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2007年、ロンドンにパルナサス博士(プラマー)率いる、旅芸人一座がやって来た。出し物は、心の中の欲望を鏡の向こうの世界に創り出す摩訶不思議な装置“イマジナリウム”。しかしお客はゼロ、しかもパルナサス博士は、かつて悪魔のMr.ニック(ウェイツ)と交わした契約の期限が近付き気が気でない。一方、もうすぐ16歳になる博士の娘ヴァレンティナ(コール)は、偶然助けた記憶喪失の男トニー(レジャー)に心奪われる。トニーは一座に加わり、彼の魅力で女性客は増えるのだが・・・。 ヒース・レジャーの遺作というだけでも、注目の集まるテリー・ギリアム監督最新作。イマジネーション溢れる異世界へのトリップは、コアなギリアムファンにはたまらないでしょう。冒頭、Dr.パルナサス一座が現れた瞬間から心を奪われてしまう!舞台は2007年というのに、この一座の風貌がロンドンの街角に現れて違和感ないことがまずスゴイ。1000歳になるという博士には、悲しい秘密がある。かつて“不死”と交換に、娘を悪魔に差し出す約束を交わしてしまったのだ。タイムリミットは3日後、ヴァレンティナの16歳の誕生日。博士は欲望に堕ちない人間を見つけ、娘を救うことができるのか・・・!博士自身、若かりしころ欲望に堕ちた。悪魔と契約などしてしまったのだから。だからこそ“イマジナリウム”を発明し、人間の欲望と向き合って今なお苦しんでいる。人々の欲望は尽きることなく、悪魔の誘惑は絶大。形勢は不利の連続だけれど、娘のため、諦めるわけにはいかないのだった。物語の核になるのは、博士が娘を守れるかどうか――それと同時に、ヒース演じる記憶喪失のトニーが、自身の犯した罪と罰に対峙していくシニカルな物語でもある。恐るべき“イマジナリウム”の世界へ偶然足を踏み入れてしまったトニーを、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が、亡きヒース・レジャーの代わりに見事に演じ分けている。願望と欲望の世界で、トニーの悪どい姿を露呈させ、悲劇の結末へと突き進んでいく様は、さすがにギリアムらしいブラックな味わい。ワケありトニーが仲間に加わってからというもの、一座はぎくしゃく。メンバーのひとり、若いアントン(アンドリュー・ガーフィールド)にはとくに不満が募る。それはトニーに惹かれていくヴァレンティナに、ずっと恋してきたからだった。アントンの恋の行方はいかに?ヴァレンティナの運命はいかに?腹黒いトニーの運命はいかに?悪魔の手に堕ちることなく、みんな幸せになれるのか・・・?!結末はご覧になってのお楽しみ。ギリアム氏の脳内妄想が創り出すファンタジーには、よくわからないところや、辻褄の合わない場面がたしかにある。しかし、そこはもう目を瞑るしかなくて、物語性より、めくるめく繰り広げられるダークファンタジーに身を委ねて映像を楽しむのが正解だと思う。ほかの誰にも創れないユーモアと美しさに満ち満ちた世界はギリアム・ワンダーランド。心が自由に楽しめる空間があった。最後の最後まで手の抜かない劇場演出もうれしかったし、相変わらず日本贔屓の衣装が『ローズ・イン・タイドランド』に引き続き魅力的だった。来日中、爆笑問題とふざけ合う時のあのテンション、、、。変人ぶりも微笑ましく、次回作がまた楽しみだ。● ● ● ●監督 /テリー・ギリアム 製作総指揮 /デイヴ・ヴァロー ヴィクター・ハディダ 脚本 /テリー・ギリアム チャールズ・マッケオン 撮影 /ニコラ・ペコリーニ 音楽 /マイケル・ダナ ジェフ・ダナ 出演 /ヒース・レジャー クリストファー・プラマー ジョニー・デップ ジュード・ロウ コリン・ファレル リリー・コール トム・ウェイツ (カラー/124分/イギリス=カナダ合作)
2010.01.30
