佐藤彰一『剣と清貧のヨーロッパ―中世の騎士修道会と托鉢修道会―』
~中公新書、 2017 年~
『禁欲のヨーロッパ』 『贖罪のヨーロッパ』 に続く、佐藤彰一先生による修道制の通史の第3巻です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
はじめに
第一章 十字軍遠征と騎士
第二章 騎士修道会の戒律
第三章 国際金融と所領経営―テンプルとホスピタル騎士修道会
第四章 国家としての騎士修道会―ドイツ騎士修道会
第五章 レコンキスタの旗の下に―イベリア半島の騎士修道会
第六章 ヨーロッパの都市化と富の行方―托鉢修道会の出現
第七章 聖フランチェスコの革新
第八章 異端告発と学識者―ドミニコ修道会の役割
第九章 修道院の外で―ベギン派が映すもの
おわりに
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引
―――
前2作同様、最新の研究成果を踏まえた概説書です。
細かい内容については省略しますが、興味深かった点のみメモしておきます。
騎士修道会、托鉢修道会について、それぞれの内容に入る前に、背景として、前者は十字軍の状況などを、後者は都市の状況などを論じており、きれいな構成だと感じました。特に第六章では、拙ブログでも紹介した アンリ・ピレンヌ ( 佐々木克巳訳 ) 『中世都市-社会経済史試論-』(創文社、 1970 年) と、私は未見ですがフルヒュルスト ( 森本芳樹他訳 ) 『中世都市の形成―北西ヨーロッパ―』(岩波書店、 2001 年)を比較し、中世都市についての研究の進展が示されており、興味深く読みました。(ピレンヌは「都市の復活」を唱えたのに対し、後者はむしろ連続的な発展を指摘している、といいます。)
また、第五章で、イベリア半島の騎士修道会に一章が割かれているのも興味深かったです。良質な修道院(修道会)の概説として、 P・ディンツェルバッハー/J・L・ホッグ編(朝倉文市監訳)『修道院文化史事典』(八坂書房、 2008 年) がありますが、この『事典』でも、イベリア半島の騎士修道会にはほとんどふれられていません。
本書前半は騎士修道会を扱っていますが、参考文献一覧に 橋口倫介『騎士団』(近藤出版社、 1971 年) が挙げられていないのが意外でした。だいぶ古い文献であり、注もない概説書であることが原因でしょうか…。ただ、騎士修道会についての概要をつかむには、『騎士団』は便利な一冊だと思います。
繰り返しになりますが、最新の研究が踏まえられており、参考文献一覧を眺めるだけでも勉強になります。
と、とりとめのないメモになってしまいましたが、このあたりで。
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