東方見雲録

東方見雲録

2026.02.01
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カテゴリ: まちづくり
人が人間らしく尊厳を持って生きるために不可欠でありながら、“見えにくく気付きにくい”社会インフラを指す「社会的共通資本」。1970年代に経済学者・宇沢弘文氏によって提唱されたものだが、いままさに注目されている。
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「『社会的共通資本』とは、教育・医療・司法・交通・都市基盤・自然環境などのインフラのことです。道路や上下水道のような見えやすいものもあれば、地域の子育て支援や公園の安全性など、気付きにくいものもあり、“空気のような存在”とたとえられます。普段は意識しないけれど、ないと困るもので、誰かが責任を持って維持しなければいけません」(松島教授・以下同)

宇沢氏の遺志を継ぐ東京大学大学院経済学研究科の松島斉教授

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2015年に「SDGs」が採択されたことで、ようやく 市場は責任を持って社会にかかわっていくべきではないかという方向性に変わっていった。

「近年は、企業の経営戦略が変わり始めています。例えば、ビールを製造するメーカーが非営利的な教育文化活動の支援を行うとともに、工業用水の処理などのメインとなる営利事業に直接付随する社会的責任活動をとても重視しています。社会的責任を経営の軸に据え、企業のカルチャーとして社会貢献を推し進めるところが増えてきています。同時に、『社会的責任を果たしている会社だから投資する』という発想の投資家も出てきています。いわゆるESG投資ですね」

社会が変化のときを迎えているいま、立ち往生している企業も出てきているとのこと。

「『社会的責任の重要性はわかるけど、何をしたらいいのだろう…』と悩んでいる企業は、相当数あると考えられます。そこを解消するためには、ESG評価やKPIの設定といった数値的な指標も大切ですが、そこだけに終始すると達成度だけが重視されてしまいます。ただ数字を追うのではなく、企業のみんなで対話をして社内の気運を高め、従業員にとって見通しがよく、消費者や投資家に対しても説明責任を果たせる組織を目指すことが第一歩ではないかと思います」



「不安や不信感があったとしても、それを伝える窓口が明確でないことも課題のひとつです。 北欧諸国やスイスでは、市民が制度設計の段階から携わる文化が強いため、制度に対する愛着が形成されやすく、『制度は自分たちで育てるもの』と捉えられています。 そのため、社会にマッチするように制度も変化しやすいのです。日本も北欧のような方向に踏み出すときだといえるでしょう」

約50年の時を経て、注目されている「社会的共通資本」。生活に欠かせないものであり、誰もが当事者として考えるべきものだといえるだろう。
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松島教授は 「制度信託」という考え方を提案している。「制度とは、社会から信じて預けられたもの」という考え方だ。

「市民や消費者、投資家から制度を預かった自治体や企業は、信頼に対して誠実に応える責任を負います。この信頼を築き、みんなが納得できる制度を設けるために必要なのは、要件をはっきりさせることと適切な役割分担を行うことだと考えています。要件が明確であれば、制度でうまくいっている部分といっていない部分がわかりやすくなり、市民も『ここはうちの自治体ではうまくいっていない部分だ』と理解したり改正案を考えたりすることができます」

適切な役割分担とは、官民連携をはじめとする協業のこと 。国や自治体と民間企業、地域住民が連携して制度をつくっていくことで、不信感が薄れていくという。

「地域住民が抱える悩みや要望をもとに国や自治体が動き、財源の調達や運用においては金融機関と協力しながら進めていくことが前提となるでしょう。必要に応じて企業の経営ノウハウや技術、サービスを活用するなど、それぞれが専門分野を担い、パートナーシップを形成することが求められています。分担して役割が明確になると、制度を利用する市民にも情報が開示されやすくなり、困ったときの窓口も明確になります。制度をつくる側も、より一層責任を持って臨むことができるでしょう」
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「制度疲労」を防ぐポイント となる要件の明確化や適切な役割分担を実践するため、自治体や企業には3つの視点が求められるという。

「 『透明性と説明責任』『長期インセンティブの設計』『包摂とケアの倫理』という視点
引用サイト: こちら

関連サイト:新しい資本主義のカギとなる「社会的共通資本」 こちら

関連日記:2023.07.15の日記 宇沢弘文とコモンズ    こちら
関連日記:2022.07.04の日記 貨幣   こちら
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こちら
関連日記:2022.10.13の日記 50年前からSDGsを見通していた…宇沢弘文   こちら
【原田】現在、とりだい病院は新病院に向けて動き始めています。そこで社会的共通資本という概念は一つの鍵になると考えています。

宇沢弘文『日本の教育を考える』(岩波書店)宇沢弘文『日本の教育を考える』(岩波書店)。社会正義・公正・平等の視点から経済学の新しい展開を主導してきた著者が、自らの経験をまじえつつ、教育のあり方を考えてゆく。
【永井】98年に発刊された宇沢先生の『日本の教育を考える』という本で最終章として〈鳥取県の「公園都市構想」〉と一章を割いています。これは当時の西尾邑次(鳥取県)知事が提唱した公園都市構想に呼応したものです。

公園とは、それまで国王や貴族が私物化、占有していた美しい庭園や文化的、学術的、芸術的施設を一般市民に開放したものが公園の始まりであると。この公園を中心に街を作って行く。

【原田】西尾さんは83年から99年まで県知事を務められましたね。

【永井】宇沢先生は〈鳥取県の人間的、自然的、歴史的、文化的、経済的特性を考慮すると、教育と医療にかかわる社会的共通資本を中心として「公園都市」の形成をはかることが望ましい〉と書いています。これはまさに今、とりだい病院が計画している新病院と重なります。

【原田】教育と医療、まさに鳥取大学ととりだい病院のことです。

【永井】宇沢先生は、この理念を具現化するために、中高一貫の全寮制の「農社学校」、「リベラルアーツ」の大学としての「環境大学」などの事業を起こして、その実態と経験をふまえて、弾力的に未来を構築していくべきだとも書かれています。その中核事業が〈長期療養、リハビリテーションの医療機関を中心とした「医療公園」〉であると。

【原田】ここには自然環境もあるし、温泉もある。新型コロナでストップしていますが、他の地方から患者さんに来てもらうというメディカルツーリズムを我々も考えていました。

【永井】現在進んでいる新病院についても、自然と共生した市民に愛される新しい病院となって欲しいです。

【原田】自然との共生は宇沢先生の中核思想の一つですね。新技術、文明と自然が衝突することがあります。宇沢先生は前出の『自動車の社会的費用』で自動車という文明の利器の負の部分をとりあげています。

20世紀は自動車の時代ともいえます。あえてそこに戦いを挑んだ。相当な摩擦があったはずです。さらに成田空港問題、公害問題などに果敢に取り組まれました。

【永井】宇沢先生は、現実社会の中の弱いもの、小さいものの存在を常に視野に入れられていた。先生の優れた評伝『「資本主義と闘った男」宇沢弘文と経済学の世界』を書かれた佐々木実さんは、“前期宇沢”と“後期宇沢”と分けています。

宇沢先生は、『自動車の社会的費用』で前期宇沢の光り輝く栄光を捨てたんです。経済界、経済学の世界と溝が出来た。それを恐れることもなく自分の信念を貫き、行動した。今でこそ、SDGs(持続可能な開発目標)という概念があります。でも、当時は理解されることは稀だった。孤高ですよ。

関連日記:2026.01.21の日記 鳥大病院&湊山公園発信 ウェルビーイングな町づくり 試案   こちら

・・・・追記
関連サイト:2050年に向けた社会の基盤とは こちら









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Last updated  2026.07.20 04:39:28
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