生活する、高校三年生の関根夏。彼女と親しい後輩の克也が、高校の伝説となっているサヨコをこっくりさんのように呼び出す企画がある、と教えてくれた。夏は、なんとかそれをとめようとする。
 …というんで、『六番目の小夜子』の後日譚です。『六番目の小夜子』の内容を覚えていないので(いま自分のメモを読み返してみましたが、ほとんど思い出せません)、なんともいえないです。本好きな先輩が借りた本を、探して自分も借りていく-。『耳をすませば』を連想してしまいました。少女漫画かなにかみたいに、という記述もありましたし、恩田さんも意識されているのかと思いました。

「ノスタルジア」あらすじは省略します。数人の男たちが、懐かしい話を、順順に語っていきます。ふいに一人称の文章に変わり、さらに暗転。ふしぎな物語でした。最後から二番目の段落が印象的でした。

ーーー
全体を通して、やはり私はミステリが好きなのでしょう、「ある映画の記憶」が印象に残っています。





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Last updated  2005.12.21 19:58:33
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