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芥川龍之介が大正9年に発表した『南京の基督』に『歯車』『或阿呆の一生』を融合させて映画化した作品。1920年代の中国・南京。ひとりの日本人作家(レオン)とまだ幼さの残る娼婦が出会う。少女・金花(富田)は、一点の曇りもない純真さで神を信じていた。やがて少女の一途さ、純真さに惹かれていった岡川は、金花との愛の日々の中ですさんだ心を癒し、忘れかけていた創作意欲を高める。しかし父親の訃報をうけ、岡川は南京を去ることになる・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お世話になっているベティさんから、おすすめしていただいた作品です。切なくて・・・とても好みの作品です。ベティさん!ありがとうございます大好きな映画にジャン=ジャック・アノーの「愛人/ラマン」というのがあって、主演男優は同じくレオン・カーフェイ。似た雰囲気を、この映画にも感じました。どちらも切なくキュンとなる映画ですね~敬虔なクリスチャンである金花を、富田靖子が熱演しています。言葉の壁など感じさせない見事な中国人の役、透明感ある演技に脱帽でした。そしてその彼女を愛するようになる日本人・岡川にはレオン。僅かしか日本語のシーンがないので、こちらもさして違和感なく、叶わない愛に苦しむ作家を好演していました。役名の岡川龍之介――というのは、原作者のもじりなのかもしれませんね。それとも原作どおりなのでしょうか。日本に妻と子がありながら、金花を見初めて愛し合うようになる岡川は、たしかに身勝手なのだけれど、純粋に深く彼女を愛する姿に嫌悪感は湧きません。後ろ髪を引かれる思いで日本へ帰ってからは、金花が梅毒に侵されたことを知って、いても立ってもいられなくなるのです。彼が戻ってくる日だけを思って、弱っていく体で健気に生きている金花がとても切ない。病気を移されたことで仕事もさせてもらえず、田舎へ帰っても貧しさから娼館へ戻ってくるしかない彼女があまりに悲しくて・・・神を無心に信じる、学のない彼女があまりに痛々しい。この辛さはラース・フォン・トリアーの「奇跡の海」ととても似ている気がします。純真であるがゆえに壊れていく、自分を大事にできない女性たち。愛されるのは幸せだけど、悲劇しか待っているものはないのです。スローモーションを多用して、幻想的にかつ文学としての格調が失われていない素敵な作品でした。官能的に描きながらもプラトニックさを感じるというところに、「ラマン」に共通した魅力を感じました。富田靖子のヌードがとっても綺麗です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 トニー・オウ 製作 大里洋吉 、レナード・ホー 原作 芥川龍之介 脚本 ジョイス・チャン 音楽 梅林茂 出演 レオン・カーフェイ 、富田靖子 トゥオ・ツォンホワ 、ジェシカ・チャウ ラオ・シュン 、中村久美 (カラー/100分)
2007.05.31
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偏見や差別意識がごく普通に存在した50年代の、コネチカット州。キャシー・ウィテカーは誰もが認める理想の主婦。一流企業に勤める夫フランクの貞淑な妻としても、良き母としても、地域社会から一目置かれていた。だがある日、残業のフランクのもとへ夕食を届けに行った彼女は、そのオフィスで見てはならない夫の秘密を知ってしまう。以来、心の安定を欠いたキャシーを、新しくやってきた黒人の庭師レイモンドが気遣うようになり、2人は次第に打ち解けていくのだったが…。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 観終わって血がざわめくいい映画でした。こんなに良質の作品に出会えるのは、年に何本もありません。この年、アカデミー作品賞を獲ったのは「シカゴ」。スケールからいってもそれは当然かもしれないけれど、私はこちらのほうが好きです。作品賞でなくとも、せめて主演女優賞は獲ってもおかしくない気がするのに・・・それくらい絶賛したいジュリアン・ムーアの好演でした。ヴェネチア国際映画祭では女優賞を受賞しています。ヴィットリオ・デ・シーカの「ひまわり」に感動した時のよう。現代版「ひまわり」のようなラストシーンには圧倒されるばかりで(オージュだったのかもしれません)、この作品にもぴったりはまりますね~いい映画でした! ハッとするほど美しい自然の情景、色・いろ・色。冒頭から一気にエルマー・バーンスタインのノスタルジックな音楽に引き込まれて、ラストまではあっという間でした。良妻賢母で美しいキャシー。彼女はそれだけじゃなく、優しさも美しい心も持っています。しかし、順風満帆な人生の半ばにして突然、夫が同性愛者であることを目撃して知ってしまうのです。ガタガタと崩れはじめる理想の生活。病気を治したいと望む夫に、静かに治療の様子を見守り続けるキャシーは、何処にそんな力が?というくらいの、忍耐と寛容とでもって尽くします。文句ひとつ言わず、夫を信じて、パーティの用意や友人との付き合い、家事も育児もすべてこなしてきたのに・・・・抗うでもなく泣き叫ぶでもなく、目を開いて心を開いて、正面から素直に向かってきたのに・・・運命は悲劇のほうへと転がってゆくのです。 キャシーと夫のフランク 仲睦まじく見えたのだが・・・ 黒人の庭師・レイモンド そんな彼女の良き理解者となるのが、黒人の庭師レイモンドでした。まだ偏見のある時代に、互いに心を開いて語り合うようになる二人に唯一の希望を見る・・・緑の小道で散歩したり、黒人の店でダンスしたり、絵画を観たり。さりげない素敵な場面がいっぱいです。幸福な明るさから、超ド級の悪夢(夫が同性愛者だったこと)へ、美しい自然の中へ。物語は滑るように流れていくけど、最後まで主人公が素晴らしい女性であることだけは変わりません。ブルジョアな暮らしを当たり前のようにしてきて、どちらかといえば依存してたキャシーが、ひとりの黒人男性と知り合って、悲しい出来事、夫との離婚を経て、もっと素敵に生まれ変わってゆく物語。精神的に自立していくのを見つめながら、本当に応援したい思いでいっぱいになります。レイモンドとの未来は、ご覧になってからのお楽しみですね~ひとつひとつのエピソードも、短尺ながら丁寧に描かれています。情感たっぷりで、切なさはさりげなくて、音楽も素晴らしい―――完全ノックアウト、こういう映画大好きです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督・脚本 トッド・ヘインズ 製作 ジョディ・パットン 、クリスティーン・ヴェイコン 音楽 エルマー・バーンスタイン 出演 ジュリアン・ムーア 、デニス・クエイド デニス・ヘイスバート 、パトリシア・クラークソン (カラー/107分)
