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July 14, 2018
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カテゴリ: 教授の映画談義
かの有名なミュージカル『ヘアー』、その映画版を観ましたので、心覚えを付けておきましょう。以下、ネタバレ注意ということで。

 『ヘアー』というのは、もともと1967年にオフ・ブロードウェイとして上演され、翌68年に今度はブロードウェイで改変上演されたミュージカル。出演者全員が一瞬全裸になるということが喧伝され過ぎたところもありますが、とにかく、反ベトナム戦争の気運の中で作られた初のロック・オペラですな。特に最初に流れる『アクエリアス』と最後に流れる『レット・ザ・サンシャイン・イン』が素晴らしく、それをカバーしたフィフス・ディメンションのアルバムがバカ売れしたという。実際、今聴いても素晴らしいですけどね。

 で、そのミュージカルを『カッコーの巣の上で』や『アマデウス』で名高いミロス・フォアマン監督が1979年に映画化したのがこの映画版『ヘアー』。それを観たというわけ。

 で、私はミュージカル版を観ていませんので、映画版とどのくらいの相違があるのか分かりませんが、映画版について言いますと、まずオクラホマの田舎から、素朴な青年クロードがNYにやってくるところから始まります。クロードはベトナム戦争への徴兵を受けていて、間もなく兵隊としての訓練を受けることになっていたのですが、その前にせめてNYというところを見物したいということでこの町にやって来た。

 ところが、そんな田舎者のクロードが最初に出くわしたのが、幸か不幸かバーガー率いる同世代のヒッピーの集団だった。彼らもまた徴兵を受けてはいたのですが、真面目なクロードとは異なり、海外まで行って自分たちとは無関係な人々を殺しに行くなんてナンセンスと思っているので、徴兵の赤紙なんか焼き捨てて、自由気ままな生活をしている。

 で、そんなバーガーたちと知り合ってしまったクロードは、彼らのいたずらに巻き込まれるような形でNYの上流階級のお嬢さんシーラと出会い、一瞬で恋に落ちることになるんですな。

 もちろん、シーラとバーガーたちでは住む世界が違うのですけれども、バーガーはそんなこと気にしたりしない。同じ人間として階級の垣根を飛び越え、ずけずけとシーラに物を言うのですが、シーラの方でもそんな自由なヒッピーの世界への興味があって、少しずつ彼らに心を開いて行くわけ。

 しかし、結局、クロードはヒッピーにはなりきれず、新兵としての訓練を受けるべくネバダに飛ばされ、そこで過酷な訓練に明け暮れることになります。

 けれど、ベトナムへの出兵も近づいた頃、クロードはシーラにラブレターを出すんですな。で、それを受け取ったシーラは、バーガーらに相談する。と、自由人のバーガーは、それならすぐに皆でネバダに行って、クロードを軍から奪還しようと企む。



 しかし、シーラもすぐ傍まで来ているよ、というバーガーの言葉につい魔が差し、バーガーの着ていた上官の軍服と自分が着ている新兵の軍服を交換し、軍を抜け出してシーラに会うことにします。そしてシーラと愛を交わす。その間、バーガーはクロードのふりをしてカマボコ兵舎で点呼を受けたりするわけ。

 が!

 急な連絡でクロードの所属していた部隊は、即刻、ベトナムへ向けて出兵が決まるんですな。で、クロードの身代わりになっていたバーガーは、期せずしてそのままベトナムへ発つことになってしまう。クロードがシーラとの逢瀬の後、兵舎に戻った時には、既に飛行機が離陸した後だった。

 そして、やがてバーガーの戦死の報が届く。

 バーガーの仲間やクロードは、他の無数の若者たちと一緒に反戦デモに参加し、ホワイトハウス前で抗議の声を上げる。そこで『レット・ザ・サンシャイン・イン』が流れ、幕が閉じます。


 まあ、何と言っても、最後の最後、あの自由人のバーガーが、クロードの身代わりで出征するシーンが衝撃よ。それで死んじゃうんだもの。

 ま、ミロス・フォアマンは『カッコーの巣の上で』(1975)の監督だからね。あれも、自由人のマクマーフィが、自由のない精神病院に潜り込み、その患者たちを解放しようとして失敗し、死んでいく話だから。『ヘアー』もその路線の話ではあるわけですな。

 そういう意味では、マクマーフィーやバーガーといった「ヒッピー的精神」の体現者が死ぬことによって、その精神が周囲の人々に受け継がれるという、キリスト教的贖罪羊の物語になっているんでしょうな。もっとも、それはミロス・フォアマンの好むところなのであって、オリジナルのミュージカル版『ヘアー』がそういう物語なのかどうかは分かりませんが。

 でも、まあ、アメリカ文化史的にこれだけ有名な作品で、今まで観よう観よう、観なくちゃいかんでしょ、と思っていた作品をようやく観ることが出来て、満足です。オリジナル・ミュージカルが上演された1967・68年という時代、そして挿入歌「アクエリアス」が醸し出すこの時代の雰囲気ってのは、ニューエイジ的な思想史を理解する上で、結構重要なものなのでね。


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Last updated  July 14, 2018 07:56:28 PM
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