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2004年08月05日
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テーマ: 中国&台湾(3345)
カテゴリ: カテゴリ未分類
過酷な旅だった。きっと今までのバス旅行の中でも1、2を争うほどの過酷な旅だった。バスは今日こそ卿城の街を出発した。けれども僕らは大きな過ちを犯している事に直前まで気が付かなかった。なにしろもう何日も理糖に向かうバスは出ていないわけで、ここに住んでいる人もこのバスの出発を待ちかねていたのだ。だから出発の30分も前からバスの周りは人で溢れている。それでも僕はバスの入り口の側をキープして、バスのドアが開けばすぐにでも乗り込んで、席を確保する体制に入っていた。

 バスのあたりが騒がしくなる。運転手が乗り込みまさにドアが開こうとする。ところがどこからか公安が現れて、あたりを仕切りはじめる。その時に僕は気が付いた。なんと現地の人々の手には乗車券が握られている。そして、当然僕らの手にはそんなものはない。あわてて、最近人民帽を買って、中国人化が激しい「ザンギリ君」改め「人民帽」にチケットを買いに行ってもらう。僕はその間荷物番だ。ところが、「人民帽」は落胆した顔で戻ってくる。もう売れきれだそうだ。人民は公安に指図されて、おとなしく指定された席へと散っていった。確かに当たりに溢れている人々の数を見ると、バスは満席なのだろう。一体どうすればよいのだろう。

 こうなると、なんとか立ち席でもよいから強引にこのバスに乗り込むしかないだろう。中旬からここまでのバスを見ると、けっこうみんな途中で下車しているので、一時間も我慢すればきっと座れるだろうと思ったのだ。それにこのバスは理糖までではなくて、その先の康定まで行くのだそうだ。康定といえば外国人開放都市だ。ということは、そこで僕のビザの延長が出来るはずだ。だから何としてもこのバスに乗るしかない。相手が公安ということで少しびびったが、(なにしろここは外国人未開放都市)なんとか強引に「康定、康定!」と叫んで、バスに乗り込む事に成功した。「人民帽」はもちろん、「星座博士」も「ルービック氏」もそれにゲイリック君も乗り込む事に成功したようだ。

 ところで、バスの中は地獄だった。バスは大型バスで、左側に3席、右側に2席の計5席の構成だ。そして真ん中の通路は人が一人ようやく通れる程の広さで、そこに荷物が溢れている。そして、その荷物にまみれて何とか座るところを確保せねばならないのだ。僕は隣の席の人と格闘しながらもなんとか「星座博士」の前に自分の場所を確保した。けれどもその場所は一度座ったらもう二度と身動きは取れないような場所で、だんだんと足がしびれてくる。最初自分のバックパックを立ててその上に坐っていたのだが、バスの振動でだんだんとそのバックパックが斜めに倒れ、それを直そうにも他の荷物の重みでびくともしない。僕の横はすぐドアになっていて、そこには乗り切れなかった数人立っているので、息苦しい事この上ない。

 唯一の救いは、すぐ後ろが「星座博士」だったために、日本語で会話出来ることだった。こういう時に一人で無言で入るのはとてもつらい。だからとても他愛のない会話もこういう時は十分に救いになる。何度目に僕が荷物を直そうとした時に、僕のバックパックは他の荷物に埋もれてしまい、他の人の荷物の上に座らないといけない状態になった。そして、その荷物の上に腰を下ろすと、いきなり隣に立っている人から罵声が飛ぶ。荷物に座るなと言う事らしい。無視して坐っているといよいよ険悪になってくる。みんな気がたっているのだ。そこで僕が荷物を直そうとその荷物を持ち上げると、その荷物から水分がもれていて、そのおかげで僕のバックパックが濡れている。今度は僕が叫び出す。僕が「この荷物のせいで、俺の荷物がビショビショだ!どうしてくれるんだ!」と怒鳴り散らすと、今度は相手が怯み、その荷物をドアの所の階段の下に去らせる事に成功した。

 気が付くと、「ルービック氏」も喧嘩し、周りと険悪な雰囲気になっている。実はこの周りと険悪になってしまうのは、僕としては出来るだけ避けたい事だ。これからの長いバス旅行の中で、こうなってしまうと絶対に損をする。だから僕は徐々にだが、周りの人に席のスペースを譲ったり、ウォークマンを聞かせたりとだんだんと穏やかに事を進む作戦に移った。それが成功してか、だんだんと向うが席のスペースを空けてくれたり、僕の姿勢を気にしてくれたりしはじめる。やはり世の中譲り合いだ。

 僕はこのバスは一度理糖で泊って、そこで一夜を明かしてそれから明日康定を目指すのだと思っていた。「人民帽」が持っているガイドブックにもそう書いてあったし、おとといの晩、卿城に到着したアメリカ人が理糖で一泊したと言っていたので、そう思ったのだ。だから理糖につくのを待ち焦がれていた。それに理糖を過ぎるとさすがに人が減って席にも座れるだろうと期待していたのだ。そんな憧れていた理糖には意外に早く5時に着いた。理糖の街を見た時、正直言って救われたと思った。もう体中痛くて、このまますぐにでもベッドに横になりたい。そして明日はまともな席に座って旅をしたい。

 ところが僕は甘かった。出口のすぐ側にいた僕は喜び勇んでバスを降りる。ここで降りる事になっている「星座博士」や「ルービック氏」それに何人かの乗客も降りてきた。ところがバスはすぐに出発体制に入っている。あわてて乗り込むと、バスはあっさり出発した。いったいバスはどこまで行くのだろう?ひょっとして今日中に康定まで行くつもりなのだろうか?そう思って周りの人に聞くと、1時に康定に着くのだということだ。ところで、僕が期待したほど理糖で降りた人は少なく、僕らは相変わらず窮屈な姿勢のままだ。僕はまだマシで、なんとか前の方に置いてあった木のベンチに尻半分を載せる事ができたのだが、一緒に康定を目指す「人民帽」は相変わらず地べたに自分の荷物を置いて、その上に坐っていた。

 今度は周りの人と最初から良好な関係を築いた。控えの運転手と話しはじめる。彼は僕が日本人だとわかると僕に向かって「バカヤロー」と笑顔で言った。これが彼が唯一知っている日本語らしい。誰だ、こんな日本語を教えたのは。バスは出発してすぐにパンクし、僕らは外で1時間ほど待たされたのだが、控えの運転手はタイヤを修理しながら、相変わらず「バカヤロー」とつぶやいていた。なんだか状況と彼のしゃべり口調とが妙にマッチしていて、思わず笑ってしまった。彼は気のいい男で、再び出発した後もいきなり日本の歌を歌えなどといいだし、即席歌合戦を繰り広げてしまう。もちろん彼も僕に中国の歌を披露してくれた。



 バスを降りるとみんな我先にバスターミナルの中にある旅社を目指す。僕らも彼らに習うが、僕らの少し前でその旅社は満室になってしまった。「人民帽」は寝袋で寝ようと言い出したが、僕は絶対にベットに横になりたい。だから僕は必死に一晩5元の宿を探し出して、「人民帽」とそこで泥のように眠った。ちなみにここの宿のおばちゃんはとても親切で、着くなり顔を洗えと暖かいお湯を用意してくれ、それが終わると今度は足を洗えとこれまた暖かいお湯を用意してくれた。けれどもトイレはどこですか?と聞くと、バケツにすこし水を入れて、「これです」と言われた時にはちょっと絶句した。そういえば僕が今日泊った街の名前は「雅江」というらしい。





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最終更新日  2004年08月05日 08時32分57秒
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