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休日、午前一番に予約していた健康診断へ行ってきました。会社から指定された診療所は、がらんとしていて私以外だれもいない。テキパキてきぱき、次々検査をこなし、30分もかからずに結果を聞くことができました。レントゲンも心電図も問題なし。視力が免許更新ぎりぎりの線まで下がっていたのが、唯一の気掛かりだけれど、あとは一週間後の血液検査の結果を待つのみです。あっという間に済んだので、予定通り、「ユナイテッド・シネマ札幌」にて『Dr.パルナサスの鏡』を観て帰りました。敬愛するギリアム作品を劇場で観たのはこれが初めて。わけあってボーっとした頭で、途中何度か眠くなったりしたけれど、ギリアムのイマジネーション世界を楽しんだし、魅了される映像に酔いました。ヒース・レジャーの遺志を継いだ三人はそれぞれに魅力!後日、感想を書けたらと思っています。検診ついでに、朝食抜きを利用してプチ断食することにして、昨日のお昼から珈琲しか摂らずに一日過ごしてみました。今朝は元気に診療所へ行けたけれど、映画館へ向かう頃にはお腹がグーと鳴っていた。階段の昇降には力が出ないし、脳には糖が足りないし・・・食事を摂れないってこんなにも消耗するんだなぁ。たったの24時間なのに。あちこち出歩いたからよけいエネルギーがいったけれど、自宅で過ごしていたらきっとソファーで本読みながら寝ていただろう。体の軽さ、空腹ゆえの清々しい快楽。これはうれしいんだけど。ある程度まで、だねぇ。休日に合わせたプチ断食ならまたやれそう。それにしても「ユナイテッド・シネマ札幌」のホールには、いつもものすごく甘ーいポップコーンの匂いが漂っているんだけれど、今日ほどそれを恨んだことはなかったよ!!普段は映画館のポップコーンなんて見向きもしないのに、完全に飢えていた今日。帰宅後、遅めのお昼ご飯は、サラダ巻きにチョコパンに、朝の残りのおかずまで食べてしまって・・・・・・残念だよ、自分。軽くなった体は再び重く、一度帰宅した小さな家人たちがまた出掛けて行ったあと、夕刻にしばし昼寝をしてしまう。ポストに届いていた不在通知は、心待ちにしていたアマゾンからの『河童が覗いたインド』だったのに、再配の電話も寝たらすっかり忘れて、明日に持ち越しとなりました。ようやく今週末はゆっくり過ごせそう!!
2010.01.29
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週末、ドライブをした。 数年前まで暮らしていた街、登別・室蘭へ。街の様子はほとんど変わりなく、3年ぶりとは思えなかった。いつもながら、住んでいた時よりすべてが小さく感じられて寂しげだ。前々から気にかかっていた、デコボコな床のお店は、さらに高低差を増し、店全体が大きく畝っていた。釣りをした海は変わっていなかったし、白鳥大橋から見える海はやはり真っ青だった。家族が入院した病院も、2年半住まった家も、よく遊んだ公園もそのままにあった。こうして懐かしの地を訪ねるのは好きだけれど、その頃を思い出して戻りたくなることは幸福なことにない。年々、なにかしら手放しがたい物事に出会えているんだろうな。戻ってほしいのはお肌のハリくらいよ。市内を3時間ほど見て歩いたあとは、一番楽しみにしていた温泉街へと向かった。何を隠そう、今回のドライブは温泉がメインなのだった。地獄谷と鬼で有名な、登別温泉街にある『さぎり湯』。硫黄の匂いに満ちた地獄谷からのすばらしいお湯を、大人390円で堪能できるという、なんともステキなこの温泉は行きつけだった。引き戸を開けて暖簾をくぐると、昔ながらの板張りの床が広がっていて、右手に靴を置いたら、古くて味わい深い長い階段を下っていく、すると小さいながらもとっても落ち着く浴場があるのだ。たった四つの湯船だけれど、露天なんてないけれど、こんなに気持ちのいい、湯あがり疲れない温泉も珍しい。ゆっくり浸かったあとで、無料休憩所でなにかしら飲みながら、ゆるゆる過ごすひと時は最高だ!!この日もそのようにして湯あがりにくつろいでいた午後5時頃。その場から窓の外を映してみた。ここへ来るまで、もっと絶好のシャッターチャンスはあったはずなのに・・・。カメラの存在を思い出した帰りがけのたった一枚の写真は、なんとも間の抜けたものになってしまう。「クマ牧場」を探せ。 背景の隅っこに、ロープーウェイで行ける「クマ牧場」の看板がありますが、見えるでしょうか。
2010.01.27
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最初の20世紀少年イナガキ・タルホのシネマトグラフへの憧憬が結晶する、夢の映画100年記念アルバム。 (「MARC」データベースより) 足穂氏が書いた映画論をみつけて、いつか手に入れ積んでおいた本。1900年生まれの足穂さんは、映画創成期に育って、心底活動写真に魅せられたにちがいない。当時を振り返って、熱い思いを語っておられる。≪メカニズム愛好家≫だから、活動写真の魅惑にとり憑かれるのもわかります。 1925年~1975年まで50年間にわたって発表した、映画に関するエッセイと小説を収録しているというので、古典映画の解説や、当時のノスタルジックな出来事を聞かせてもらえるのかと思いきや、、、創成期にトキメイたままの視点で、ずっと回顧モードなのでした。笑ってしまうほどメランコリックに、もう映画は映画でなくなってしまった・・・!と嘆かれるのでした。急速に発展・変化していった映画は、たしかにこの100年あまりで驚くほどの進化を遂げたと思います。足穂氏の知っている時代を、いち映画ファンとして、経験してみたかったな~とも思うけれど、氏が繰り返し「堕落した!!」と嘆き続けるのは、映画ファンにはちょっと淋しい。「劇場から出てくる人々は、一様にしてぞうきんで顔を拭ったようだ」・・・・・・ってなんですと!!そんなことはないない。たしかに味わいは消えていったろうけれど、心躍らせ、いい顔をして出てくるお客もいっぱいいることでしょう。毒舌に、苦笑いの頁も多かったことは否めません。ただ、わたし自身、昔に通った小さな劇場を思い出せば、タルホさんが抱くノスタルジアと同様の想いがすることに気づくのだけれど。。 ちなみに、わたしが映画を観はじめたのは1980年代後半でした。80年~90年代に作られた作品は、やはりなにかと思い入れ深い。幼少期、青春期、それぞれに記憶に焼きついた作品が、映画ファンには必ずあるのではないでしょうか。タルホさんがラリー・シーモンに心酔するのと似たように、わたしが子どもの頃、衝撃を受けた初めての映画は忘れもしない『ポセイドン・アドベンチャー』と『グーニーズ』でした。現在公開中なのは、なんと3D作品。映画の進化は続いているのだなぁとしみじみ思う。CGの誕生さえ、まださして昔ではないのに、もう時代は次に突入してしまったのだなぁ。しかも、「これでいいのかしら・・・」と思ってしまう保守的な自分がいることも否めない。CG満載作品が増えて、それに幾らかの冷ややかな目線を注ぐようになったいま、変わらずに映画は大好きだけれど、それこそ「味わいがなくなった」と怒ったタルホさんは、こんな気持ちだったのかもしれません。でも嘆いたって仕方がない。立ち止まってしまってはもったいない。映画は相変わらずおもしろいもの。なんだかんだと文句を言いつつ、タルホさんが劇場通いを止めなかったらしいことを知って、ホッとうれしい気持になる。古いものは味わい深いし、新しいものは受け入れがたく、文句のひとつも言いたくなるかもしれないけれど、これからも映画の進化を見ていけるのなら嬉しいと思う。あと半世紀観続けることはムリだろうかー。数十年後、同じように回顧に沈み、今どきの映画は云々!!と毒づいていませんように。
2010.01.21