2007.05.30
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エイミ・タンの全米ベストセラー小説の映画化。ロサンゼルス。仲のよい4人の女友達は麻雀卓を囲み食べておしゃべりする‘ジョイ・ラック倶楽部’で、それぞれの喜びも幸運も分かちあってきた。アメリカに移住して30年。それぞれの過去の苦労が、仲間の死をキッカケに回想される。母と娘、二つの立場から見つめた8人の愛と葛藤を描く。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 時々コメントを残してくださるさくらさんの、最近のおすすめ作品を観ました。母娘の強い絆、思い出される苦しかった過去、拓かれる未来――たくさんのエピソードが、膨らむごとに切なくて泣けました。万人に同じではなく、女性に圧倒的に支持される作品ではないでしょうか。4組の母と娘。どの挿話にも感情移入してしまいます。30年前、まだ女性が女性らしく生きにくい頃の中国で、4人の女性たちは4様の人生を歩んでいました。裕福な家へ嫁ぐことを幼い日から決められていたリンド(ツァイ・チン)、結婚後夫の度重なる浮気で喪失し我が子を殺めてしまったインイン(フランス・ニューエン)、強姦されたあげくその男の第4夫人となるしかなかった母を持つアンメイ(リサ・ルー)、そして戦火を逃れるために双子の赤ん坊を捨てたスーユアン(キュウ・チン)。それぞれに祖国と時代に運命を翻弄され、新天地アメリカへ渡ってきた4人。彼女たちは、自分の娘にはあのような自由も救いもない暮らしをさせたくはないと、望みを託しアメリカ人として大切に育ててきました。しかし、その娘たちが大人になった今。同じように人生につまずき、自由を謳歌できず、愛を手に入れられずにもがいているのです。たとえ時代は変わっても、生きる国は変わっても、過去と現在は一本の道で繋がっています。この親にこの娘あり。自分の過去を語り聞かせることで、後悔のない今を生きて欲しいと願う母親たちの姿に胸が切なくなりました。娘たちの悩みが、愛をうけて変えられてくところに涙が出ました。30年前の中国と、現代のロサンゼルスでは全然違う。けれど生きるうえでの悩み種はなくなるわけがなく、変わらない。どんなに恵まれていても。 他界したスーユアンの娘ジューン(ミンナ・ウェン)が、メインの語り部。母が置き去りにした双子の姉妹が見つかったという知らせを受けて、母の故郷中国を初めて訪れ、家族に巡り会うまでが縦糸となっています。そこに4家族の挿話を織り交ぜて。男性の存在感はきわめて低い作品です。その代わりに、ふたつの世代の女優さんたちが見事な演技でそれぞれの個性を発揮していました。まずは時代背景があり、そしてこれは、中国のお話でもあります。中国の仕来たり、気質、そういったものに触れながら、良くも悪くも不幸の後ロサンゼルスで幸せを手にした4人の女性とそんの娘たちの物語りでした。さくらさん、おすすめありがうございます ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 ウェイン・ワン 原作 エイミ・タン 脚本 エイミ・タン 、ロナルド・バス 音楽 レイチェル・ポートマン 出演 ミンナ・ウェン 、キュウ・チン 、チャイ・チン タムリン・トミタ 、フランス・ニュイエン 、リサ・ルー ロザリンド・チャオ (カラー/138分)
2007.05.29
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“職業の為に汚されない、内容の多い時間を有する上等人種であり、社会からはみ出した余計者” の主人公。大助は、裕福な父や兄から援助を受けて、立派な家に住み、働くこともせず悠々自適な日々を送っている。飄々と生きる上等人種で、世間をばかにしたところのある、けれど穏やかな好男子である彼が、3年ぶりに再会することになる、親友の妻・三千代によって、抗いがたい思いの深さに道を外れてゆく物語―――。時は明治時代。どろどろしたものは一切なく、清すぎるほどの思いがあるだけ。静かで、格調高く綴られる、許されぬ恋の行くえが描かれる。何不自由ない大助でも、現実にはひどく無力だ。依存して好き勝手に生きてきたからこそ、人に頼ることができない立場におかれるのは、自業自得といえるかもしれない。お金さえ自由にはならない、情ない男。仕事上の責任を取り、借金を抱えて東京へ戻ってきた親友の妻・三千代の姿を見て、大助は心痛めるが、心臓を患い、体を壊した彼女を、どうしてやることもできないのだ。大助は、何度も過去を悔い、何度も義姉に頼み、お金を工面してもらうのだが、厳格な父親がすすめる縁談話に従うよりほかなくなってしまう、、、。世間体などかなぐり捨てて、愛する女性のために覚悟を決めるまでの物語なのだが、原作には、ここからさらに続きがある。親友と妻の裏切りを知った平岡は、引き下がる態度を示しながらも、病状の悪化した三千代を家に閉じ込める。ふたりは再会することのないまま、三千代は息をひきとってしまう。この時、事実を知り失意のまま電車に乗り込んだ大助は、狂いかけた精神で鮮烈な赤い光を見る―――この幻想的な原作のラストが強烈。映画でも電車内でのシーンは、3度、効果的に取り入れられている。幻想と象徴。回想と無声の情緒、たくさんの場面が心に染みる。存在感ある音楽も素晴らしく、原作に負けない良作だった。 監督/ 森田芳光 原作/ 夏目漱石 『それから』 脚本/ 筒井ともみ 音楽/ 梅林茂 出演/ 松田優作 藤谷美和子 小林薫 笠智衆 中村嘉葎雄 (カラー/130分)
2007.05.24
