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森の中の海

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2006.06.26
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カテゴリ: スピリチュアル
仲良く付き合っていた男女の友達グループでは,恋があちこちで芽生えるのにやぶさかでない。

A君と破局した後に,C君とお付き合いが始まったり,Jちゃんと付き合うつもりが,Nちゃんと付き合うことになっていたり。


悲喜こもごものドラマがあるものだ。 友情が恋に変わり,恋が憎悪になる頃,友達というゆるい紐で縛られていた関係がちりじりになってゆくのを何度も見た。


かつて海が愛した男がいた。  


その当時は彼も海を愛してくれていたようだが,その中に潜むうその香りは,磯から漂う潮香のように海の鼻について,その男の全てを信じられなかった。


案の定,その男は海との関係を終えた後にすぐ,他の娘に愛を向けた。 

その男のいう愛とは,わかりやすいと笑う以外ほかにないほど一夜にして変化し,一人にむけられたら他の人には一切広がらない,そんな狭い愛だった。 

そんなに簡単に変化するものを愛と呼べるなんて。 わけがわからなくなったのを覚えている。


その男と何の因果か今となって連絡が繋がり,ひょんなことから再び会うことになった。





いざ会うと,落胆の方が大きかった。


あれ?  この男は,こんなに軽薄だったか?  


彼は言った。 はずせない用事があり,ほんの少しの時間のことだから,俺のアパートにちょっとだけ行っててくれと。 

鍵をひょいと渡してよこす。 かつて,君に持っていてほしいといわれ,丁寧な空気に包んで置き去りにされていた鍵。  にべもなく断った鍵。 


ほかに気のきいた場所を知らないか,海を地元の口さがない人達に見られたくないか。 その両方だろうと見当をつけて,鍵をジーンズのポケットにねじ込んだ。


幸い地理には明るかったし,今のこの男の生活を覗くのも面白いだろうと,そんな軽い気持ちから,不可思議に思いながらも好奇心はすでに頭をもたげ,程近いその男のアパートへ行く。


一歩中に入って驚く。


汚い。  


なんだこの万年床は。    取り込まれもしない,この洗濯物の山はなんだ。


しかも女の下着がぶら下がっている。   85E。 サイズから見るに,かなり大柄な女のようだ。 


うっすらと,知った女の顔が浮かぶ。  まさかね・・・?





この部屋はなんだ。


万年床には,昨夜の情事を物語る痕跡が,無様なまま残されている。


汚い。   そしてこんなところにのこのことやってきた自分。


怒りすら湧かない。


携帯を耳に押し付けて電話をした。   何のつもり?  ここ,誰と住んでるの?  






ぴんと来た。  この男はあのコを利用してる。   カマをかける。

あっさりと白状する。   俺さ,もう3人もガキがいて,いまさら他の女にはらませる羽目になるなんて思ってなくてさー。 参ったよ。  しかもEのやつ,妊娠がわかってからそこに帰ってないんだよね。 でもあいつなら,一人でも育てるさ。



うそだ。  ベランダに干してある女物の下着は,つい先ほど洗ったばかりのようにまだ湿っていた。

まして子供好きなこの男が,大変ではあるけれども親の醍醐味を味わえる,新生児養育期間を放棄するわけがない。


この期に及んで海につくうそに,いったい何の意味があるのだろう?


その男を待つのが急に馬鹿らしくなって,そのまま友達に会いに行った。  彼女達は,海とこの男の過去の関係も,その男とEの現在の関係も,うすうす感づいてはいても,聞かされないことはしらないこと,と黙ってくれている人達だ。


ありがたい。


そこで,さっき見たものは何だったのだろうかとぼんやりとしていたら,当のEが現れた。 なんという確率。

彼女は何も知らない。 知っていたとしても,ソレはソレだと思うタイプだ。 そんなおおらかなEが,隠していたい何かがあるときの人特有の,少しおどおどとしたような困ったような目をしながら現れたことに,軽いめまいを覚えた。


Eは,今時分が身ごもっている命の父が,その昔海と通じていたことを知らない。  久しぶりに会うものだからと,互いの近況などを知らせあっている自分が,誰よりも薄気味悪かった。

そこでEの携帯がなった。  砕けた口調。  信頼している誰かと交わす,短い会話。


今,●×さん達と一緒にいるの。  そう。 そこ。  うん。


相手の声は聞こえないけれども,それが男だとわかる。  そう,「あの男」だと。


さっき海と会う段取りをつけておいて,今Eと会うために話をしている。 まめなやつだ。


他の友人達も敏感に察して,長年のEのその男への気持ちなどあまりにも明白すぎて面白くもないというように,その男の名を口にする。


あいつさー・・・・。    ホント困ったやつだけど・・・。


悪口なのか,フォローしているのか,まったくわからない会話の連続。



その場にいない人物が,誰よりも際立った輪郭を持って話題の中心に立っている。 他の誰かではありえない現象。  この男ならでは。  まったく不思議な人間関係。



彼女達の会話を聞くともなく聞いていたら,その男がやってきた。  いつものように目を細めて,ニヤニヤともニコニコともつかない笑いを浮かべながら。


悪い人ではない。  だらしがないだけ。 


自分に妻子があることなんかおくびにも出さず,Eと彼女の内の新しい命がすぐ目の前にあることも気づかぬように,まして自分のアパートに送っておいたはずの海がそこにいることにさえ驚きもせず。

自分には臆することも恥じることもないけれど,どこかで自分の出自をのろっているような。  そんなちぐはぐな空気を引っさげて。



眺めながら,思う。  こんな人だったっけ?


海が子供を堕ろしたくないと言ったときに,あっちこっちに子供がいるなんて嫌だから,頼む。 といった男と同じ人間だろうか?


それとも,単に海との間に子供がほしくなかっただけ?


そこに思い至った時,胃がずんと重くなった。   

ああそうか。  愛されないということは,こういうことか。


数万の甘い言葉を降らせておいて,その全てが蒸発するに任せておけたのも,目の前で起こる成り行きのどのピースにも,海だけが存在しないように振舞えるのも。


ああそうか。  愛されなかったのは,この男もなのだ。


もしかして,実は自分はこの場に存在しないのではいかと,何度か自分の手や腕をみつめかえしたこともある。  途方にくれて。


そう全てを感じた瞬間,胃がずんと重くなった。


そして目が覚めた。



全ては夢だった。





な~んて変な夢!! (o_ _)ノ彡☆バンバン ギャハハハ   深層心理の砂漠ですかね~!?) 






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Last updated  2006.06.26 02:13:12
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