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『デカローグ』シリーズの概要はこちら。 ワルシャワ郊外の住宅地を舞台に、旧約聖書の十戒をモチーフに様々な人間模様を綴った、キェシロフスキの連作集。元々はTVのミニ・シリーズ用に製作された10篇が、後にその質の高さから劇場公開された。 ついに、シリーズ最後の第9話・第10話。『トリコロール/赤の愛』のように、みんな勢揃いしたりして・・・と何気に期待していたら、そんなことにはならなかった。ただ、第10話の郵便局のシーンでは、第6話のトメクがさりげなく登場して、うれしいラストとなった。第9話『ある孤独に関する物語』 ―隣人の妻を欲するなかれ― 友人の医者に性的不能を言い渡された夫と、浮気を続ける妻。ふたりの間の深い孤独を描く―――。 性的不能という設定は、『トリコロール/白の愛』でも使われていたっけ。とはいえ、ユーモアを交えていた『白の愛』に比べて、本編はいたってシリアス。男として妻を悦ばせることができなくなり、離婚を申し出た夫に、妻は「それでも構わない、離婚はしない」と優しく応える。しかし、その最愛の妻の浮気を知ったとき、男は嫉妬に苛まれ、電話の盗聴や情事現場の覘きにまで走ってしまう・・・。一番辛いのはもちろん夫だし、妻の行動はヒドイ。けれど、罪悪感を抱えたまま、若い男との実りない情事を続けている妻の苦悩もよくわかってしまう。愛は心にこそ宿る――そうはいっても満たされない妻と、不甲斐なさに耐えることのできない夫の孤独は、ただただ痛々しく悲しい。さんざん傷ついた後で、互いにまだ愛し合っていているとわかるラストが救いだった。第10話『ある希望に関する物語』 ―隣人の財産を欲するなかれ― 疎遠となっていた父親の訃報で、久しぶりに再会した兄弟。生前、切手の蒐集で家族を崩壊させた父親が遺した膨大な遺産が、思いがけず兄弟の運命を翻弄する―――。 父親の遺した切手が高価なものであることを知った時から、性格も仕事もまったく違う兄弟に協力関係が生まれた。儚くも夢見心地な、疑心暗鬼と、希望のはじまりだ。マンションも高級車も買えると知った二人が、思い描く夢のような未来。しかし、濡れ手で粟はほんの一時ばかり・・・。騙し騙され、ふたりに残るのはただ、相手を疑ったことへの心苦しさと虚無心なのだった。最終話にして、これもとってもおもしろい一篇だった。思いがけない富を得た人間の、卑しくも滑稽な姿が微笑ましい。目まぐるしく変わる「運命」、キェシロフスキ節全開の、最後を飾るに相応しい作品だった。最後の最後にトメクを出演させる演出がニクイ。ここまでほぼ、どの作品の主人公も魅力的で、大満足の『デカローグ』シリーズ。私的なお気に入りは、第4話「ある父と娘に関する物語」第6話「ある愛に関する物語」でしょうか。なんだか、改めて『トリコロール』シリーズが再見したくなってきた。キェシロフスキ作品を観漁った今は、より楽しめるに違いない。● ● ● ●監督 クシシュトフ・キェシロフスキ 製作 リシャルト・フルコフスキ 脚本 クシシュトフ・キェシロフスキ クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 撮影 アンジェイ・ヤロシェヴィチ 音楽 ズビグニエフ・プレイスネル (カラー/567分/DECALOGUE)
2010.01.18
