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2009.10.21
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筒井康隆『虚航船団の逆襲』
~中公文庫、1988年~

 筒井康隆さんのエッセイ集です。
 最近ばたばたしていて、読了から感想を書くまでに時間があいてしまったので、いつにもましてとりとめのない記事になりそうですが…。
 本書は、大きく次の4つのパートに分かれます(連番は便宜的に付しました)。

1部.「悪意」への期待
2部.現実と超現実の居心地よい同居
3部.座長口上
4部.虚航船団の逆襲



 1部では、「学歴偏重時代」という風刺色の強いエッセイが好みです。特に、「 ぼくが不思議でしかたがないのは、塾へやる金があればどうして学校をもっとよくしようという方に金を使わないのか、どうしてそういう方向に母親たちの頭が働かないのかということである 」という一文は痛快でした。
 そしてとても興味深かったのは、「辞書の馬鹿げた利用法」というエッセイです。『翻訳の世界』という書物に、「辞書での遊び方」というテーマで書かれた文章だそうですが、この中で筒井さんは「等」を使った都々逸を作っていらっしゃいます。辞書をぱっと開いたページに出てきた言葉で遊んでみる、という文脈で出てくるのですが、この都々逸が面白いのです。そして、「これくらいのことがすらすらできなければ文章のプロではない。特に翻訳家には欠かせぬ能力であろう」とおっしゃっています。私は職業にしているわけではありませんが、訳を作りながら読み進めている外国語文献もあります。そのなかで、自分の語彙のなさを痛感しているのですが、この一節を読んで、あらためてその思いを強くしました。ですが、訓練あるのみ、ですね。

 2部では、筒井さんのいろんな書評を読んできた中で気になっている南米の作家たちに、あらためて興味がそそられます。

 3部では、役者としての筒井さんの活躍にふれられます。筒井さんは小説もものすごいですが、舞台もものすごいのだろうなぁと思わされます。

 4部での、書評への逆襲もとても痛快でした。そして同時に、私もブログというかたちで本の感想や紹介を書いているわけで、自分のスタンスのあり方についても考えさせられました。基本的に作品への批判的なことは書かないことをモットーにしていますが、ときには書いてしまうこともありますから…。

 そんなこんなで、全体的に興味深く読めた1冊です。

(2009/10/14読了)





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Last updated  2009.10.21 06:50:28
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