泡坂妻夫『 11
枚のとらんぷ』
~創元推理文庫、 1993
年~
泡坂妻夫さんによる第一長編。奇術サークルを舞台にした短編小説集『 11
枚のとらんぷ』になぞらえられてメンバーが殺されたという事件の真相を、小説集の作者にして奇術サークルの会長、鹿川さんが挑むという物語です。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
―――
公民館創立 20
周年記念ショウに、奇術愛好家の素人サークル「マジキ クラブ」のメンバーが登場。それぞれ得意の奇術を披露する中、種になる薬品がこぼれたり、ハトが思うように動かなかったり、子どもたちが騒いだりと、なかなかスムーズにはいかなかった。
最後の奇術では、登場するはずのメンバーの女性がいつまでも現れず、しばらくして、その女性が自宅で殺されているという知らせがもたらされる。
「マジキ クラブ」の会長にして、実際には演技できない特殊環境での奇術をモチーフにした作品集『 11
枚のとらんぷ』の作者の鹿川は、現場の様子を聞き、事件は作品になぞらえて起こされたことに気づく。
事件後、世界国際奇術家会議東京大会に出席した中で、鹿川は事件の真相に近づいていく。
―――
長編の中で起こる事件は、奇妙な状況での殺人事件がメインで、綿密な伏線から解明されていく鮮やかさがすがすがしい作品。
また、作中作の短編集(奇術の種明かしに挑む 11
話)も、それ自体面白いですし、また事件全体の鍵にもなっているという凝った作りになっています。
有名な作品でありながら、なかなか読めずにいましたが、この度読めて良かったです。
良い読書体験でした。
(2022.05.22 読了 )
・あ行の作家一覧へ有栖川有栖『捜査線上の夕映え』 2025.08.11
碧野圭『菜の花食堂のささやかな事件簿 … 2025.08.10
碧野圭『菜の花食堂のささやかな事件簿 … 2025.08.09
Keyword Search
Comments