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他人と上手く渡りあえない性格の雄二(オダギリ)は、おしぼり工場で働く同僚・守(浅野)と、公私ともに淡々とした日常を過ごしている。ある時、大切に飼っていた猛毒のアカクラゲを雄二に託し、守が突然姿を消した。工場の社長夫妻を殺害して逮捕されたのだ。残されたされた雄二は戸惑いながらも、取り憑かれたようにクラゲの世話を始めるが、守は拘置所の中で、雄二にだけわかる合図を残し自殺してしまう―――。 独特な作風を持つ黒沢清監督。評判はいたるところで聞くのに、なかなか見たい気持ちになれないのは、相性もあるのでしょう。どちらかといえば男性に多く支持されそうな、柔らかくも男らしい映画を撮る印象。主演二人の演技は自然体で、地に足のつかない浮遊した感じが良かった。半透明の浮遊するクラゲが、さらにこの物語全体を掴みどころなくさせていく。守、亡きあと、守の父親がひとり住み込みで働いている工場に、雄二は居すわることになる。父親にとって、雄二と共に過ごすことは、息子に対する後悔と、向き合うことに他ならない。それでも淡々と面倒をみる包容力は、大人に求められていることそのもので、若者がそれに気づく時はじめて、新しい未来は生まれてくるのだろうか。松山ケンイチなど、いまや有名な若手俳優が、無気力な青年役で多数登場する。雄二を筆頭に、若者の代表のようにして。けれど不透明な未来は、けしてタイトル通りの『明かるい未来』にはならず、流れるまま漂うクラゲみたいに、落ち着くべき所に落ち着いて、物語は終わっていくのだった―――。世間の評判はまずまずで、きっとドストライクの方もいるだろうに、見る人を選び、私にはぐっとこなかった。ちなみに、衣装の奇抜さは疑問。浅野さんの超自然な演技、オダギリジョーの名演技に、水を差す画面のうるささ。監督の狙うところの気取りが透けて見えてしまうのも、黒沢清監督はちょっと苦手・・と思ってしまう部分かも。守が決めた、ふたりだけに分かる合図、こういうのは気恥ずかしくなってしまう。女性には理解しずらい行動なのかしらん。結局、アブナイのは雄二よりも守で、人の無鉄砲を合図で諌めるより先に、自分を抑えていれば、、死ななくてすんだのに、、。 おすすめしてくださった荻々亭主人さん、ありがとうございました。思いがけない中辛な感想になってしまいましたが、おすすめという主題歌はすごく良くて、帰省の旅に出ている間じゅう、頭の中に鳴っていましたよ。監督・脚本 黒沢清 音楽 パシフィック231 出演 オダギリジョー 浅野忠信 藤竜也 笹野高史(カラー/115分)
2010.01.14
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松本大洋のコミックを映像化したアニメーション。原作は未読です。『鉄筋コンクリート』ではなく、てっこんきんくりーと。なんてユニークなタイトルだろう。 近未来の日本“宝町”を舞台に、そこに生きる親を知らない2人の悪童少年クロ・シロが、不穏な再開発計画に反逆する姿を描く―――。 クロがシロの保護者となり、かつあげやかっぱらいをしながら、助け合って生きてきたふたり。ある日、昔なじみのヤクザ “ネズミ”が街に戻ってきて、ずっと変わらなくみえた宝町に、再開発という名目の不穏な動きが見え始める。背後にチラつく謎の男“蛇”の影。やがて、自分たちの街を守ろうと抵抗を始めたクロとシロにも、冷酷な“蛇”の魔の手が迫るのだった。『スワロウテイル』や『千と千尋の神隠し』『CASSHERN』『イノセンス』『オネアミスの翼』、日本が近未来や異次元を描くと、猥雑で混沌としたものが多い気がする。その五月蠅い街並みや、世界観が好きな方には、“宝町”はきっと魅力的な舞台。ちょっと癖のある絵で描かれた、奇抜な登場人物たち。ありえなさの数々も、意外とダークなところもおもしろい。子ども騙しに見えて、じつは子どもの彼らが、命がけで悪と闘ったり、自分自身のもうひとつの人格と闘ったりしている、過酷な物語なのだ。忠誠心とか信頼とか、大事なものをしっかり描いていたりするところも好印象。ヨゴレと無垢と、並べて描く作品はいい。本編では無垢の代名詞であるシロと、闇の側面を持つクロの、魂からの叫びがともにせめぎ合っている感じがとっても良かった。クロはシロの為に存在(い)て、シロはクロの為に存在(い)る―――。