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風は強いけれど、よく晴れたいい天気。地下鉄の駅まで自転車を走らせ、道立近代美術館へ行ってきました。6月3日までということで、平日にも関わらず、会場は沢山の人で溢れかえっていました。 弘法大師空海(774~835)は、平安時代初期に中国(唐)へ渡り、インド伝来の本格的な密教を初めて日本に伝え、真言宗をひらいた人物として良く知られています。書家、詩人、教育、土木など諸分野に活躍し、日本文化の向上に尽くした空海は、「お大師様」と親しみをもって呼ばれ、皇族から庶民に至るまで各時代にわたり広く信仰されました。本展では、高野山の諸寺院に伝わる国宝18点、重要文化財56点を含む総計100点の作品を紹介しています。(美術館HPの解説より)左から・・・国宝「五大力菩薩像 無畏十力吼菩薩像」 平安時代(10~11世紀) / 国宝「聾瞽指帰(ろうこしいき)」(上巻部分) 弘法大師筆 / 「深沙大将立像(じんじゃだいしょうりゅうぞう)」(部分) 圧倒されるんじゃないかと思っていましたが、意外と淡白な鑑賞をしました。人が異様に多かったせいもありますが、雰囲気を堪能する半ば、人に押され弾かれ・・・もっと長居してくればよかったです。そしてもっと早い時期に行っておけばよかった。空海の自筆の著作や、運慶作の立像や、快慶作の孔雀明王像、曼荼羅の数々が興味を惹きました。曼荼羅のなかには、染料に頭の血が混ぜてたというものもあって驚きです。空海については、展示が始まった頃に、新聞で特集していた3回連続の記事を読んだだけの知識でしたが、偉業をすこしでも知ることができたと思います。書の見事さも。入り口にどんと構える空海の座像は、丸顔で優しげに見えました。左手を捻っているので不思議な感じがします。このスタイルも密教独自のものなのでしょうか。曼荼羅にも手の動きを表した絵がありました。寄木造の像を見るたび、折れそうな細かな部分の繊細な彫りは、神業!と思います。どうして折れないのかと不思議なくらいです。鎌倉時代の運慶の作品には目に玉眼が入っていましたね~。時代を超えて残る名僧の精神に触れて、何気に落ち着く感じがしました。高野山、金剛峰寺いつか行ってみたい地となりました。真言宗とは縁もゆかりもないけれど、わけもわからず密教というものには惹かれます。チベット密教なども。インドから追い出された仏教が、こうして伝わった先で脈々と生きていて、その精神が西洋でも見直されていると聞くとなお更に、誇りを持って見られるような気がしました。めったとない機会に目で触れられて、貴重な経験ができて良かったです
2007.05.23
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伊坂幸太郎の同名ベストセラーを映画化したクライム・コメディ。銀行での爆弾騒動の現場に偶然居合わせた4人の男女。それぞれ風変わりな才能を持った彼らは、事件を阻止したことで図らずも4人が組めば才能を活かせることに気づく。かくして4人は銀行強盗チームを結成、抜群のコンビネーションで次々と成功を収めていくのだったが…。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 続々と映画化されている伊坂幸太郎の原作は、「重力ピエロ」を読んだだけですが好きです。魅力ある主人公の描き方、軽妙な文章が読みやすくて、ありそうでない物語がいい。こちらの原作は読んでいませんが、陽気な雰囲気に早いテンポ、時間軸を入れ替えた展開はなかなか楽しめました。本作も、短尺の92分。「下妻物語」を思い出すようなVFXの使われ方が独特です。多少コミックという感じもして、現実離れした物語によく似合っていました。衣装、小道具、車・・・ビビットな色遣いがこれまたよく似合う。監督が作りたいものがよくわかります。 人の嘘を見破れる成瀬(大沢)、絶対的な体内時計を持つ雪子(鈴木)、生まれつきのスリ名人・久遠(松田)、そして屁理屈まじりの演説が得意な響野(佐藤)。4人は偶然に出会った日から、強盗のチームを組むこととなるのです。しかし、すべてが上手くいっていたある日、銀行で奪った4千万を、突如道ばたで強奪されてしまいます。実は、息子を誘拐されていた雪子は、元夫・地道(大倉)とその黒幕に脅され、身代金として4千万が必要だったのです。唯一彼女に密かに思いを寄せている成瀬だけは、雪子の嘘を見破っていました。あとの二人はがっくり、一度はチームは解散することとなるのですが、、ところが面白いのはここから。再起を懸けた再結成。そこで彼らの儲けを横取りしようとする謎の敵が現れ、成瀬に恨みを持つ謎の根暗男に狙われ、最後の仕事(強盗)現場は先の読めない大パニックと化すのです。騙し騙され、さほどスリリングでないにしても、小さなサプライズあり、どんでん返しあり。目の離せない犯罪ものコメディでした。成瀬と雪子の恋の行くえは? 誰が最後に笑うのか?結末は、ご覧になってからのお楽しみですね~本作がデビュー作という松田龍平の弟・松田翔太は微妙でした・・・上手いとはいえない感じ。個人的な好みでは大沢たかおも苦手なので、メンバーの半分がしっくりこなかったわけですが、佐藤浩市・鈴木京香の好演でカバーされていた気もします。脇役は個性派揃い。みなさん癖のある人を癖のある演技で、こちらも好演怪演しています。それにしても、大杉漣さんは、邦画を観るたびにいつも登場しますね~~300の顔を持つ男とは~頷けます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 前田哲 原作 伊坂幸太郎 『陽気なギャングが地球を回す』 脚本 長谷川隆 、前田哲 、丑尾健太郎 音楽 佐藤“フィッシャー”五魚 出演 大沢たかお 、鈴木京香 、松田翔太 佐藤浩市 、大倉孝二 、加藤ローサ (カラー/92分)
2007.05.22
