
横溝正史『白蠟仮面』
~角川文庫、 1981 年~
横溝正史さんによるジュヴナイル作品。探偵小僧の御子柴進さんと三津木俊助さんが活躍する表題作のほか、2編の短編が収録されています。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「白蠟仮面」
事故によりトラックが棺桶を落とした現場に居合わせた御子柴進は、その際にダイヤモンドのようなものが落ちているのに気づく。密輸事件かと考えトラックを追った進は、悪漢にとらわれ、意識を失う。気づいた進は、マイクで奇妙な言葉を言わされた。後に、悪漢一味のボスが、話題の怪盗白蠟仮面だと気づいた進は、また別の大事件が起こっていたことを知る。宝石王、一柳家の孫娘が、当主を殴る事件が起こっていたのだ。それは、自分がマイクで語ったのをなぞったような事件で…。こうして、御子柴進・三津木俊助と、白蠟仮面の対決が始まる。
「バラの怪盗」 有名なバラの怪盗をモチーフにした劇を行っていた朱美だが、怪盗に欺かれ本当に誘拐されてしまう。朱美の家族に届いた朱美からの手紙には、怪盗が身代金を要求していることが書かれているが、奇妙な誤字も散見された。
男に連れられて、ガラス玉を落としながら歩く女は、何かを訴えているのではないか…気づいた宇佐美慎介は、二人を追い、無事に女を助けた。その後、女の家に電話をかけると、『螢の光』が聞こえ、またにわかにその音楽がとまると何かがたおれる音がした。女の家に着くと、彼女の父親が殺されていて…。
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表題作は怪盗対探偵少年という構図で、特に前半は面白く読みました。終盤はやや疑問に思う展開もあり少し残念。ジュヴナイル作品を続けて読んでくると、「サーカス」「猛獣の脱出」「バルーンでの脱出」といったモチーフが多々出て来るのに気づきます。本作の初出は昭和29年度ということですので、当時でいえば、わくわくするモチーフだったのでしょうね。
「バラの怪盗」は暗号もの。主人公の機転が素敵です。
「『螢の光』事件」は、本書の中で特に好みの作品でした。『螢の光』というモチーフがまず面白いですし、解決も好みでした。
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