近藤和彦『イギリス史 10
講』
~岩波新書、 2013
年~
著者の近藤和彦先生は東京大学教授、立正大学教授を歴任され、専門はイギリス近代史です。
本書のあとがきによれば、岩波新書の 10
講シリーズの企画の段階から携わっていらしたようです。
さて、本書の構成は次のとおりです。
―――
第1講 イギリス史の始まり
第2講 ローマの属州から北海の王国へ
第3講 海峡をまたぐ王国
第4講 長い 16
世紀
第5講 二つの国制革命
第6講 財政軍事国家と啓蒙
第7講 産業革命と近代世界
第8講 大変貌のヴィクトリア時代
第9講 帝国と大衆社会
第 10
講 原題のイギリス
あとがき
索引
―――
なにぶん通史ですので、章ごとの紹介は省略し、印象に残った点を中心にメモしておきます。
まず、第1講では、「イギリス」という用語の定義が興味深いです。とりわけ、日本語での漢字表記に込められた意味などの考察が印象的です (5-8
頁 )
。
第2講では、「英語を話す人いう意味のイギリス人…の出現を記録」したのが、修道士ベーダ (d.735)
であることを指摘する際に、「イングランドあるいはイギリスという「国」が形成されるより前に、複数の要素の交わりから、英語とイギリス人がうまれた。その逆ではない」と論じられている点が印象的でした。
このように英語の展開にも目配りされていて、第3講では、住民の古英語と、ノルマン征服による古フランス語の導入により中期英語が形成されることが指摘されます。たとえば牛は野良では ox
や cow
ですが、食卓にのぼると古フランス語の beef
とよばれ、「農民のメシは古英語の meal
だが、領主のご馳走は古フランス語の dinner
である」などの具体例も面白いです (45
頁 )
。
第4講では、ジェントルマンの定義 (88
頁、 Sir
との違いなど )
や、エリザベス女王の称号における「等」の意義を論じる部分 (95-96
頁 )
が勉強になりました。
第5講では、トーリ党とホウィグ党について、かつてはそれぞれ王権党、民権党などと訳されましたが、「じつはどちらも王権を尊重し、内戦を忌避する国教徒である」とし、それぞれの特徴を解説している部分 (138-139
頁 )
が勉強になりました。
第6講以降も、特に近現代については、日本との関わりにも目配りされていて、不勉強な私には勉強になります。
あらためて、約 300
頁の新書で「イギリス」の歴史の要点を通史的に描くだけでなく、それぞれの時代の生活や言語・文化、日本との関係まで幅広く手際よくまとめられていて、勉強になる1冊です。
(2026.01.27 読了 )
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