金澤周作監修『論点・西洋史学』
~ミネルヴァ書房、 2020
年~
古代から現代までの西洋史における 139
あくまで、西洋史の概説を示すことに目的があるのではなく、歴史学の営みの重要なポイントとしての「論点」を提示し、読者自身に考えてもらうことにポイントが置かれています。
項目ごとに見開き2ページでまとめられていて、その項目の史実(通説)を示したのち、「論点」としてその項目をめぐるこれまでの様々な学説などを提示し、さいごに「歴史学的に考察するポイント」として、論点をふまえた問題提起がなされる、という形式となっています。
本書の主な構成は次のとおりです。
―――
はじめに
I 西洋古代史の論点( 32
項目)
II
西洋中世史の論点( 28
項目)
III
西洋近世史の論点( 29
項目)
IV
西洋近代史の論点( 26
項目)
V 西洋現代史の論点( 24
項目)
欧文参考文献
おわりに
研究者名一覧
人名索引
事項索引
―――
冒頭にも書きましたが、本書に収録された多くの項目では、とりあげた項目をめぐるこれまでの学説を整理し、いかなる論争が繰り広げられてきたかが示されます。一方、わずかではありますが、具体的な学説は提示せず、やや概説的に、その項目にまつわるいくつかのトピックスを列挙するようなものもあったのは、少し残念でした。
なにしろ1項目見開き2ページですから、もっと深く議論を知りたい、と思う項目もありました。しかし、まさにそれが本書のねらいなのでしょう。各項目について、見開き欄外に主な邦語文献が示されており、巻末には項目ごとに主要な欧語文献が示されていますので、より深く気になった項目を調べることが可能となっています。(もっとも、本当の本書の趣旨は、「調べる」のはもちろんですが、その先の「考える」なのですが。)
個人的には、古代史の項目の一つ「ブラック・アテナ論争」は、一時期書店で関係する文献の背表紙をよくみていたので、名前は目にしていたことがありましたが、どんな内容なのかを知ったのは今回が初めてで、勉強になりました。専門に勉強している中世史の各項目を興味深く読んだのももちろんですが、ふだんあまりふれない近世史以降の時代についても、色々な項目にふれられることができたのは良い経験でした。
ふだんあまり読まない分野だったり、学説の提示がメインだったりすることもあり、なかなか読み進めることはできませんでしたが、それだけ各項目が濃い叙述だということと思います。
概説書でもなく、西洋史に関する事項をまとめた事典でもなく、あくまで主要な項目の「論点」をまとめたという希有な一冊です。勉強になりました。
( 2020.08.21 読了)
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