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ハロウィン前夜。全米各地のユニークな場所を取材するため旅を続けていた4人の若者が、とある田舎町へとやって来る。給油のため立ち寄ったガソリンスタンドで、店のオーナーからこの地に伝わる殺人鬼の伝説を聞いた一行。教えられた場所へと向かう途中、車が立ち往生し、ヒッチハイクをする美女に助けられた4人だったが、彼女の家は殺人鬼一家だった・・・!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 昨日に続きホラー映画です。意外な感じ~と、好きですね~と、両方のコメントを頂いた血みどろホラーです実は上映時間が短いのもミソでした。レンタルショップへ行ったものの、この頃ちょっと忙しいので、なるべく短尺の映画を選んだ結果であります。こちらはDVDのパッケージがずっと気になっていた作品。おバカなホラーかと思ったら・・・なんとも悪趣味~な映画でした!後味が悪い悪趣味の一言につきる感じです。 生け贄なの?! 伝説の殺人鬼が施す脳手術実験「悪魔のいけにえ」に似ていると思ったら、そのリメイク「テキサス・チェーンソー」にヒントを得て作られたそうです。ロブ・ゾンビは音楽家でこちらが本編初監督。それにしても名前がゾンビって・・・・表紙のおじさんは主人公ではなく、殺される4人と変態殺人鬼一家が主人公。非常にオーソドックスでありますが、映像や音楽、小道具などは凝っていました。ただ、ドクロとかハロウィンとか、怖がりどころがずいぶんとずれていたので、全くといっていいほど怖くないのが玉に瑕。最初、(表紙の)おじさんが出てきた時は一瞬期待しましたが、脇役と知って大コケ。それともこれもサプライズだったのか?いくら短尺でもだれてしまいました。シチュエーションが「テキサス・チェーンソー」と一緒でここまで怖くないと、映像が凝ってたとしても物足りなさが残ります。一家はわざわざハロウィンに何がしたかったのでしょう。伝説の殺人鬼との繋がりも、よくわかりません。家族のイカレタ面々がなんとも中途半端。殺す理由がまたおかしくて、猟奇殺人?快楽殺人?芸術?生け贄?ワケがわかりませんそれにしても、取りとめがない。オマージュ的なホラー映画なので笑って許されてしまいますが、怖さを求めると失敗しそうですのでご注意を。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督・脚本 ロブ・ゾンビ 製作 アンディ・グールド 音楽 ロブ・ゾンビ 、スコット・ハンフリー 出演 シド・ヘイグ 、ビル・モーズリイ 、シェリ・ムーン カレン・ブラック 、マシュー・マッグローリー (カラー/89分)
2007.05.21
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ある日突然、謎の原因で死者が甦り、人間を襲ってはその肉に喰らいつき、襲われた人間もまたゾンビと化す。果てしのない増殖を繰り返し、もはや生き残った人間はごく少数にまで減り、人間たちは要塞都市を築き、ゾンビの侵入に怯えながら生活していた。そんな中、ゾンビにある驚くべき変化が起こっていたのだった―――。 ゾンビ生みの親、A・ロメロによる最新作。主人公は傭兵たち。金持ちや権力者が優雅に暮らしている傍で、スラムにはそうでない人々が沢山暮らしている。そんな二分に分かたれた要塞都市のむこうで今、ゾンビたちが知恵を持ち始めていた―――!ただエグイだけじゃない、ちょっぴり哲学的チックであるのが、最近のゾンビのよう。初のゾンビ映画である『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は「死ぬまでに観たい1001本」に選ばれているので、近く是非観てみよう。 知恵を持ち、少しずつ道具を扱えるようになったゾンビたちは、決して超えられないと思われた河を渡り始める。生肉を求め迫り来る。仲間意識を持つあたりも、かなり不気味だ。ゾンビを殺すには頭を狙え―――!とにかく超リアルな、血と生肉の乱れようは当然ながらグロイ。肉体が砕け散るシーン、銃で殺しまくるシーンは、PG-12では早い気がするほど。あまりにも豪快な殺戮シーンと、今までなかった食べられるシーンに溢れる内臓系のショックな映像はキモチワルイ。怖いものみたさで、みてしまうのだが。要塞都市の欲深な建設者の運命、彼を欺き街を出ていこうと目論む主人公の傭兵たち、そしてゾンビが迫るスラム街の人々は助かるのか・・・。それぞれの運命はご覧になってからのお楽しみ。『ドーン・オブ・ザ・デッド』は手をぶらんとして無心で歩くゾンビが全力疾走するのが新しかった。今回は知能を持つのが新しい。ストーリー性と怖い演出でいえば確実に前者が勝っているけれど、こちらは映像が見所といえそうだ。役者さんも前者のほうが好き。● ● ● ● 監督・脚本/ ジョージ・A・ロメロ 製作/ マーク・キャントン バーニー・ゴールドマン ピーター・グルンウォルド 音楽/ ラインホルト・ハイル ジョニー・クリメック 出演/ サイモン・ベイカー デニス・ホッパー アーシア・アルジェント (カラー/93分)
2007.05.20
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マリオネットが生きる世界。すべての生き物は、遥か上空へと伸びる糸で天と繋がっていた。ある時、栄華を誇るヘバロン王国で、年老いた国王カーロはこれまでの所業を悔い、心清き若き王子ハルに国の平和を託す遺書を遺し自死する。しかし王位を狙う弟ニゾは遺書を破り捨て、敵対する一族ゼリスの仕業と見せかけ、王子を復讐の旅へと送り出すのだった…。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 人形劇が好きなので楽しみにしていた映画です。天から伸びる糸=命を繋ぐもの、として普通なら見えないふりをするはずの糸が、上手に物語と絡んでいます。2004年デンマークの作品ですが、日本公開にあたって庵野秀明監督が手を入れていることもあり、吹き替え版しかないのが残念。ヘバロン国と森の民ゼリス。長きにわたって争ってきたふたつの国は、褐色のゼリスと白肌のヘバロン、まるで黒人・白人を思わせます。もともと住んでいた民を殺し、その土地を奪うという過去は、歴史の縮図かもしれません。褐色でも白でもない、金色の肌をもつ王ハルを主人公に、新しい世界を切り開いていくまでの物語。復讐の旅、叔父であるニゾの策略、ゼリスのジータとの恋。