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| 著者・編者 | 岡田斗司夫=著 |
|---|---|
| 出版情報 | ベストセラーズ |
| 出版年月 | 2015年11月発行 |
著者は、自身がカリスマだと公言している岡田斗司夫さん。岡田さんの著作を読むのは、『いつまでもデブと思うなよ』以来である。最初にお断りしておくが、私自身はカリスマではなく、カリスマになるつもりもない。にもかかわらず、本書を購入したのは、ネット上で炎上を繰り返すカリスマ達が、どういう気持ちで人生を送っているのかを、少しでも知りたかったから。
冒頭、堀江貴文さんや津田大介さんの有料メルマガや有料サロンを取り上げ、これらがカリスマはビジネスになると指摘する。「高い評価を得られる人間ほど、他人に強い影響を与えられる社会。これが『評価経済社会』です」(34 ページ)。
第2章では、カリスマを 3 つに分類し、また、教祖やメンター、トレーナーなどとの違いを解説する。「カリスマというと、相手にものすごく強い影響力を与えて心身を縛る。自分の言う通りに相手を支配する、そんなイメージを持っかもしれませんが、それは教祖型やメンター型リーダーの特徴です」(60 ページ)などの解説は、論理的で分かりやすい。また、「カリスマの 4要素」を説明しており、これも分かりやすい。非カリスマの私から見たカリスマというのは、「お節介焼きの中2病のオタク」というイメージなのだが、これを良いイメージでとらえ直すと 4要素に当てはまるように感じた。
第3章では、小カリスマの例として、1 件 50 円でどんな依頼も引き受ける「ホームレス小谷くん」、面白いことをやり続けることが仕事になった「旅人のジョー」を紹介する。そして、「カリスマはファンという土壌があってこそ成立する存在」(141 ページ)と指摘する。
ここが分水嶺なのだろう。私は、ファンに支えられるという生き方はできない。ものを作り、そのものを使うユーザーに喜んでもらえれば、それでいい。
ただ、岡田さんが書いているとおりが、ディズニーランドのキャラクターのように、ヒト以外もカリスマになり得るものだとしたら、私は自分が作った「もの」がカリスマになってほしい。自分が死んでも生き続けるカリスマに。
第4章は、一見すると本書の主旨とは関係ない情報リテラシーの話題に転じる。ここからが、私が本当に読みたかったところである。
岡田さんは、カリスマの行動原理は「自身の持つ強い影響力を行使して、世界を変えようとする」(62 ページ)だという。これが炎上の原因ではないか。さらに、カリスマの要件であるシナリオや思想性が不十分だから炎上するのかもしれない。
岡田さんが書いているとおり、われわれ普通の人たちにとっては、世界は現象であり、「自分が関与したり、変化させたり、未来を予測できるものではありません」(65 ページ)。そこへ影響を与えるカリスマ(もどき)に対しては、強い違和感を覚える。
第5章ではプーチン大統領や安倍首相を取り上げ、その政策が分かりやすく、キャラ立ちしていると指摘する。そして、「じっくりと政策についての自分の意見を持ち、何年かに一度の選挙で投票する。そういう行動はもう『コスパが悪い』んです」(200 ページ)と言い切る。ここが、私の考えと決定的に違うところだ。
私はものづくりに生きている人間であるが、何かを考え、手を動かすためのコストパフォーマンスは度外視している。だから、カリスマが見せるシナリオを吟味するのに時間がかかるし、その間に退場してしまうカリスマが大多数だ。ネットでの炎上騒動が良いことだとは思わないが、結論を急ぐあまりにネット民を扇動しようとするカリスマは間違っている。
岡田さんは「世界はカリスマで動いている」(206 ページ)と言う。確かにそうかもしれない。だが、私は子どもたちに、何度ミスしてもいいから自分の頭で考え、どんなに時間がかかってもいいから自分が決めた人生を歩め、と伝えたい。
最後に、岡田さんは私たちのような非カリスマに、「楽しく生きるコツは、自分が誰かのサボーターになること」(215 ページ)とアドバイスしてくれている。その通りである。だが世の中には、楽しく生きるのではなく、どんなに苦しくても後悔しない生き方をしたいという、私のようなマイノリティが残っていることをお忘れなく。
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