2005年02月03日
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祖母が入院したと聞いて見舞いに行った。

「おまえに言っておくことがある。」
病室に祖母と自分のふたりだけになったとき、急に祖母が話しはじめた。
「おまえが学校入る前な、おまえに聞いたんだよ。市役所から学校来てくださいって、通知来たかって。」
小学校入学前の数年間、自分は祖母の家に預けられていた。理由は今もわからない。
祖父は自分が三歳のときに亡くなっていた。
「そしたらおまえはな、悲しそうな顔して『ぼく、勉強、もうちょっと足りないから、まだ来ないの。』って言うんだよ。」
自分は小学校に行くことを、非常に楽しみにしていたのだという。市立の学校だから無条件で入学できるのは言うまでもない。

まあ、うちの母親なら言いそうなことだ。
「それでノート出してきて、ひらがなの書き取り始めるんだよ。ノートには、ずーっと書き取りしてあったんだよ。」
「こんなに学校楽しみにしてるのに、なんでそんなこと言うのか、おまえのお母さんな、自分の娘なんだけど、憎らしくてな。」
そう言っておけば勉強すると思ったんじゃないの?
「だけど、そんなこと言われて、おまえ、不憫で可哀想でなぁ、一生懸命勉強してるんだよ、それで。学校行きたくてなぁ…」
ベッドに寝たままの祖母の目が潤んでいた。
高齢でだいぶ記憶が怪しくなっていた祖母だが、そんな昔のことを鮮明に覚えていたのは、きっとそれだけ感じるものがあったのだろう。

数日後、祖母は他界した。祖母と話らしい話をしたのは、それが最後だった。
子供のころから母親にはだいぶ反抗した。しかし祖母の前では、いくつになっても五歳のままだった。

あれから十年が過ぎた。ふと思い出した祖母の記憶、決して忘れないよう日記に書いておく。





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最終更新日  2005年02月03日 10時51分31秒
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