様々な出来事をとおして、父親がなせなかった国の平和をなすまでを描きます。 「冒頭・遺書を書き自害する王」 「嵌められたハルは奴隷として拾われる」操り人形の糸が命である――この設定が面白いですね~たとえば牢屋の壁や国の城壁が上空にあったり、戦いの場面では糸を切られると死んでしまうという、新鮮な驚きが楽しめます。操り人形の世界には独特な魅力がありました。物語はとてもシンプルですが、そこで生きてる人形たちに命は吹き込まれているのを感じます。吹き替えは可も不可もなく、ただ草なぎ君はおしが弱いかも・・・劇団ひとりは流石。ダイナミックさと世界観がいい。ただ川本喜八郎さんの作品を幼い頃からみてきて、どうしても動きの繊細さを求めてしまうのが、物足りなさが残った理由かもしれません。。人形の表情は変わらないのに様々に変化して見える――それは人形劇の素晴らしさのひとつですね~“それぞれの糸はみな天で繋がっている”これが大きなテーマです。人は他人との繋がりがあってこそ生きていけるもの。ジータに教えられて、飛翔する方法を知ったハルは、初めて見えない糸も見える糸も、みんな繋がりあっていることを実感します。そして自分の国が犯した罪も受け止めることができるようになるのです。本編が終って、エンドクレジットが流れ終わるまで、誰も席を立たなかったのは、とても久しぶりのことでした。声優陣のおまけもありましたよ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 アンデルス・ルノウ・クラルン 、庵野秀明(日本版) 脚色 長塚圭史 撮影 ジャン・ウェインク 、キム・ハッテセン 声 草なぎ剛 、中谷美紀 、劇団ひとり 、優香 小林克也 、香取慎吾 、戸田恵子 (カラー/93分)
2007.05.18
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リスボンのスラム街フォンタイーニャス地区。その移民街に住む一人の女性・ヴァンダの部屋を中心に、再開発のために取り壊されようとしているスラム街に暮らす人々の日常を赤裸々に捉えた衝撃のドキュメンタリー。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ポルトガルの取り壊されつつある、スラム街。そこに住むヴァンダの部屋を舞台にした、真実の生活を描きます。監督は、ジャンキーのヴァンダとその家族、そしてスラムに住む人々の生活を、2年に渡ってスラムに住み撮りあげたそうです。 咳こんでは、薬、少し働いてはまた薬。その繰り返し。誰からの救いもなく、住まいさえ奪われていく貧しい移民たちの暮らしは、それでもちゃんと生活感がある。その日をその日を生きてるけれど、悩んだり考えたり不公平を怒ったり、私たちとあまり変わりないとも思えます。ただ貧しく、そのやりきれなさを麻薬でうちゃっているだけ。 痛々しいほど止まらない咳の音が、いつも響いています。肺なんてきっと真っ黒であろうヴァンダは、病に侵されているのかもしれない。これほど肉体を痛めつけても、人は生きていけるのだと、変なところで感心してしまうほど、自分を大事にしないヴァンダ。しないのじゃなく、できないのかもしれない。生きる気力を感じないから、それこそ見ていて楽だけど、ほんとうは若いであろうヴァンダのくたびれた表情と痩せこけた体がとても痛々しいです。切り取られた絵画のように絵になる映像が3時間も積み重ねられていきました。光と影。これは人生にもいえること。まさしく影である人々の、その影に浮かび上がる日々は時に光を帯びる。考えて映し出される色彩のセンスとか、陰影の美しさは一見の価値があると思います。 救いはヴァンダを見つめる母の優しいまなざし、そして野菜たち。八百屋を営む一家のくすんだ暮らしに、鮮やかで新鮮な野菜が彩りを添えていることが、わけもなく救いとなってしまう映画でした。 どんな変化も訪れない淡々としたドキュメンタリーの中に、人の限界が見えます。彼らに‘生きてる意味’なんて答えられないのかもしれない。それでも麻薬にすがってでも生きている人々の暮らしは、果たして競争社会に比べたら楽なんだろうか・・・戦場よりは楽なんだろうか・・・わたしには、ただベッドに寝そべり、薬をやり続ける、終わりのない苦しさが、すごく辛いものとして映りました。ポルトガル発のドキュメンタリー。3時間と長いけれど、見て損はないと思います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督・脚本・撮影 ペドロ・コスタ 製作 フランシスコ・ヴィラ=ロボス 、カール・バウムガートナー アンドレス・ファエフリ 出演 ヴァンダ・ドゥアルテ (カラー/180分)
2007.05.16
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奇才テリー・ギリアム監督が、グリム童話誕生秘話をイマジネーション豊かに描き出したダーク・ファンタジー・コメディ。19世紀のドイツ。兄ウィル(マット)と弟ジェイコブ(ヒース)のグリム兄弟は、各地の村を旅して、その地に伝わる古い物語を蒐集する傍ら、魔物退治と偽り村人から多額の報酬を受け取るペテン師だった。そんな彼らが本物の魔女と対決するハメになるさまを、有名童話のエッセンスを散りばめながら描く。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ テリー・ギリアム監督の最新作ということで、公開当時から気になっていた作品です。独特な映像世界で有名な方ですが、こちらはなんとも期待はずれ。同年の作品で、この撮影を中断して撮りあげたという「ローズ・イン・タイドランド」のほうが、予告からもずっと面白そうに見えたし、評判も良いようです。そちらにエネルギーを注ぎすぎてしまったんじゃ?というくらいにパッとしない出来栄えでした。グリム童話といえば、暫く前に『本当は恐ろしいグリム童話』という本が話題になりました(読んでいませんが)。和洋・異国に関わらず、言い伝えとか昔話というものには、興味惹かれます。ただこちらは、よくある、ほんとうによくあるファンタジーの域から出ていない感じで残念です。