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June 13, 2011
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カテゴリ: わけ分からん




 『市民ケーン』。言うまでもなく天才オーソン・ウェルズの出世作にして、「ハリウッド映画の歴史の中でどの作品が最も優れているか」という類のアンケートを行えば、しばしば第1位に輝く傑作中の傑作でございます。

 で、私も大学生の頃にこれを初めて見て、大いに感動したものでありまして、以後、オーソン・ウェルズは私のヒーローであり続けていると、まあ、そういう具合。何せこんなすごい映画を、オーソン・ウェルズは、たかだか25歳くらいの時に撮ったというのですからね。信じられない。

 で、アメリカ映画論を講じるとなれば、当然、この作品を全編見せたいと思うわけでありまして、2週ぶっ続けでこの作品を見ることにし、今日、ようやく見終わったと。


 私としては「どや顔」ですよ。見たか、ハリウッド映画至高の作品を、ってなもんで。


 ところが。


 学生たちがポッカーーーン・・・としているんだよね。すごいものを見た、という、興奮冷めやらぬ顔なんてどこにもない。あらら? どうしちゃったのかしら?


 で、「どう、この作品。面白かった? でしょ?」と問わずもがなのことを問うてみると、彼ら異口同音に曰く、「まったく意味が分かりませんでした」と。





 曰く、「最初から『バラのつぼみ』がどうとか言ってましたけど、最後までそれが何のことか分かりませんでした」とのこと。

 えーーーーー。だって、最後のシーンで種明かしされるじゃん! どうして分からないのよ、それが?


 幼少の時に実の母親から引き離され、しかし養父の莫大な財産ゆえに奔放な青春時代を過ごしたケーンが、新聞業界に興味を持ち、金にモノを言わせた他社買収と民意を煽るセンセーショナリズムで弱小新聞社を巨大マスコミ産業に育て上げていく物語。生涯に獲得した膨大な財産からすれば、欲しいものをすべて手に入れた大成功の生涯と言えるものの、見方を変えれば、富を築き上げていく過程で最良の友を失い、名誉を失い、二人の妻を失い、ついには孤独な老人として果てざるを得なかったという、失う一方の人生でもあった。そして、その失うばかりの人生の手始めこそが、子供の頃に母親と離れ離れになったことであって、その喪失の象徴が「バラのつぼみ」だったと。

 すべてを勝ち取ったように見えて、実はすべてを失った男の悲劇。うーん、ヒロイック! で、ヒロイックなんだけど、実は子供のようにロマンチストでもあるというね。しかもロマンチストでありながら、自分しか愛せない最低な男という。その辺の複雑なキャラクターを、主演も務めたオーソン・ウェルズが見事に演じていたではありませぬか。

 で、また映画手法としても、実に演劇的というか。特に新聞記者たちのポリフォニックなセリフ回しだとか、ワンシーン・ワンカットの超ロングテイクなんて、まるで舞台をみているかのよう。それでいて極端に仰角や俯角をつけたカメラ・アングルだとか、主役にスポットライトを当てるのが当然の時代に、敢えて主役を影の中に置く白黒撮影だとか、はたまたパンフォーカスで一つの画面に多様な意味を与える手法などは、いかにも映画的な演出。どちらの面をとっても、見どころたっぷりでございます。


 とまあ、そんなこと説明しなくたって見れば分かるだろうと思うようなことが、今時の大学生には、分からないんだなあ・・・。


 いやあ。単にこいつらが馬鹿だというのではなくてですね、私ががっかりするのは、今時の若い人たちは、「人生の機微」みたいなものを見ても、その意味が分からない(らしい)、というところですね。ちょっと複雑なキャラクターになると、もうその人の心の動きというか、なぜそういう行動をとったのかとか、そういうことがまったく分からなくなるという。

 もちろん、昔の人なら、みなそういう機微が分かったはずだ、とは思いませんよ。思いませんけれども、大学生ともなればね、そういうことに敏感であろう、敏感でありたい、という自負の念があったような気がするわけよ、昔は。とりわけ、文学系の学部なんかにいる場合はね。

 そうじゃなきゃ、何のために大学生やっているのよ。さっさと社会人になればいいじゃないの。

 ま、色々言いたいことはありますが、とにかく、今時の大学生には、いいものを見せても、その価値を分かってもらえないと。そういう時代に、自分は大学で教えているんだと。


 はあ~・・・。疲れるねえ・・・。





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Last updated  June 13, 2011 05:34:52 PM コメントを書く
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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