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2019.06.26
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佐藤彰一『宣教のヨーロッパ―大航海時代のイエズス会と托鉢修道会―』

~中公新書、 2018 年~

 修道会の歴史を描くシリーズの第4弾です。本書は、ルターによる宗教改革から、イエズス会を中心とする修道会の海外宣教を描きます。日本での宣教活動も詳細に描かれ、勉強になります。

 本書の構成は次のとおりです。

―――

はじめに

第1章 燃えさかる宗教改革の火の手

第2章 カトリック改革とトレント公会議

第3章 イエズス会の誕生と成長

第4章 托鉢修道会の動き

第5章 イエズス会のアジア進出

第6章 新大陸のキリスト教化

第7章 イエズス会の日本宣教

第8章 日本宣教の構造

第9章 キリスト教の世界化

おわりに

あとがき

参考文献

事項索引

人名索引

―――

 本書では、トレント公会議、そしてイエズス会の誕生といったカトリック側の改革の流れを、「対抗宗教改革」としてルターの影響力を重視して捉えるのではなく、「ルターへの反動より遥に深いところに根ざした根源的な意志に発していた」と考える立場をとります。そのため、2章の標題でも、カトリック側の自発的な取り組みに端を発する「カトリック改革」という語が採用されています。

 以下、興味深かった点、気になった点をメモしておきます。


・イギリス国教会成立の過程で、国王は、ローマ教会の権威の否定を含む宣誓を要求します。これに対して、『ユートピア』を著したトマス・モアなど一握りの者たちは拒否、反逆罪で裁かれ処刑されたそうです (26 ) 。まだ記事は書いていませんが、かつて『ユートピア』を読んだとき、とても面白かったのを思い出します。いつか再読し記事も書きたいです。


・上でも「トレント公会議」と書きましたが、私の手元にある『詳説世界史研究』山川出版社、 1995 年でも「トリエント公会議」の記載となっており、以前は「トリエント公会議」と教えられていたと思います。これは、トレントは北イタリアの都市ですが、神聖ローマ帝国領内にあったことから、ドイツ読みで「トリエント」と書かれることもある、とのこと (49 ) 。最近は現地読みが一般化されてきているはずなので、「トレント」の方が主流になっていくのでしょうね。


・第3章で、「「異端」すなわちプロテスタントとの戦いは、ヨーロッパが主戦場であり、イエズス会士は神学の錬磨と教育に全力を挙げ、効果を見せ始めていた」 (79 ) とあります。一方、私が主に学んでいる 12-13 世紀には、「異端」に神学と教育に力を注ぎながら対抗したのはドミニコ会などの托鉢修道会でした。プロテスタントが広がる頃、托鉢修道会はそれにどう対応したのかが気になりました。( 19 頁では、「托鉢修道会はルターを手本にしようとしていた」とありますが、基本的にプロテスタントに好意的だったのか。托鉢修道会士はトレント公会議にも参加していますが、どういった立場だったのか。)


・第4章。ポルトガルでは、半島内での活動より、大西洋を舞台とした海洋活動に力を注ぐようになっており、その主な担い手はサンチャゴ騎士修道会や主キリスト騎士修道会であったことが指摘されています (105-107 ) 。修道会が海洋活動に積極的に関与していたということからも、修道会も会派ごとに多様だったということがあらためてうかがえました。


・アステカ地域への宣教活動は主にドミニコ会が担ったそうですが、「フランチェスコ会の活動も入り込んでおり、折に触れてこの二つの托鉢修道会は、互いに宣教領域を融通しあって協力したとされている」 (216 ) という指摘も興味深いです。異なる修道会であっても、適宜目的のために協力し合っていたということで、あらためて自分の勉強でも意識していきたい点でした。

 以上、簡単なメモになりましたが、このあたりで。

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Last updated  2019.06.26 21:57:43
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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