切なくもぬるまゆい気持ちになる、異色の良質アニメーションだと思う。声優さんは有名どころが勢揃い。素人ぽさが、この作品には意外と良かったりする。平目みたいなシロが、蒼井優の超脱力な声を受けて、すっごく可愛くなってしまうところもグッドなのだ。シロはずっと女の子だと思って見てたけれど男の子だった! どっちにしろかわいさに変わりなしか。大人も子どもも楽しめる作品だった。● ● ● ●監督 マイケル・アリアス アニメーション制作 STUDIO4℃ 原作 松本大洋 『鉄コン筋クリート』 脚本 アンソニー・ワイントラーブ 音楽 Plaid 声 二宮和也 蒼井優 伊勢谷友介 宮藤官九郎 大森南朋 (カラー/111分)
2010.01.13
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自身もロマの血が流れているというトニー・ガトリフ監督。これまでにも沢山のロマをテーマとした作品を撮っている。 《あらすじ》 父の遺したジプシーの歌のテープに魅せられ、パリからやってきた青年ステファンは、幻の歌姫を探して旅するうちに、ロマの村に辿りつく。当初はよそ者扱いされるが、次第に彼らにとけ込んでゆき、ジプシーの娘と恋に落ちるのだった―――。 ロマの人々について、恥ずかしながらわたしはなにも知らなかった。ロマが生みの親であるというジプシー音楽の魅力も、放浪の民の悲しい歴史が、今もなお続いていることも。陽気で、ちょっと間の抜けたオフロード・ムービーは、敬愛するエミール・クストリッツァ作品のノリに似ていて好きだ。きっと二人には、同じように体内に音楽が流れているのだろな。陽気でありながら、民族の悲しさ漂う。 旅人だった父親の、歩いた道を辿る青年ステファンは、歌姫を探しながらたくさんのことに出会う。憧れの音楽に触れ、民の魅力に触れ、思いがけず、偏見と蔑みに合う彼らの真実にも出会って、村を去りがたくなる。魅力的なジプシーの娘に恋してしまったことで、ますます去りがたくなり、彼らの生活により近く接近していくのだった。映像特典を観ると、ステファンの恋は想定外だったらしく、その後の展開を、大きく変えたのだとか。旅の終わりに彼が出す答えと、取った行動も見どころのひとつ。ステファン役を演じた、ロマン・デュリスの笑顔がいい――と聞いていたけれど、まったくの同感。彼の「へらっ」とか「にこっ」とかする表情にやられるー。言葉の通じない土地で、体当たり的演技をする、素ではないかと見間違うほどの、ナチュラルな存在感がいい。それ以上に、驚くべきは、村長イジドールを演じた役者でもなんでもない素人のイジドール・セルバンであった。イジドール役を探していた監督が、一目見て気に入ったという村長は、要所要所を抑えつつ、すっとぼけた、ドキュメンタリかのような自然な、ロベルト・ベニーニ並みの愛おしいやかましさで、台詞を捲し立てる。彼らにとっての生業、音楽は誇り高く、楽手として、歌い踊るシーンが素晴らしかった。音楽が真っ直ぐに心に響いてくる。● ● ● ●監督・脚本・音楽/ トニー・ガトリフ 製作/ ドル・ミトラン 撮影/ エリック・ギシャル 出演/ ロマン・デュリス ローナ・ハートナー イジドール・セルバン (カラー/100分/フランス=ルーマニア合作)
2010.01.03
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2010年、今年の初レビューはこの映画。松尾スズキ氏による、ゆる~い笑いと、ちょっとだけ真面目な良作です。 《あらすじ》 佐倉明日香はフリーライター。ある日、精神科の閉鎖病棟の中にある、通称<クワイエットルーム>で目が覚めた。仕事や恋で行き詰まり、薬とアルコールの過剰摂取で、ここに運ばれて来たのだった。自殺の危険性ありと判断された明日香は、監禁状態に置かれることに。自分はまともだと訴えても信じてもらえず、彼女は外の世界に戻るための方法を必死で探すこととなるのだが―――。