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2007.07.13
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殺人鬼

~角川文庫、昭和51年(1976年)初版~

 金田一耕助シリーズの短編が4編収録された作品集です。
 まずは、それぞれの内容紹介を。そして、感想を。

「殺人鬼」探偵小説家、八代竜介が夜道を帰っている途中、女に声をかけられる。後に、加奈子という名前だと分かるが、その女は、義足の男にあとをつけられているようだった。後日、彼女が血相を変えて八代のもとを訪れたが、そのときも、義足の男がつきまとっているようだった。義足の男は、最近世間を騒がせている殺人鬼なのだろうか…。何かが起こるだろうと心配しているところに、ついに事件が起こる。加奈子の同居人の男が殺されたのだった。さらに、八代自身も何者かに襲われてしまう。

「黒蘭姫」デパートの宝石売り場に、黒いベールで顔を隠した女がやってきた。不幸にも、そのとき売り場にいたのは新人の売り子。ベールの女が万引きをしたのを発見すると、あわて売り場主任に伝えるが、さらに不幸なことに、主任もまた新しく配属されたばかりの男だった。主任が女を事務所に呼ぼうとすると、女は主任を刺し殺した。デパート支配人は、万引きの常習犯であるベールの女を知っていた。しかし、今度の事件の犯人は、いつもの女性ではない…そう信じる支配人は、金田一耕助探偵事務所を訪れる。

「香水心中」1959年(?)8月。金田一耕助は、大手化粧品会社の社長・常磐松代の依頼で、迎えの上原省三の車に乗り、軽井沢に向かった。彼は少々無理を言って、等々力警部も同行した。こちらは、いわば純粋な休暇のつもりだった。さて、一同が軽井沢についた翌日、松代は、金田一への依頼を取り下げる連絡をよこす。気が滅入った金田一と警部だが、数時間の後に、あらためて依頼がもちかけられる。彼女の長男・松樹が、人妻と心中しているように思われる事件が起こったのだった。しかし松代は、息子は心中したのではなく、殺されたのだと主張する。

「百日紅の下にて」1946年9月。戦争のために、片足に義足をはめた男―佐伯一郎が、自分の家に戻ってきた。妻が愛していた百日紅の花が咲いていた。彼のもとに、復員者ふうの男が訪れた。戦友の川地からの伝言を伝え、佐伯も川地も関わった事件に関して話をするためであった。佐伯の妻―由美が自殺し、その一周忌。佐伯は、自分が留守にしていた間に由美のそばにいさせた四人の男を呼んだ。5人で酒を飲んで過ごしていたとき、男が急に苦しみだして、死んだのだった。現場の状況から、結局、男は自殺したのだという結論で落ち着いたが、川地は、それは事件の真相ではないと考えていたという。

ーーー


 本作の中で興味深かったのは、「黒蘭姫」事件で、金田一先生がついに事務所をかまえていることですね。京橋裏にある、古いビル―三角ビルディングの最上階、特にみすぼらしい五階に、その事務所があります。事件の年代が明記されていないのが残念ですが、解説の中島河太郎さんによれば、比較的初期の金田一シリーズの短編だそうなので、それほど新しい時期のことではないと思います。
 とまれ、本書も楽しく読むことができました。

*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2007.07.13 06:57:17
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