オスカー・ハレツキ(鶴島博和ほか訳)『ヨーロッパ史の時間と空間』
~慶応義塾大学出版会、 2002
年~
The Limits and Divisions of European History
, Notre Dame, 1962 [
初版 New York, 1950])
著者のオスカー・ハレツキ (1891-1973)
はポーランドの歴史家。ワルシャワ大学を経てカナダのモントリオール大学やニューヨークのフォーダム大学で教鞭をとりました。
本書は、邦題どおり、ヨーロッパ史の時間的・空間的枠組みを定めることを目的としています。その意義をハレツキは、「境界と構成の問題は、それ自体で興味深い問題であるばかりでなく、歴史家に対して、データを体系的に整理するために必要不可欠な枠組みを提示するから」と、強調しています (191
頁 )
。(なお、原題を直訳すると『ヨーロッパ史の境界と構成』。)
本書の構成は次のとおりです。
―――
地図
序文(クリストファー・ドーソン)
凡例
はじめに
第1章 ヨーロッパ史とはなにか
第2章 時間的境界: (a)
ヨーロッパ史の始まり
第3章 時間的境界: (b)
ヨーロッパ史の終焉
第4章 空間的境界: (a)
大洋、海域、島嶼、海峡
第5章 空間的境界: (b)
東部大地峡
第6章 空間的構成: (a)
西ヨーロッパと東ヨーロッパ
第7章 空間的構成: (b)
中央ヨーロッパの二重性
第8章 時間的構成: (a)
中世とルネサンス
第9章 時間的構成: (b)
近代史と現代史
第 10
章 ヨーロッパ史の基本的諸問題
訳注
訳者代表あとがき
年表
索引
―――
構成のとおり、前半でヨーロッパ史の境界を定め、後半でヨーロッパ史内部の構成を見ていきます。
ハレツキは、伝統的な「古代、中世、近代」という区分ではなく、地中海時代(いわゆる古代史に相当)、ヨーロッパ時代(いわゆる中世から近代)、大西洋時代(いわゆる近代以降)という区分を提唱し、それぞれは完全に断絶していくのではなく、次第に移り変わっていくという立場をとります。
空間的には(時代によりその境界は多少移り変わりますが)、ロシアは基本的にヨーロッパとはみなさない立場をとります。また、中央ヨーロッパの二重性という第7章の題からもうかがえるように、ヨーロッパ全体を4つ(西ヨーロッパ、中央ヨーロッパ西部、中央ヨーロッパ東部、東ヨーロッパ)に分けるという考え方を提示します。
刊行当時に読んだので、 20
年ぶりの再読。
ポミアン『ヨーロッパとは何か』
を読んだので、同じくポーランドの歴史家ハレツキの本書を読み返そうと思った次第でした。
また本書は、大学2年生で無事に西洋史研究室に入れたとき、最初の英語購読で原著を読んだという、思い出深い著作です。固有名詞を調べまくったり、地図とにらめっこしながら読んだのを懐かしく思います。
本書は、同じく慶応義塾大学出版会から刊行されている ラスカム『十二世紀ルネサンス』
同様、詳細な訳注が付されていて、索引も事項、地名、人名で引けるようになっていて、非常に親切なつくりです。一点、たまたま気づいたのですが、訳注 209
( 241
頁)のレレヴェル (1786-1861
年 )
について、「 1930-1931
年の対ロシア蜂起の際には…」以降は、別人の経歴が記載されてしまっているようです(誰かまでは不勉強で特定できず)。
ともあれ、詳細な訳注に理解を助けられながら、時代区分と空間の位置づけについて考えさせられる、勉強になる一冊とあらためて思います。
(2022.11.16 読了 )
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