白雪姫の継母よろしく、永遠の美を求めて500年も塔のてっぺんで生き続ける魔女を、グリム兄弟が退治するお話―――なのですが、子供がさらわれ生け贄になるとか、呪われた森とか、真新しいものがありません。動き回る‘生きた木’は、長年温めてきたひとつの見せ場だったようですが、今となっては「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」などで見慣れてしまった感も。ただトーンの抑えられた森の情景は、どれも好きでした。青々としていない、枯れ葉舞う不気味な森。そこに童話の主人公たちに似せた村の子供たちが、ヘンゼルとグレーテルや赤ずきんちゃんのように登場すると、心なしかわくわくするよう。 「ボーン」シリーズで素敵だったマット・デイモンは今回ちょっと微妙。弟を演じたヒース・レジャーは、間の抜けた優男役を好演していました。眼鏡をかけて、いつも本を手放さず、伝説を信じるジェイコブがいい味。二人を助けて、自らも父と妹二人を森でさらわれたアンジェリカは、レナ・ヘディが演じています。あまり見かけない女優さんですが、色っぽさがこの作品には似合っていないかな。その他の脇役も豪華です。ドイツを占領しているフランス軍の司令官?ドゥラトンブを、先日の「夢見る頃を過ぎても」にスター役で出演していたジョナサン・プライス。その部下・カヴァルディを「コンスタンティン」のピーター・ストーメアが好演。魔女役にはモニカ・ベルッチ。脇役に助けられつつ、無難ながらも、展開のグダグダ感は否めない2時間。あまり怖くないので子どももOKですが、大人以上に子どもが飽きてしまうかもしれません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 テリー・ギリアム 製作 チャールズ・ローヴェン 、ダニエル・ボブカー 脚本 アーレン・クルーガー 音楽 ダリオ・マリアネッリ 出演 マット・デイモン 、ヒース・レジャー 、モニカ・ベルッチ ジョナサン・プライス 、レナ・ヘディ ピーター・ストーメア (カラー/117分)
2007.05.14
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1888年のパリで上流向けのクラブを営んでいたダングラール(ギャバン)は、下町のキャバレーで見初めた踊り子ニニ(アルヌール)に触発され、カンカンを復活させた新しいショウを考え付く。しかし女性にもてる彼やニニをめぐり、恋のバトルが幾つも勃発して・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 近年ハリウッド映画のタイトルにもなったキャバレー“ムーラン・ルージュ”。その創設にあたって巻き起こる出来事を、恋と踊りと唄の数々で描いた大作です。ただ華やかなだけじゃない。恋の甘きも苦きも、嫉妬も悦びも織り込んだ、フランス映画らしい恋愛模様が楽しめました。カンカンを披露するまでの紆余曲折を楽しみ、ラストの圧巻なショーは爽やかな感動を残してくれます。ダングラールは、新人を見つけては華やかな舞台へ送り出してきた、やり手のクラブオーナー。ある日、下町で踊るニニに出会ってから、彼女に夢中になります。沢山の踊り子を集めてカンカンのショーをはじめるため、全財産をつぎ込み大きな店を買い取るのですが・・・これまでのスター・ローラやニニの恋人は、二人に嫉妬して大騒ぎとなるのです。そこに新たなライバル、アラブの王子まで登場して、どの恋もまったく巧くいきません。 華やかな舞台ができるまでのバックステージものとしても楽しい作品です。もちろん劇中劇の舞台も楽しくて、一石二鳥。本番前のドキドキとか、舞台裏の喧騒、ハプニング。そんな前半からは思いがけない魅力もぐんぐん表れてくる作品でした。資金繰りがうまくいかずムーラン・ルージュ計画が凍結するような、つまずきのドラマもあるし、アラブ王子のニニへの猛烈な恋もある。なんとも賑やかな映画ですね~ニニがすっかり夢中になってしまったダングラールに、本番前一喝されるシーンが素敵。ダングラールにすれば、新人を探し続けてそのたびに恋をするのが人生。そのことを率直に諭して聞かせるこのシーンは、彼女とローラの間の確執さえも吹き飛ばしてしまいます。恋する乙女が一気に舞台女優へと生まれ変わるような、そんな瞬間。あとは本番があるのみです。無事みんなを送り出したダングラールが、舞台裏でカンカンの音楽にうっとり満足顔をするシーンが印象に残ります。そのまま感無量――と死んでしまうのか?!と思うほど。曲にノリだして思わず一緒になって足を上げる姿、いても立ってもいられず舞台の成功を確認すべく客席へと出ていく姿・・・女たらしの中年男ダングラールのはずが、とても素敵に見えてくるのがいい!さすが名優ジャン・ギャバン。惚れ惚れしました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督・脚本 ジャン・ルノワール 撮影 ミシェル・ケルベ 、クロード・ルノワール 音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス 出演 ジャン・ギャバン 、フランソワーズ・アルヌール マリア・フェリックス 、フィリップ・クレイ ミシェル・ピッコリ 、ジャンニ・エスポジート エディット・ピアフ (カラー/102分)
2007.05.11
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主人公モンターグは禁止されている書物の捜索と焼却にあたる有能な消防士だったが、クラリスという女性と知り合った事から本について興味を持ち始める。やがて読書の虜となった彼の前には、妻の裏切りと同僚の追跡が待っていた……。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ SF作家レイ・ブラッドベリの原作を、トリュフォーが初めて英語圏で製作した作品です。人々の思考を操作するため、活字が抹殺された近未来。消防士の仕事は、隠された書物を捜索し焼き去ることでした。隣人や親戚からの密告が後を絶たない、管理社会の怖さと不気味さがよくでていて、古臭さも味になる。トリュフォー監督といえば恋愛映画というイメージですが、こんなSFをしかもイギリスで撮っていたのですね~。