有栖川有栖『作家小説』
~幻冬舎、 2001
年~
作家をテーマにした短編集です。謎解き主眼のミステリではなく、ホラーに近いような作品が多いです。
「書く機会 (
ライティング・マシン )
」
は、敏腕編集者が本領を発揮できていないと考える新人作家を秘密の部屋に招待し、名作を書かせる、という物語。ホラーテイストの作品です。
「殺しにくるもの」
こちらもホラーテイスト。あまり有名ではないけれどコアなファンがいる作家にファンレターを出した高校生ですが、彼女にすすめられてファンレターを出した友人が殺されてしまいます。一方そのころ、謎の連続殺人が起こっていて…。あえていえばミッシングリンクなのかもしれませんが、謎解きに主眼はありません。ラストは(不気味ですが)作品としては好みです。
「締切二日前」
締切二日前なのに頼まれていた作品が全く書けていない作家が主人公です。母親に話しながらなんとか進めようとしますが…。ユーモアのある作品。
「奇骨先生」
こちらはホラーでも幻想でもなく、純粋に物語として楽しい一編。地域の作家のもとにインタヴューに訪れる高校生2人ですが、奇骨先生はなかなかの難物で…。久々の再読ですっかり忘れていましたが、今回印象に残った作品です。
「サイン会の憂鬱」
編集者のごりおしで行きたくもない地元でのサイン会に招待された作家が主人公です。こちらもホラーテイストです。
「作家漫才」
傑作。小説であまり売れていない二人の作家による漫才です。作品の書き出しのネタなど、何回読んでも楽しめます。
「書かないでくれます?」
こちらもホラーテイスト。タクシーで聞いたエピソードから傑作をものした作家を待つ運命とは。
「夢物語」
幻想的な作品。ある作家が装置によって夢の世界で生きていくことになります。物語が存在しない世界で、物語により人々から喝さいを受ける彼ですが…。
と、バラエティ豊かな作品集です。
20
年近く前に読んでその後何度か読み返しているはずですが(上にも書きましたが「作家漫才」はさらに何度か読んでいます)、ほとんど覚えていなかったので、今回もあらためて楽しめました。有栖川さんの作品は火村シリーズなどの謎解きが好きなのももちろんですが、 『ジュリエットの悲鳴』
など、ミステリの枠にとらわれない物語も好みなので、本書も好みのタイプの一冊です。
(2021.05.23 読了 )
・あ行の作家一覧へ 芥川龍之介『侏儒の言葉・西方の人』 2024.09.22
青崎有吾『11文字の檻』 2024.08.24
有栖川有栖『日本扇の謎』 2024.08.17
Keyword Search
Comments