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2007.06.21
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~講談社ノベルス、2004年~

 御手洗潔シリーズの中編です。表題作の前に、ボーナストラック(?)として、短編「シアルヴィ館のクリスマス」も収録されています。
 では、内容紹介と感想を。

 1982年秋。『占星術殺人事件』を解決して間もない頃の御手洗と石岡の馬車道の事務所に、高沢秀子という一人の老婦人が訪れた。
 彼女は、クリスチャンで、毎年、11月の第4木曜日には教会でバザーがあるという。ところが、今年のバザーでは、彼女の友人の折野郁恵と、その息子夫婦に異変が起こったという。
 朝はよく晴れていたのに、午後から雨が降り出すと、彼らは顔面蒼白になった。郁恵は倒れてしまい、救急車が呼ばれたが、息子たちは同伴せず、教会の向かいにある花壇を掘り始めたのだという。彼らは、十字架がなくなってしまった、大変なことをしてしまった、と言っていたという。
 こういった話をした後、高沢秀子は帰ろうとした。彼女本人としては、単に雑談をしにきたつもりだったのだ。ところが、彼女に御手洗は言う。「これは大事件ですよ」。
 郁恵が持っていたという、セント・ニコラスのダイヤモンドの靴は、埋められた鞄には入っていなかった。しかし、犯人たちは、決して靴を手に入れていないという。靴はいったいどこに行ったのか。


 ずいぶん季節外れですが、昨日(一昨日)『ロシア幽霊軍艦事件』を再読したこともあり、同様の装丁の本書も再読したくなったのでした。こちらも、2004年に感想を書いているのですが、不本意な記事ですので、書き直したくなったというのもあります。
「シアルヴィ館のクリスマス」は、既に御手洗さんがウプサラ大学の教授になり、記録者もハインリッヒになっている時期の話。エカテリーナ2世の経歴、日露関係などが語られ、セント・ニコラスのダイヤモンドの靴が、どういう経緯で日本に入ったかが語られます。
 本編は、クリスマスにふさわしい物語です。私利私欲のかたまりで傲慢な折野夫婦にはいらだちを覚えますが、御手洗さんがからかってくださるので、多少はすっきりしました(笑) 2004年に書いた感想でも、「数字錠」(『御手洗潔の挨拶』所収)を連想したということを書いていますが、ある種の境遇の人々への御手洗さんの優しさには胸をうたれます。
 靴は靴としても、美紀ちゃんにとっては、御手洗さんたちと遊園地で遊んだことが、とても幸せな記憶として残ることでしょう。彼女が描いた絵本も良かったです。
 素敵な物語でした。





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Last updated  2007.06.21 09:30:34
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Re:島田荘司『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』(06/21)  
yasukun0402  さん
温かみのあるいい物語ですよね。 (2007.06.21 22:36:14)

Re:島田荘司『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』(06/21)  
王道名なし  さん
ヘフレレ名義でトラックバックさせていただきました。
日本は欧米と違って、クリスマスストーリーの定番って無いですよね。
音楽は毎年流れるのが結構あるのになぁ。

(2007.06.22 10:19:15)

yasukun0402さんへ  
のぽねこ  さん
コメントありがとうございます。レスが遅くなってすみませんでした。
御手洗シリーズは、ときに、割とストレートに御手洗さんの優しさが描かれていて、こういう物語を読むとあたたかい気分になります。 (2007.06.23 07:23:15)

王道名なしさんへ  
のぽねこ  さん
コメント&TBありがとうございます。
日本の作品の、クリスマスの定番…。本当ですね、思い浮かびません。
欧米だと、ディケンズの『クリスマス・カロル』でしょうか(笑) (2007.06.23 07:25:10)

Re:島田荘司『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』(06/21)  
torezu  さん
こんばんは TBさせていただきました。
本作品は、本当に御手洗さんの優しさが光る、心温まるお話でした。
御手洗潔の挨拶でも、犯人の男性にクリスマスに贅沢をさせてあげる御手洗さんが描かれていたように記憶していますが、あちらも心温まるお話でした。
島田さんの小説はラストが良いですね…w (2007.06.23 18:54:01)

torezuさんへ  
のぽねこ  さん
コメント&TBありがとうございます。
「数字錠」は心に残る短編です(笑) 本作にも、「数字錠」に見られた優しさがあって、温かい気分になりました。
3枚目の手紙というクリスマスプレゼントは、ダイヤの靴よりも印象的だったように思います。ラストも印象的でしたね。 (2007.06.23 22:57:55)

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