のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

×

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2008.02.27
XML
筒井康隆『やつあたり文化論』
~新潮文庫、1979年~

 エッセイ集です。
 ところで、私は筒井さんの作品はいろいろ読んできましたが、エッセイ集を読み始めたのはここ1ヶ月ほどのことです。小説を読んでいる時点で、ものすごいどたばたの、言ってみれば馬鹿馬鹿しいような作品から、七瀬三部作のような、ただただすごいと思わさせる作品、「時をかける少女」など涙を誘われるジュヴナイル、『虚人たち』『残像に口紅を』などのように実験的な純文学作品など、はばひろい作品を書いておられることから、筒井さんはものすごく頭の良い方なのだろうと思っていました。ドタバタを読む限りでは、うーむと思わされる部分もありますが、エッセイにふれてみて、筋の通った常識人なんだということがあらためてよく分かりました。
 そして、エッセイでも、その特徴は強烈な毒でしょうか。

「教育ママの精神構造」は、子どもの教育ばかりにうつつを抜かす「教育ママ」の弊害は明らかであるが、それを教育ママに説いたところで無駄であると論じた一編。彼女たちは、教育ママの弊害について見聞きしたとしても、それは自分のこととは思わない、と筒井さんは指摘します。私は、「教育ママ」と関わりがないので、実態はよく分かりませんが、ニュースなどを見る限り、この指摘は的を射ているのだろうと思いながら読みました。
 「塾と学校の亀裂」も、子どもの学力ばかり気にする親たちの存在から起こった弊害を指摘しています。個人的なことですが、こうした教育関連の話は特に興味をもって読みました。
 関連してもう一つ、「欠陥学習参考書」。たとえば国語の問題で、「にしからたいようがでた」という文章は、文章として良いか悪いかという問題があり、この答えが×というのはおかしい、というのですね。現に、そういう言い方も存在するわけですし、これは国語の問題ですから。そういえば、私もこういうひっかけ問題(単なる悪問?)にふれたことがあるような覚えも…。
 そういえば小学校の頃、理科の授業で、教師が望むこと以外のことを答えて、クラス中が笑ったことを思い出しました。私が答えたことも事実として間違いではなかったのですが、うーむ…。こういうところから理不尽さを学ばされるわけですね。



 その他、付箋をはった気になった箇所について、いくつかメモしておきます。

「フォニィ落語」では、観客を侮辱するタイプの落語について論じているのですが、ここでは日本人の性質についての批判が展開されています。たとえば、飲み会などで展開される、上司による部下の侮辱。部下は、それはあくまで冗談だとして笑わなければならず、侮辱している上司は、これは冗談だよということを示すための笑顔だけは崩さず、もし不快感を示されれば、冗談で言っているのに怒るとは何事か、と逆襲できる…。これは横道の話ですが、こういう情景に筒井さんが不快感を覚えるということに、とても共感しました。

「ホーム・ドラマの罪」は、『言語姦覚』所収の「ホーム・ドラマ」で同様の趣旨の論を読んでいますが、それでも興味深く読みました。文学的に誇張された、日常生活で実際に用いるのは危険ともいえる過激なことばが、ホーム・ドラマの中では当たり前のように用いられており、同時にドラマはきわめて現実性を重んじているため、視聴者もその過激なことばを用いるようになる。それも、不適切な場面でも用い、そのことが不適切とも思わなくなる…といった批判です。
「何気ないことばでさえ場合によっては人を傷つけることもあるくらいだから、過激なことばは充分兇器になり得る。ことばの恐ろしさを知らぬ人間ほど恐ろしいものはない」。

 たとえば、助詞一つで、言葉が相手に与える印象はがらりと変わるのですから、本当に気をつけなければいけないですね。

ーーー
 タイトルには「やつあたり文化論」とありますが、さほど「やつあたり」という印象は受けませんでした。
 本書の最後の方では、何人かの作家さんについての作家論も収録されていて、興味深いです。なんだかんだでまた読んだことがありませんが、本書に収録された小松左京論を読んで、小松左京さんの作品がさらに気になり始めました。
(2008/02/23読了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.02.27 06:42:31
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(た行の作家)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: