サイド自由欄

カレンダー
キーワードサーチ
3月20日(日)
ぽかぽかと暖かい朝。
午前10時、末娘のテニス部の友だちが遊びにやってきた。震災後、部活動も停止になって、時間と気力と体力があまっている模様。その時間・気力・体力、近い将来、被災地復興のためにつかってもらうからね。つかってもらい方を考えるのも、わたしたち大人の道である。さて。
大学の入学式や、新年度のはじまりも5月になるという話だ。延期はいいが、大学生として、1週間ずつでも被災地のためになる働きをしてくださいな。そしたら、大学の「単位」をあげましょう。……と、ここでこっそり大学教授みたいなことを述べている。ところで。「ためになる」というのは、むずかしい課題だ。
テニス少女たちに、おむすびをこしらえる。ひじき、根昆布、茎わかめ、とろろ昆布、めかぶ、あおさ、もずくなど10種類以上の海藻が入ったふりかけを炊きこんだご飯で。気力と体力、何より浄らな精神温存のための、願かけのおむすびだ。わたし、『ヘンゼルとグレーテル』の、痩せっぽちのヘンゼルを太らせて食べようとした魔法使いのおばあさんみたいかしら……。それでも、かまわない。ときに、恐ろしい女にだってなって、がんばるさ。
昼過ぎから、夫とふたりで散歩。
小金井公園まで歩く。桜の枝がピンク色に染まり、モクレンが咲き、大好きなユキヤナギもあふれんばかりに花芽をつけている。こういう景色を、動植物のいのちを、いまはゆるりとは眺められない。かと云ってうれしくないわけではない。ひりひりしながら、うれしがっている。 帰り道、空にひこうき雲を見た。大きく交差しバッテンを描いた雲。こんなひこうき雲を見たのは初めてだ。
何がバッテンなのだろう。いや、「×」(かける)という意味だな、あれは。はなれた場所のアナタとワタシの心根、働き、願いがかけ合わされて、驚くようなことが起こるという……。
分厚いパーカー。
霜降りのグレーで夫の気に入りだが、長いこと着てシミがいくつもついたから、とうとうボロ布に……と思いかけていた。シミのところにボタンをつけて、隠す。シミなんかは隠してもよし、シミのあるのを誇るもよし。
まだしばらく着てもらい、買い換えの費用を義援金に。こんなふうにいきたい、長く細く。
3月21日(月)
晩ごはんを食べながら、「この10日間、肉をすこーししか食べていないんだけど、気がついてた?」と、子どもたちに尋ねる。「気づかなかった」「へえ」という返事。(「いつも、そうは食べてないけどね……」と云った者もある)。
買いものになるべく行かず、乾物中心のおかずでやってきたからだ。
きょうは、ぎょうざだ。いろいろな野菜と豆やひじきの煮もの、それにひき肉もちょっぴり入っている。からだをあたためるため、生姜とにんにくをたっぷり加えた。
夫が手まわしで充電する小さなライトの弱い光のもと、それを焼いている。みんな、薄暗がりのなかの仕事がうまくなったなあ。
3月22日(火)
……忘れていた。
ほんとうは忘れていたわけではなのだけれど、こういうときだから、忘れてしまってもいいかなーと、思いかけていた。英文翻訳の課題のはなしだ。忘れてしまってもいいかなーというのは、甘えだ。課題につかう時間と労力は、自分の勉強のためのものだけれど、それを忘れてしまってもいいかなーという甘えは、いまというときにはふさわしくない。だいたい「こういうときだから」という思い方を、都合のいいときに引っぱりだすのは、ふさわしくなさを超えて卑怯である。
朝から、机にしがみついて辞書をひきひき奮闘。おわったのは昼もだいぶ過ぎたころだったが、なんというか、筋肉痛のような感覚がある。筋トレのあとよりも、もっと。
課題はエッセイで、ひととひとのあいだのことを大事にしながらゆっくり暮らしている人びとについての話だった。訳しながら、これはこれは、時宜にかなっていること……と、驚く。いまのわたしにとって、「ゆっくり」と「急ぐ」のバランスのとり方が、もうひとつの課題でもあるように思える。

友だちが、
届けてくれました。
こういうやさしいものを見るにつけても、
冷静さとあたたかい気持ちの両方をもっていなければ、
と思わずにはいられません。