New Zealand 虹の立つ国へ

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入院していたlb40が先日無事に退院して来た。
大きな手術をしたために、マダマダ本来の体力に戻るにはかなりの時間を要するようだが、WBにとって「心友」の帰宅は何よりの事である。
そんなこんなでNew Zealand Walkerは現在更新が一時中断したままだが、こちらの「虹の立つ国」の方は随時更新して行きたい。

では久しぶりの更新です。


<<第35章「大学」
第36章「海外における日本語教育 I 」

さて、先の章でも少し触れたが、此処では海外生活における日本語教育について書いてみよう。
海外における日本語教育機関と言うと、真っ先に思い浮かべるのは日本人学校、或いは日本語補習校であろう。
両方は時々混同されているようだが、「日本人学校」 とくに教育財団がバックアップする正式な日本人学校は、基本的に全日制で生徒は現地校に通わず、日本人学校に通う事になる。
これは、あくまでも日本に帰国する事を目的とした家族の子弟が通う学校で、早い話が日本の学校がそのまま海外に出来たと思えば理解しやすいであろう。

勿論、授業内容文部省の指定すところの教育大綱にそって日本の学校と同じ内容で日本語で行われる。

一方「日本語補習校」というのは、その名の通り日本語で日本語の補習授業を行う学校である。
普通は現地校が終わってからの開始で通う子弟も日本人学校と同じように基本的には日本に帰国する子弟が通う。
ただ、こちらはその運営にあたり「日本人学校」のような日本の文部省の全面的な支援は受けられず、経営母体は大抵が現地の日本人会あるいはそれに順ずる組織がそれを行っている。
先生も頼めば教育財団から日本人の先生を派遣してくれるが、その先生達の給料は現地の組織が支払う事になる。

実はNZにも日本人学校がある(今もあるかどうかはわからないが)。
ただしオークランドではなく首都のWellingtonにある。
これなども日本のお役所仕事の最たるもので、実際のニーズを無視してただ「日本人学校」を作ればよいと言った行政の結果である。
確かにWellingtonはNZの首都であるが、経済の中心あるいは実際の国の中心はオークランドである。
日本企業は何処に多く進出しているのか?
Wellington勿論No.

経済の無いところに企業は店を出さない。

私が補習校の理事であった頃、このウェリントンの日本人学校の生徒は4人で先生が三人いたと思う。
何たる無駄と思ったが既得権は如何ともしがたく、ただ指を咥えてみているしかなかった。
教育財団にも実情を伝え、補習校にも先生を派遣してくれるように頼んだが、木で鼻を括ったような返事しか来ず、頭に来たものだ。


海外に住む日本人子弟への日本語教育には多大なるニーズがあるのは当然の事と思う。


ここでそのニーズを生む人々を区分してみよう。


1) 日本からの駐在者の家庭。
NZに限れば、以前に比べれば(1)の駐在者の数は確実に減っている。
その理由は日本企業からNZを見た場合、さほど重要でないマーケットになった、あるいは国になったと言えるであろう。
同時に駐在者も若年化が進み、子弟の年齢も大分若返った。
また、その反面企業の国際化が進んだのでもしかするとある地域(別の国々)では日本からの駐在者は増えているかもしれない。

2) 永住者の家庭
依然海外永住あるいは移住を目指す人々にとってNZは大変魅力ある国であるようだ。
これは何も日本からだけではなく、世界の他の国々からも見ても同様らしい。
最近のニュースでもそれは顕著でNZは住んでみたい国のTop3に入っている。

3) 国際結婚の家庭
さて最後は国際結婚組。
これは最近特にジワリジワリと増えているケースである。
我々の年代では国際結婚組は極少数であったが、最近は若いカップルが目立つ。
オークランドの各地域で日本人の母親達が主催する幼児サークルなど増えているが、参加者の殆どは国際結婚組の子供達であるという。


これら大別した3のグループに共通する事あるいは要望は大きく括ると「子弟に日本語教育を施したい」と言うことになる。
しかし、これがそれぞれのグループに降りてくると、それぞれ微妙にその内容が変化してくる。

<<第35章」「大学」/a>

第37章「海外における日本語教育 II」>>



<<第36章「海外における日本語教育 I」


第37章 「海外における日本語教育 II」
では次にそれぞれのグループのニーズの内容について触れてみよう。

1) の駐在者では、何れ日本に戻るのであるから「日本の教育」をキャッチアップしておく事は必須であると言ってよい。
当然「日本の教育」が第一義になる。
この「日本の教育」とは文部省の指定する指導要領に沿った日本の学校で行われる文部省指定の教科書を使って行われる教育である。

一方補習校に通ってくる駐在者の生徒達はどうであろう。
彼らは普段は現地校に行き、現地校が終わってから補習校に通ってくる事は先にも書いた。
ただ、此処で問題になるのが現地校と補習校の成績あるいは勉強のどちらかを優先するか?である。
日本に帰る事が約束されているのだから、補習校の勉強を優先させるべきだと誰しもが思うが、ここに落とし穴がある。
日本に戻った場合に日本の学校へ通知される、あるいは提出されるのは補習校の成績でなく現地校の成績なのである。
よって、「日本の教育」に集中するあまり現地校での勉強をおろそかにすると、後でしっぺ返しが来る事になる。