主人公が‘本’に触れてしまった時、その魅力にとり憑かれる様が印象的です。人々の意識を自由に飛躍させる、知識の泉であり、人生の教科書でもある‘本’は、たとえ身を滅ぼしても、一度手にとってしまうと渇望して止まないものなのかもしれません。活字中毒―という言葉があるように。 主人公が働く消防士たちの活躍が、とても地味なのが面白い。網の台に本を載せて火炎放射器でボ~~屋根のない消防車も、立って乗る姿がシュール!スピード出したら落ちてしまいそう・・・ですが音楽の不気味さが異様さをアップしていて、B級っぽいのだけれど確かな見ごたえです。本の虜となり、追われることとなった主人公は、妻との空虚な関係を埋めることができず、近所に住む女性・クラリスと急激に親しくなります。彼女もまた本の魅力に取り付かれたひとり。やがて反社会分子として、自分の仕事もなにもかもかなぐり捨て、ふたりが行き着く場所は、精神世界を描いたような幻想的な世界――。本の内容を頭に入れている限り、誰にも手出しはできない。本を焼くことはできても、人の記憶を奪うことはできない。最後にたどり着く、世界の名著を生かし続ける方法は、今ではさして驚くような展開じゃないかもしれませんが、時が経っても褪せない味のある作品でした。モンターグの妻とクラリスは、ジュリー・クリスティがひとり二役で演じています。ちなみに、タイトルの「華氏451」は本が燃え始める温度のこと。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 フランソワ・トリュフォー 製作 ルイス・M・アレン 原作 レイ・ブラッドベリ 脚本 フランソワ・トリュフォー 、ジャン=ルイ・リシャール 撮影 ニコラス・ローグ 音楽 バーナード・ハーマン 出演 オスカー・ウェルナー 、ジュリー・クリスティ シリル・キューザック 、アントン・ディフリング ジェレミー・スペンサー (カラー/112分)
2007.05.09
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ロシアの児童文学作家エドワード・ウスペンスキーの原作を、ロマン・カチャーノフ監督が映画化した人形アニメーション。かわいい容姿の架空の動物チェブラーシカが繰り広げる、ほのぼのした日常を描いたハートフルでキッチュな短編集。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 人形アニメーションなのにこのキッチュな感じがたまりません。子供よりも大人ウケしそうな主人公たちが愛らしい。寂しく楽しく、孤独で温かく切ない。なんじゃそりゃ、という感じですが、でもいろんな感覚になる不思議な人形アニメーションです。以前紹介した「ミトン」「ママ」「レター」のロマン・カチャーノフ監督で、あの時感想に書いたような、ソ連映画らしい?暗さがまた心をくすぐります。だれも彼も寂しくてかまって欲しいだけ。意地悪で怪盗のシャパクリャクばあさんだって、ただ有名になりたいから悪さをするだけなのです。‘動物園のワニ’が仕事のゲーナ、正体不明のチェブラーシカ、みんな孤独でみんないい奴。ほのぼのとした内容と微妙な暗さが、今の時代にはとてもシュールに映ります。ゲーナが奏でるアコーディオンの音色と唄がお気に入り。全体の音楽も懐かしい響きで、吹き替えでないほうが、より古さの味が加味されて魅力的に聴こえました。 DVDには三つのお話が収録されています。一つ目は、チェブラーシカが八百屋さんのオレンジの木箱から登場して、友達募集中のゲーナたちと友達になるお話。二つ目は、チェブラーシカとゲーナがボーイスカウトに入りたくて奮闘するお話。そして三つ目は、汽車で旅行へ出掛けたふたりに、意地悪なシャパクリャクばあさんが邪魔をする旅先での騒動。特典のおまけには、もうひとつ10分ほどの短編も入っているのでお見逃しなく。自分が誰なのかもわからないチェブラーシカと、その友人たちの物語。人が困ってるのを見るて楽しむ・・・悪趣味っぽいけど、これはカタルシスというのもなのでしょうか。雨の日の午後に見ていたい、そんな映画でもありました。 愛らしいチェブラーシカはグッズになって、雑貨店でも見かけます。絵本も人気がありそうですね~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 ロマン・カチャーノフ 原作 エドワード・ウスペンスキー 美術 レオニード・シュワルツマン 声 クララ・ルミャノワ 、ヴァシリイ・リヴァノフ (カラー/64分)
2007.05.07
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大型連休も今日で終わりですね。最終日いかがお過ごしですか。わたしは3日から来客が続き、何処へ行ったわけでもないけれど、賑やかなGWを過ごしました。疲れとワインの飲みすぎで?頭が痛いけれど元気です。5日のこどもの日は『新・人体の不思議展』へ出かけてきました。全国各地で催されているこちら、前売りを手配してもらっていたので、軽い気持ちで行きましたが、後からあとからすごい物を見てしまったな・・と複雑な気分になります。プラスティネーションという技術で、生身の人体を標本にしたこの展示。今まで知らなかったけれど、なにかと物議をかもしているそうです。中国で提供された死体を検体として、中国政府の外貨獲得手段として利用されている側面がある――とか、検体は死刑囚である――とかで(ウィキペディア)倫理的にも問題となっています。あまりにもリアルな標本は、今までの概念を覆されてしまいます。これは本物なわけないよね・・・そんなこと思いながら観ていたけれど、どれも本物の人間の体。信じられないからよかったものの、触ることができたりするのは衝撃です。娘は怖がってずっと抱っこされていたし、トラウマになりかねないのかもしれません。こういうものに興味のある息子でさえ、顔をしかめるような場面もありました。成人の脳を持てるコーナーもありました。会場となったスピカへ行くのはこれで二度目。狭い場内に結構な人出でした。スピカですが、もうこの施設、なくなってしまうそうですね。行くのもこれで最後になりそう。人体の断面は「ザ・セル」を思い出しました。血管の標本がとにかく凄い。あまり長居せずに出てきましたが、まだ本当に本物だったのか信じられない感じです。 グロイ・・・やっぱりグロイ。これが結論かも。勉強になるとか、コンセプトである健康の大切さと命の尊厳、そういったものとはちょっとちがいました。怖いもの見たさ、見世物感覚もあるのでは?と、思うのは私だけでしょうか~
