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2008.11.29
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(Peter Dinzelbacher und James Lester Hog (Hg.), Kulturgeschichte der Christlichen Orden in Einzeldarstellungen , Alfred Kroner Verlag Stuttgart, 1997)
~八坂書房、2008年~

 ヨーロッパの主要な修道会の歴史を概観するのにうってつけの1冊。これはすごいです。
 まず、本書の構成を掲げておきます。

ーーー
まえがき(シュトゥットガルド アフルレッド・クレーナー出版社)

序章 修道制と文化

 II.近世以降(ジェイムズ・レスター・ホッグ;小川宏枝訳)
第1章 ベネディクト会(ウルリヒ・ファウスト;石山穂澄/朝倉文市訳)
第2章 シトー会(ペーター・ディンツェルバッハー;平伊佐雄訳)
第3章 カルトゥジア会(ジェイムズ・レスター・ホッグ;梅津教孝訳)
第4章 アウグスチノ修道参事会(フーベルト・ショプフ;谷隆一郎訳)
第5章 プレモントレ会(ルトガー・ホルストケッター;富田裕/朝倉文市訳)
第6章 病院修道会(ユルゲン・ザルノフスキー;梅津教孝訳)
第7章 騎士修道会(ユルゲン・ザルノフスキー;岡地稔訳)
第8章 フランシスコ会とクララ会(レオンハルト・レーマン;伊能哲大訳)
第9章 ドミニコ会(マイノルフ・ロールム;山本耕平訳)
第10章 カルメル会(ゲルダ・フォン・ブロックフーゼン;山崎裕子訳)

第12章 イエズス会(アンドレアス・ファルクナー;富田裕訳)
第13章 東方正教会の修道制(ヴォルフガング・ヘラー;谷隆一郎訳)

参考文献
主要修道会の体系的分類表
主要修道会略号表

監訳者あとがき
ーーー

 それぞれの章について、歴史的展開、会則・組織・服装、霊性は基本的な共通項目として書かれていて、その他にも文学、音楽、社会科学、経済活動などなどの項目があり、それぞれの修道会の成果が紹介されています。そして各章の末尾には、それぞれの修道会に関する参考文献目録もあり(日本語文献の紹介も豊富)、概観をつかめるだけでなく、さらに研究を深める上でもとても便利な1冊です。
 序章など、I節II節あわせて50頁弱ですが、それだけで修道制のはじまりから今日の状況までが(もちろん簡単ではありますがポイントはしっかり押さえた上で)概観できて、読み始めからわくわくしました。
 また、原書には一切註はないそうですが、邦訳版では適宜註も挿入されています。特に、それぞれの修道会が日本にいつ入ってきたかとか、どの会派が入ってきたとか、日本との関わりについて補足されて、こちらも興味深いです。

 内容自体についてはつっこんだことは書けませんが、メモ程度に思ったことや興味深いことをつらつらと書いておきます。

 まず、普段から感じていたことですが、フランシスコ会を紹介する日本語文献は割合数があるのに、ドミニコ会のそれはあんまりないなぁ、ということ。本書の8章と9章の参考文献目録を見てもそれは明らかです。いずれも同じ時期に生まれ、当初は説教活動に力を入れていたという共通点はあるのですが(一方、創始者の性格はずいぶん違うようにも思いますが)。

 意外な有名人の名前や業績も知ることができて、楽しかったです。たとえば、避雷針は、アメリカのフランクリンとは無関係に、プレモントレ会修道士ポロコープ・デヴィシュが発明、使用していたとか。「メンデルの法則」で有名なグレゴール・メンデルはアウグスチノ隠修士会、現在のブルノの修道院長であったとか。これは完全に自分のメモですが、聖人伝の史料集『アクタ・サンクトールム』 ( Acta Sanctorum )はイエズス会で編纂されているとか。
 こんな感じで、上に書いたようなそれぞれの項目について、その会に所属する修道士たちの業績がいろいろと紹介されていて、興味深いです。

 イエズス会は日本でもなじみ深いですが、この会について特に興味深かったことも書いておきます。それは、そのイエズス会にとって演劇が非常に大きな重要性をもった、ということです。学校劇も行われたそうです。このことに関して著者は、「イエズス会学院の生徒たちは、教室で学び取った内容を、魅力的で人を引きつけるような方法で大勢の観衆のまえで表現することが出来るようにならなければならなかった」(470頁)といいます。なるほど、まさに彼らはどんどん海外に出て宣教活動をするのが重要な使命だったと、合点がいきました。

 第10章のカルメル会は、ミシェル・パストゥロー 『悪魔の布』 の第1章で紹介されています。というのも、パレスチナ起源のカルメル会は、もともと縞模様の服を着ていました。ところが西欧では、縞模様は軽蔑された図柄だったため、彼らが縞模様の服をきてやってきたことは大きなスキャンダルだったというのですね。
 本書には図版も豊富に含まれているのですが、カルメル会修道士が縞模様の服を着ている絵も何枚か紹介されていて、興味深かったです。

 図版に関連して、いくつかの修道会の修道院については見取り図が紹介されていて勉強になります。修道院の外観の写真もきれいですし(裏表紙にはモン・サン・ミシェル修道院の回廊の写真がありますが、かなり魅力的です)、図書室の写真もかっこよいです。修道院の書架から大型の本を取り出してぱらぱらと眺める… 素敵でしょうね…。

(2008/11/27読了)





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Last updated  2008.11.29 07:31:30
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