二階堂黎人『名探偵の肖像』
~講談社ノベルス、 1999 年~
二階堂さんによる、ルパンものなどのパスティーシュ作品やノンシリーズの短編、ディクスン・カー論などが収録された、バラエティに富んだ作品集です。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「ルパンの慈善」
女子修道院に伝わる燭台をちょうだいすると、修道院に手紙が届く。差出人の名前はルパンだった。予告されていた日の夜、ガニマール警部たちは、燭台が保管された部屋が密室状態になったのを確かめた上で、部屋に続く扉の前を厳重に警備していた。しかし、ルパンが現れる騒ぎの後、燭台は密室から消えており、ルパンも姿を消してしまっていた。
「風邪の証言」 莫大な財産をもつ小説家が殺害された。動機をもつ3人の甥たちのうち、犯人である可能性があるのは1人だけ。しかし男は、殺害の時間にアリバイをもつという証拠である写真を提示する。果たして巧妙なアリバイトリックの真相は。
「ネクロポリスの男」
1年に1度だけ覚醒させられ、活動ができる男は、ロボットに娼婦を召喚させる。娼婦は男に、この牢獄から助け出してあげると助言するが…。
「素人カースケの世紀の対決
」古今東西のミステリを集めた高級《読書ラン》でデートしていた学生のカースケは、悪名高い評論家が来店し、不愉快な話をしているのを聞き、評論家を挑発する。二人は、ミステリの一節だけを見て作品名を当てる勝負をすることとなる。
「赤死荘の殺人」
殺人予告の手紙を受け、赤死荘を訪れたマスターズ警部たちだが、手紙に書かれていたとおり、建物に入ったはずの3人のうち、1人はいなくなっており、1人は倒れ、血まみれで立っていたのはマスターズもよく知る男だった。不可解状況の中で起きた事件の相談を、メリヴェール卿に持ち込むが…。
「対談 地上最大のカー問答」
芦辺拓さんとの、ディクスン・カーについての議論。
「随筆 ジョン・ディクスン・カーの全作品を論じる」
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1999
年に買って読んでいたようなので、もう 20
年ぶりくらいの再読となります。どの作品も楽しく読みました。「ルパンの慈善」は密室の解明もルパンの動きもスマートで良いです。「風邪の証言」は、被害者の名前が木湯環馬(きゆかんば)、甥たちの名前が青井久利(きゅうり)、奈須(なす)、根木(ねぎ)と遊び心が楽しいです。「ネクロポリスの男」はSF作品ですが、好きな世界観で面白かったです。カースケさんのはいろんなミステリの蘊蓄にあふれ、また軽やかな文体でもあり、最初に読んだときから印象に残っていますし、また好きな作品です。今回も楽しめました。「赤死荘」も不可能状況の真相が好みです。カーについての対談も随筆も興味深く、あらためてカーの作品に当たってみたくなりました。
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