2007.05.06
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ギリシア悲劇の『エレクトラ』になぞらえた、イタリアの古都を舞台にした物語。結婚まもない米国人の夫と共に、故郷ボルテッラの実家を訪れたサンドラ(カルディナーレ)。幼い頃に父をアウシュビッツで亡くしてからは、屋敷は母の再婚相手のものとなっていたが、弟ジャンニ(J・ソレル)はまだそこに暮らしていて、彼女に変わらない兄弟愛以上の感情を持ち続けていているのだった・・・。貴族階級の姉弟の禁断の愛をミステリアスに描く。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 幸せな結婚して間もない夫婦が、妻・サンドラの故郷で暗い過去の因縁に巻き込まれ、悲劇を迎えてしまう―――禁断の愛、運命。そういったものを幻想的に描いた作品で、ヴィスコンティらしい甘美さをあわせ持っていました。主人公が上流階級というのも。クラウディア・カルディナーレの妖艶な美しさと、ピアノの旋律がなんともいえないいい雰囲気を醸しています。故郷では異質なアメリカ人の夫は、サンドラを過去から解き放ち、唯一幸せにできる人だったのかもしれない・・・けれど、帰郷したばかりに、過去のどろどろとした愛憎が再び大きくのしかかってきてしまうのです。 弟ジャンニの、姉に抱く愛は痛々しく無垢で切ないもの。それ以上に、サンドラの父への愛も、人生を大きく変えていくほど大きなものでした。母親の再婚相手を憎み父の死の秘密を知りはじめるとき・・・怒り、復讐心、そして弟や夫への愛によろけてしまうサンドラに感情移入しました。強い意思を持った女性だからこその結末が、とても良いですね。彼女の凛とした生き方も見所です。元となった「エレクトラ」とはギリシャ神話のなかに出てくる女性の名。女の子が父親に抱く強い独占欲と、母親に対する対抗意識のことを、エレクトラコンプレックスというそうです。このコンプレックスを題材とした幻想とミステリアスな展開が楽しめました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 ルキノ・ヴィスコンティ 製作 フランコ・クリスタルディ 脚本 ルキノ・ヴィスコンティ 、スーゾ・チェッキ・ダミーコ エンリコ・メディオーリ 撮影 アルマンド・ナンヌッツィ 出演 クラウディア・カルディナーレ 、ジャン・ソレル マイケル・クレイグ 、マリー・ベル レンツォ・リッチ (モノクロ/100分)
2007.05.02
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初めて海外へ飛んだシリーズ第41作。田舎の駅で心身症のサラリーマン・坂口を元気づけたのがきっかけで、寅次郎は彼のつき沿いでウィーンへ行くことに!そこで知り合ったガイドの久美子に仄かな恋をして・・・。寅次郎の異文化奮闘記。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ シリーズも終盤に近づいてきた41作目です。今回のマドンナは竹下景子さん、淡路恵子さん。このお二人、どこかで見たと思ったら、38作目「知床慕情」でもダブルマドンナで出演してらっしゃいましたね!まったく繋がりはありませんが、海外が舞台となった初の作品にも似合ってしまう、お二方でした。時代の流行を取り入れることの多いこのシリーズ、今回は心身症のサラリーマンが登場します。エリートサラリーマンでありながら仕事に疲れ、鈍行電車に飛び込み自殺しようとする坂口(柄本)。しかし、あえなく失敗し、丁度その列車に乗っていた寅さんに拾われるのです。彼にすれば寅さんみたいな生き方、羨ましくて仕方ありません。寅さんのように自由に、憧れの地ウィーンへ行くことになり、なぜか断りきれないままに寅さんもオーストリアの地を踏むこととなるのでした―――あんなに飛行機嫌いだったはずの寅さんが……案外あっさりと海外へ。家を飛び出してから8年間も帰国していないという、ガイドの久美子(竹下)に出会い、その友人のマダム(淡路)と出会い、3人それぞれに郷愁を抱えながら、異国の地で数日間を過ごすこととなるのでした。一方、すっかり元気になった坂口は、大張り切りでウィーンの街で羽を伸ばし、観光名所めぐりに余念ありません。このあたりの作品はほとんど見ていると思ってたのに、初めてでした。ほぼ海外で撮られた異色作ですが、違和感なく、後味も悪くありません。若い頃のような恋のシーンはもう随分少なくなってきて、‘出逢った人を癒す寅さん’になっています。今回も、久美子に恋している感じはあまりしません。彼女の恋人が「卒業」ばりに空港にさらいに来るシーンだって、切なさというよりは戸惑いだけ。今度の見所はなんといっても、ウィーンということで「第三の男」のパクリが楽しめます。音楽(それもたったの4音!)、影ぼうし、スパイ――と監督の遊び心が満載です。そして異国で感じる郷愁に、音楽の都ウィーンの美しい街並みが似合う。ばりばりの日本文化映画でありながら、異国を舞台にしてもマッチしているのはすごいかも。「夢でも見てたのかな・・・」そんな寅さんのつぶやきに同じく、夢でも見てたかのような気持ちがする、不思議な41作目でありました。この作品は、製作する5年前?(でしたか)、飛行機内でこの映画を観たウィーンの大使か誰かが「これは面白いから是非わが国でロケしてください」と言われて出来たのだそうです。日本人じゃなくても楽しめるなんて、さすが寅さん!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 山田洋次 製作 内藤誠 脚本 山田洋次 、朝間義隆 音楽 山本直純 出演 渥美清 、倍賞千恵子 、竹下景子 淡路恵子 、柄本明 (カラー/109分)
2007.05.01
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