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March 16, 2014
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カテゴリ: 教授の追悼記
 昨日、高円寺で行われたOさんの告別式に参列して参りました。享年54。あまりにも早い死でした。

 Oさんは、私の大学院時代の先輩。私が修士課程に入った年にOさんは博士課程の1年でしたので、学年で言うと二つ上の先輩ということになります。内進組の私と違ってOさんは(バンカラ的な校風の強い)他大学からの進学ということもあり、また当時既にご結婚されていらしたので、その分、よほど大人っぽい感じがして、他の先輩方とも少し雰囲気が違うところがありました。

 そしてその大人っぽさゆえか、あるいは単に座談の名手だったためか、院生たちが集まって雑談している時など、いつも輪の中心にいて面白い話題を提供してくれたばかりでなく、修士1年坊で遠慮して端の方に座っている私などにも気を使って、話の輪の中に入れるようにしてくれたりしたものでした。イギリス文学を専攻する院生が圧倒的に多い中、Oさんと私はアメリカ文学の専攻であり、そういうこともあって特に私に声をかけてくれたのかも知れません。バンカラで、鷹揚でありながら、しかも繊細に気を使う人でした。

 大学院を修了後、私は名古屋の大学に赴任したこともあり、またOさんは研究者の道には進まず、奥さまとご一緒に英語の塾を開かれる道を選択されたこともあって、その後直接お会いすることはありませんでしたが、善き先輩としてOさんに親しみのあった私は、その後も年賀状のやりとりだけは欠かさず、20年以上にも亘って毎年一回、互いの消息を知らせ合う関係を続けていたのでした。

 そんな中、私に衝撃を与えたのは、2年前の正月にOさんからいただいた年賀状でした。そこには「自覚症状はまったくないが、検査の結果、肺腺癌のステージ4であることが判明した」ということが書かれていたのです。肺腺癌のステージ4とは何か、すぐにネットで調べた私は、それが末期の段階を示すものであることを知りました。実際、Oさんはその時点で医者から「余命半年」と宣告されたそうです。

 症状がまったくなく、むしろ体調がいいほどなのに、あと半年でこの世から消える。そう宣告された時、人は何を考え、何を思うものなのか・・・。私はOさんの心中を推し測って、絶句するしかありませんでした。私は何度もOさんに手紙を書こうと思い、実際書きかけたことすらありますが、何を書いていいやら、どうお慰めすればいいのやらまったくわからず、その都度断念するほかありませんでした。手紙ではなく、Oさんに直接会いに行こうと考えたこともありましたが、それではまるで「死ぬ前に、一度、顔を見に来ました」と言うのと同じではないかと思い、これもまたやはり断念せざるを得ませんでした。

 そんな風にオロオロと悩むこと1年。昨年の暮れになってようやく私はOさんに手紙を書く決意をし、その時点の具合を知らせてくれるよう、お願いしたのです。返事をもらえるか、もらえたとして、もしもっと絶望的なことが書いてあったらどうしよう。そんなことを思いつつ。

 Oさんから電話をいただいたのは、私の手紙が届いただろう頃から2週間か3週間ほどした時分でした。それは、実に大学院修了以来、二十数年ぶりに聞くOさんの肉声でした。そしてその声は、院生時代からまったく変わらぬ、元気のいいものでした。

 しかし、その時にOさんから聞いた話は、やはり聞いている私の意気も阻喪させるようなものでした。肺腺癌は、他の臓器にも、また脳にも転移し、近々、放射線治療が始まるとのこと。「確実に磯野波平になるよ。もっとも元がハンサムだからね!」 そして、私が先輩からの年賀状を読んで驚愕したこと、そして人間ドックで思わず肺癌系の腫瘍マーカー検査をしてしまったことなどを告げると、「おお、そうしてくれよ。俺の経験を活かしてくれ」と。



 その後、Oさんとはメールで何度かやりとりし、最後のメールでは「まだまだサバイバルするつもりだよ」と書いてあったので、この分なら、少なくとも今年一年は大丈夫であろう、そうして一年、また一年とサバイバルを続けていれば、急速に医学が進歩しているこの時代ならば、ひょっとして決定的な治療法が開発されることだってあるだろう、そうすれば・・・と、私も楽観的に考えていたのでした。

 いや、楽観的に考えることで、私はO先輩に迫った死期のことを忘れようとしていたのでした。全身に癌が転移した状態が、それほどの楽観を許すはずがないということは、私にだって当然、分かっていたのですから。

 ですから、先日、別の先輩、O先輩と同学年の先輩から突然、夜に電話をいただいた時、私にはその電話が何を意味しているか、電話に出る前から分かっていたのでした。(この項、明日に続く)





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Last updated  March 17, 2014 12:19:46 AM
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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