ある日、目覚めると、精神科の閉鎖病棟で手足を拘束されている・・・・・・悪夢。なにを言っても、看護師たちは、当然のように信じてくれなし、肝心の彼氏(クドカン)は当てにならないし。無意識とはいえODしたのは事実で、患者の安全を守るための入院はつづく。明日香がいかにして、この病棟へ運ばれるに至ったかは、本人の記憶が戻るにつれて、明らかになっていくという仕組み。真実がわかると、これまでおかしさと緩さに笑ってたはずが、ふと笑えなくなる瞬間がくるのだ。入院患者たちが一様にして、変わり者なのは定石どおり。濃い大竹しのぶとか(笑)。拒食症のミキを演じた蒼井優も、とても好演している。ミキと明日香は気が合って、親しくなっていくけれど、患者たちは病気だからここにいる。正常な人物はひとりもいないのだ。至極まともに見えるミキだって、ほんとうの姿を知れば胸が痛い。彼女の存在は、いろんなことを語っていた。ふつうは気に止めない、遠い国の知らない人の苦しみを、感受性の強さやゆえに敏感に感じとって、自責の念にとらわれ病気になってしまったのがミキ。心の病気になる人は感じやすい、それゆえに、回復したとき人間としての可能性も大きい――そう、亡き河合隼雄さんが著書に書いてらしたことを思い出した。明日香が心を病んだのは、元夫との関係が原因。すれ違いの結婚生活、結局、夫は自殺して、そのことで自分を責め続けた結果が、徐々に症状となって表れてきた。案外まともに、心の病気についてを扱っているのが、すごく好印象だった。ちなみに、自殺してしまう元夫役は、我らが塚本晋也。コップを咥えた情けない演技がグッジョブ!松尾スズキ氏の監督作品を観るのは、これで二度目。どちらも役者さんの魅力が引き出されている印象です。きっと撮影現場は楽しかったに違いない、そんな本編でありました。初めてクドカンこと宮藤官九郎がいい男に見えてしまったよ。歯が見えないと。● ● ● ●監督・脚本/ 松尾スズキ 原作/ 松尾スズキ 『クワイエットルームにようこそ』 出演/ 内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優 りょう (カラー/118分)
2010.01.02
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あけまして おめでとうございます 昨年中、足を運んでくださったみな様。たのしくお話させていただいたみな様。大変お世話になりました。新年も どうぞよろしくお願いいたします。わたしの正月は、毎年、家族水入らず。今年も、6日から帰省する予定なので、まだゆるゆる過ごしています。元旦の今日は、千歳へ足を延ばし、初売り巡りして、歩きまわって、初詣にいく元気残らず。おみくじは、明日以降へ持ち越しとなりました。大晦日、新年へのカウントダウンをしながら、ビールと日本酒とワインをチャンポンしたら本日はビールを二缶空けただけなのに、ちょっと頭がイタイ。さっそくの二日酔いか。年々お酒に弱くなっていくのが、かなしい。毎年恒例、ダウンタウンの笑ったら罰ゲーム――というあれを観ているのですが今年はこの番組のジミー大西で、久しぶりに笑い死にしそうなくらい笑いました。腹筋がひくひくして、息吸う暇なく、腹のそこから笑いがこみ上げて、窒息死寸前。仕舞にはお酒のせいもあってか、心臓が痛いくらい笑いましたよ。ジミー大西サイコー。エガちゃんもサイコー。今年の目標は、もうすでに決めています。いろんな意味でストイックになること。詳しく書かないけれど、それが目下の願いに通じることだから。そして、去年よりも多くの本を読むこと。映画を、もう少したくさん観ること。それでは本年も、どうぞ宜しくお付き合いくださいませ。
2010.01.01
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