そして此れは全駐在家庭の親が潜在的に希望している事だが「せっかく英語圏にきているのだから、子供達が英語を喋れるように育てたい」と言う希望である。
此れは親としてはもっとも希望だと思う。
しかしこれが結構大変で短期駐在などでは到底無理だといわざるを得ない。
もっとも、最近は駐在任期が終わっても帰国するのは父親だけで、母親と子供は駐在先に残って高校、あるいは大学まで出てから帰国するケースなどもあるようだ。
これらのケースが増えたのは各学校で帰国子女枠の新設、拡大などが進み日本における厳しい受験戦争をある程度回避できるシステムが成立って来たからであろう。


2) の永住者の家庭においてはどうだろうか?
実はこのグループの家庭からのニーズが一番幅広いと言ってよい。
自分達の希望で日本を後にしてきたのが永住者のグループである。
このグループに大別される希望は、
(A) 子供が英語を不自由なく使えるようにさせたい。
(B) 同時に「日本語」も不自由なく覚えさせたい。 いわばバイリンガルに育てたい。
日本語を忘れさせたくない・・・等である。
という非常に贅沢な希望だと言って良い。
しかし、よく見て欲しい。
此処のグループの希望は「日本語教育」であって「日本の教育」ではないのである。
書けばたった一字の違いだが、この違いは海と山ほどに違うのである。

そして此処にも落とし穴がある。
それは子供達の能力の問題である。
このグループの子弟はためらい無いく現地校に通い、現地の子供達と一緒に一日の内8時間以上英語を使って過ごしている。
その後補習校に来るのは駐在者の子弟と同じであるが、なぜかこのグループの子供達は補習校でも英語を使っている。
補習この先生が「英語ではなく、日本語で話しましょう!」と指導しても余り進歩はない。
そして先生方が必死になって文部省検定の教科書を使って日本語の授業をしても、一向に日本語が上達しない。
上手く喋れないというのではなく、教科書の目指すところの意味を理解できない、あるいは汲み取れないのである。
勿論喋る語彙も限られている。
これは日本語を使う範囲が限られている事を示している。
誤解の無いように書くが、決して先生方の教え方が悪い訳でもないし、生徒の頭が悪いわけではない。

この状態はどの年齢層にもある事ではなく、特に低年齢層(小学校低学年)の子供達に顕著である。
中・高学年より上は日本での教育の下地があるので、比較的容易に日本語教育をキープできるが、こちらで小学校をスタートしたような年齢の子供達に日本語を教える事は大変な努力と忍耐を要する。

ただ永住者の子弟全員がそうである訳ではなく、中には優秀な子供もいて日本語・英語を「読んで書ける」まで上達させた本当のバイリンガルの子供もいるのである。
断っておくが、残念ながらこれは我が息子達の事ではない。
我が息子どもに限って言えば、上の息子は喋るのは問題ないが、やはり語彙が不足しているのは否めない。
読むのは中学生程度までか。
書くのは・・・・?

下の息子に至っては、両親に話しかけるのも英語で我々がそれに日本語で応えるという有様である。
以前その様子を見た友人が目を丸くして驚いていた。
日本語と英語で立派に会話が成り立っているからだ。
不思議と言えば実に不思議な光景だが、我々本人達にはいたって普通の事なのである。
その友人曰く、「なぜお互いそこまで英語と日本語が解るのに、どちらかの言葉でしゃべらないの?」
それが出来たら苦労はないのである。
聞けても喋れない このジレンマが単一言語しか喋れない友人には理解できなかったようだ。

実はこうなったのは、我々両親がある時点で日本語教育を諦めたというか、それに潜む盲点に気がついたからではあるのだが、その点については章を改めて書こう。




翻って中・高学年以上でNZに来た場合、最初は現地校での授業についてゆくのに困難を覚える。
特にこちらに来て間もない頃は、英語も判らずクラスでも殆ど「お客さん状態」と言っても過言ではない。
ただこれも時間の問題でこちらの生活に慣れるに連れ英語も上達してくるので、この問題も徐々に解決される。
それでも最低2-3年は掛かると見てよいのではなかろうか?


さて(3)の国際結婚組のニーズはどうであろう。
彼らのニーズの理想とするのはバイリンガルで永住組と同じであるが、現実問題として子供達が日本の両親(おじいちゃん、おばあちゃん)と話が出来るように「日本語をキープしたい」と言うのが一般的な所ではなかろうか?
事実、補習校の国際部でもそのニーズにそって教育方針を作成したのを覚えている。

しかし、このグループの子弟に「日本語」を教えるのが正直一番難しい。
なぜなら学校は勿論両親の片親がKiwiなので当然家庭内の会話が全て英語で行われる。
よって殆ど24時間英語の中にいる子供達に「日本語」をイチから教える事になる訳である。
また、このグループの特色として国際結婚家庭の子供達は年齢層が低いことが挙げられる。 下は乳児からと言ってよい。

私が理事を引き受けた当時のオークランド日本語補習校はこれら三つのグループのニーズが漠然と存在した混沌として学校だったのである。

<<第36章「海外における日本語教育I」



第38章「海外における日本語教育III」>>







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Last updated  2007.07.08 14:29:14
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